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農村で歩く旅を楽しむ人々は急速に増えている。しかしそのための道や土地を巡って,歩く者と所有する者の間に軋轢が生じることがある。もちろん,地域によっては利用者と所有者の間で上手く調整が出来ている場所もある。しかし著者はあえて,その調整が成功していない「失敗の地」を選んだ。失敗する中でも,問題を抱えながらも,人はそこで暮らしまたそこを訪れる。常に不特定多数の他者と向き合いながら,不満と不安を感じつつ生きなければならない人々に学ぶ。
第2回環境社会学会奨励賞
『ソシオロジ』第64巻1号(2019年6月)、158-168頁、評者:野村明宏氏
『村落社会研究ジャーナル』51(2019年10月)、28-29頁、評者:藤村美穂氏
『社会学評論』Vol.70, No.2、183-184頁、評者:松宮朝氏
『村落社会研究ジャーナル』51(2019年10月)、28-29頁、評者:藤村美穂氏
『社会学評論』Vol.70, No.2、183-184頁、評者:松宮朝氏
北島 義和(きたじま・よしかず)
釧路公立大学経済学部講師
1980年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。2016年より現職。主な著作は,「いかに農地は公衆に開かれうるか――アイルランドにおける農村アクセス問題をめぐって」(『ソシオロジ』57(3),2013年),「私的所有地のレクリエーション利用をめぐる作法――アイルランドにおける農村アクセス問題への対処から」『社会学評論』66(3),2015年)など。
釧路公立大学経済学部講師
1980年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。2016年より現職。主な著作は,「いかに農地は公衆に開かれうるか――アイルランドにおける農村アクセス問題をめぐって」(『ソシオロジ』57(3),2013年),「私的所有地のレクリエーション利用をめぐる作法――アイルランドにおける農村アクセス問題への対処から」『社会学評論』66(3),2015年)など。
「失敗」の地から、「失敗」と共に生きるすべを学ぶ――はじめに
序 章 「対話」も「システム」も「正義」も成立しない現場で――農村アクセス問題の実相と「複数的資源管理論」の限界
1 自然資源管理のもうひとつのあり方を模索する――本書の目的
2 社会問題としての農村アクセス問題――対立の歴史と現在
3 コモンズ論・環境ガバナンス論を中心とした分析視角とその限界
3―1 対話アプローチとその限界
3―2 システムアプローチとその限界
3―3 正義アプローチとその限界
4 こぼれ落ちた現場の実践を見据える――本書の視座と各章の構成
第1章 アイルランド農村という場所
1 農業の凋落と構造的な二極化――20世紀以降の変化
2 農村アクセスの隆盛――1980年代以降
3 アイルランドにおける私的所有地へのアクセス手段
4 本書の研究方法とフィールドワーク地域の概況
第2章 農村アクセス問題の歴史的展開
1 変化を作るドライバーとしての農民に注目する
2 アイルランドにおける山歩きと農村アクセス問題の進展
3 管理者責任問題と農民団体のフレーミング
4 共有地分割問題と反対運動のフレーミング
5 農民の「生活の便宜」がアクセスを可能にする
第3章 私的所有地のレクリエーション利用をめぐる作法
1 ウォーカーは不特定多数の農民とどのように向き合っているか
2 ウォーカーを代表する2つの全国団体の観点
3 地元クラブによる対処
4 閉じられたアクセスと開かれたアクセス
5 あるべき姿としての「農民との良好な関係」
6 楽しみを大事にすることそれ自体に他者と向き合う可能性を見る
第4章 対話の場の限界と非常事態の生みだすもの
1 他者の環境認識はいかにして承認されうるのか
2 農民のナビゲーションと環境認識
3 ウォーカーのナビゲーションと環境認識
4 対話の場とその行き詰り
5 二つのナビゲーションが出会うとき――山岳レスキューの現場
6 異なる環境認識を共存させるもうひとつの回路を捉える
第5章 いかに農地は公衆に開かれうるか
1 「便宜」なく不特定多数の人々を受け入れることは可能か
2 農村アクセスをめぐる不確定要素
3 農民の土地所有感覚とアクセスの許容
4 農民の土地所有感覚とアクセスのブロック
5 日常的感覚の中にある「開かれ」の経路をたどる
終 章 複数的資源管理をめぐる日常的実践の可能性――対立と折り合っていくための視角
1 アイルランドの事例を振り返る
2 日常的実践から生み出される包摂と「非定形な複数的資源管理」
3 重層的なかかわりと「同床異夢」からの展開
4 「非定形な複数的資源管理」をめぐる評価
5 本書の結論と今後の課題
おわりに
参考文献
序 章 「対話」も「システム」も「正義」も成立しない現場で――農村アクセス問題の実相と「複数的資源管理論」の限界
1 自然資源管理のもうひとつのあり方を模索する――本書の目的
2 社会問題としての農村アクセス問題――対立の歴史と現在
3 コモンズ論・環境ガバナンス論を中心とした分析視角とその限界
3―1 対話アプローチとその限界
3―2 システムアプローチとその限界
3―3 正義アプローチとその限界
4 こぼれ落ちた現場の実践を見据える――本書の視座と各章の構成
第1章 アイルランド農村という場所
1 農業の凋落と構造的な二極化――20世紀以降の変化
2 農村アクセスの隆盛――1980年代以降
3 アイルランドにおける私的所有地へのアクセス手段
4 本書の研究方法とフィールドワーク地域の概況
第2章 農村アクセス問題の歴史的展開
1 変化を作るドライバーとしての農民に注目する
2 アイルランドにおける山歩きと農村アクセス問題の進展
3 管理者責任問題と農民団体のフレーミング
4 共有地分割問題と反対運動のフレーミング
5 農民の「生活の便宜」がアクセスを可能にする
第3章 私的所有地のレクリエーション利用をめぐる作法
1 ウォーカーは不特定多数の農民とどのように向き合っているか
2 ウォーカーを代表する2つの全国団体の観点
3 地元クラブによる対処
4 閉じられたアクセスと開かれたアクセス
5 あるべき姿としての「農民との良好な関係」
6 楽しみを大事にすることそれ自体に他者と向き合う可能性を見る
第4章 対話の場の限界と非常事態の生みだすもの
1 他者の環境認識はいかにして承認されうるのか
2 農民のナビゲーションと環境認識
3 ウォーカーのナビゲーションと環境認識
4 対話の場とその行き詰り
5 二つのナビゲーションが出会うとき――山岳レスキューの現場
6 異なる環境認識を共存させるもうひとつの回路を捉える
第5章 いかに農地は公衆に開かれうるか
1 「便宜」なく不特定多数の人々を受け入れることは可能か
2 農村アクセスをめぐる不確定要素
3 農民の土地所有感覚とアクセスの許容
4 農民の土地所有感覚とアクセスのブロック
5 日常的感覚の中にある「開かれ」の経路をたどる
終 章 複数的資源管理をめぐる日常的実践の可能性――対立と折り合っていくための視角
1 アイルランドの事例を振り返る
2 日常的実践から生み出される包摂と「非定形な複数的資源管理」
3 重層的なかかわりと「同床異夢」からの展開
4 「非定形な複数的資源管理」をめぐる評価
5 本書の結論と今後の課題
おわりに
参考文献