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『アストロノミカ』は,古代の天文学,占星術や天文知識についてまとまった形で残った最古の文献の一つである。天文学と占星術が未分化であった古代ローマの時代に,ストア哲学的な世界観を背景に運命・神慮・摂理など,人間と宇宙とが織りなすさまざまな諸関係を歌う,文学的技巧を駆使した作品の本格的研究。
竹下 哲文(たけした てつふみ)
1991年生まれ。立命館大学文学部卒業。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在,京都大学ほか非常勤講師。専門は西洋古典学。
主な著訳書
主な論文には「イタリア文献学と古典文献学の間——クローチェ,パスクァーリ,バルビの「方法」を巡る問い」(2018年,『天野惠先生退職記念論文集』所収),「Man. 5.604: Pseudoetymological Figures in Astronomica」(2019年,『フィロロギカ』),「マーニーリウス『アストロノミカ』における百科全書主義」(2020年,『西洋古典学研究』) ,翻訳にゲルハルト・H・ヴァルトヘル『西洋古代の地震』(2021年,共訳,京都大学学術出版会)がある。
1991年生まれ。立命館大学文学部卒業。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在,京都大学ほか非常勤講師。専門は西洋古典学。
主な著訳書
主な論文には「イタリア文献学と古典文献学の間——クローチェ,パスクァーリ,バルビの「方法」を巡る問い」(2018年,『天野惠先生退職記念論文集』所収),「Man. 5.604: Pseudoetymological Figures in Astronomica」(2019年,『フィロロギカ』),「マーニーリウス『アストロノミカ』における百科全書主義」(2020年,『西洋古典学研究』) ,翻訳にゲルハルト・H・ヴァルトヘル『西洋古代の地震』(2021年,共訳,京都大学学術出版会)がある。
はじめに
略号一覧
序章 西洋古代の占星術——ローマ帝政初期まで
1 天文学と占星術
1-1 用語の区別
1-2 古代人の理解と定義
2 バビロニアからギリシアヘ
2-1 「カルダイアー人の技術」
2-2 ギリシア世界への受容
2-3 「誕生占星術」の勃興
2-4 バビロニア天文学とギリシア哲学の出会い
2-5 占星術とエジプト
3 ローマにおける占星術の隆盛
3-1 初期の証言と占星術への態度の変化
3-2 占星術受容の背景
4 初期ローマ皇帝と占星術
4-1 アウグストゥスとホロスコープ
4-2 シンボルとしての山羊座
4-3 カエサルの彗星
4-4 占星術を巡るジレンマ——追放と独占
4-5 ティベリウスとトラシュッロス
4-6 占星術と陰謀——リボー・ドルーススの事件
第1章 『アストロノミカ』の成立年代と研究史
1 作品の成立年代をめぐる問題
1-1 アウグストゥスかティベリウスか
2 完成作か否か
3 『アストロノミカ』研究の歴史
3-1 後世への影響と写本の発見
3-2 20世紀初頭までの研究の流れ
3-3 Housman以後の展開
3-4 本書の位置づけ
コラム 1 学者詩人ハウスマン
第2章 『アストロノミカ』とストア派の詩論
——第1巻の序歌をめぐって
1 第1巻序歌の構造
2 詩と題材の関係
2-1 強調される「新しさ」
2-2 ローマにおける天文詩の流行
2-3 詩的技法の検討
2-4 マーニーリウスの宇宙観
2-5 宇宙の音楽
3 『アストロノミカ』とストア派の詩論
3-1 ストア派の詩論
3-2 マーニーリウスにおける詩の捉え方
4 序歌における意味の二重性
4-1 韻文こそが宇宙を語るに相応しいということ
4-2 詩人の作品と宇宙の作品の呼応
4-3 詩人が乗り越えるべき困難
まとめ
第3章 「テクストの中の宇宙」というイメージの淵源
1 エピクーロス派の詩論の検証
1-1 ルクレーティウスは忠実なエピクーロスの徒か
1-2 エピクーロス自身の姿勢
1-3 ピロデーモスという転換点
1-4 ピロデーモスとルクレーティウスの相互関係
2 ルクレーティウスの詩論
2-1 詩という蜜と哲学という薬
3 原子論との関わり——詩と世界
3-1 原子と文字の比喩
3-2 音韻的な言葉遊びの分析
3-3 映像としての詩
3-4 反復と再生のモチーフ
3-5 詩と世界を重ね合わせること
4 詩と生の類想の淵源としてのピロデーモス
4-1 ピロデーモスのエピグラムに見られる「生という書物」
4-2 ピロデーモスの影響の可能性について
まとめ
コラム 2 ルクレーティウスにおける詩行の反復
第4章 星座神話と詩人の戯れ
——アンドロメダーの物語を中心に
1 神話に対するマーニーリウスの態度
1-1 星座起源譚とその典拠の多彩さ
1-2 神話観の発展的変容
2 アンドロメダー挿話と詩的意匠
2-1 最終巻における小叙事詩
2-2 修辞的特徴
3 ペルセウスの戦い(5.603-604)
3-1 写本の異読をどう考えるか
3-2 写本伝承の概要
3-3 文法上の問題点の整理
3-4 修辞面の検討
3-5 語源的文彩を利用した表現
3-6 問題の箇所の再解釈
まとめ
第5章 自然との闘い
——『農耕詩』から『アストロノミカ』へ
1 敬虔な態度と不敬虔な態度
1-1 詩人の飛翔
1-2 巨人族の比喩
2 『農耕詩』と『アストロノミカ』
2-1 「自然」(natura)の捉え方
2-2 神の意志・恩恵
2-3 競争による発展
2-4 自然との闘い
3 文明史の描かれ方
3-1 ルクレーティウス,ウェルギリウスとの共通点・相違点
3-2 『アストロノミカ』の中で文明史が占める位置
まとめ
コラム 3 語句の配置に見る『アストロノミカ』の遊戯詩的要素
第6章 計算としての理性——計り知れない宇宙を計ること
1 詩人=占星術師=数学者
1-1 推論による探究
1-2 詩と数学
1-3 計算としての理性
2 数学詩の伝統
2-1 ギリシア数学者たちのエピグラム
2-2 ローマにおける反発——数学と詩の相容れなさ
2-3 『重さと計量についての詩』
3 『アストロノミカ』における計算描写
3-1 第2巻——アスペクトの幾何学的描写とドーデカテーモリア
3-2 第3巻——「時の見張り」の算出
3-3 第4巻——忌み角度の列挙
4 ratioの意味の再検討
4-1 先行研究の問題点
4-2 神的理性としてのratio
4-3 ratioの変遷と会計的意味
5 戸口調査の比喩
5-1 ローマにおける戸口調査
5-2 『アストロノミカ』における「戸口調査」
6 計り知れない宇宙を計ること
まとめ
第7章 『アストロノミカ』における百科全書主義
1 古代における百科全書主義
1-1 原初からプリーニウスまでの流れ
1-2 共和政から帝政への変動と政治的地誌
2 『アストロノミカ』における百科全書主義的要素
2-1 秩序ある作品としての宇宙
2-2 『アストロノミカ』の技術・文明観と現実描写
2-3 『アストロノミカ』におけるローマの位置づけ
2-4 分類・秩序立ての原理
まとめ
おわりに
参考文献一覧
あとがき
英文要約
索引(学者名/出典/人名・作品名/事項)
略号一覧
序章 西洋古代の占星術——ローマ帝政初期まで
1 天文学と占星術
1-1 用語の区別
1-2 古代人の理解と定義
2 バビロニアからギリシアヘ
2-1 「カルダイアー人の技術」
2-2 ギリシア世界への受容
2-3 「誕生占星術」の勃興
2-4 バビロニア天文学とギリシア哲学の出会い
2-5 占星術とエジプト
3 ローマにおける占星術の隆盛
3-1 初期の証言と占星術への態度の変化
3-2 占星術受容の背景
4 初期ローマ皇帝と占星術
4-1 アウグストゥスとホロスコープ
4-2 シンボルとしての山羊座
4-3 カエサルの彗星
4-4 占星術を巡るジレンマ——追放と独占
4-5 ティベリウスとトラシュッロス
4-6 占星術と陰謀——リボー・ドルーススの事件
第1章 『アストロノミカ』の成立年代と研究史
1 作品の成立年代をめぐる問題
1-1 アウグストゥスかティベリウスか
2 完成作か否か
3 『アストロノミカ』研究の歴史
3-1 後世への影響と写本の発見
3-2 20世紀初頭までの研究の流れ
3-3 Housman以後の展開
3-4 本書の位置づけ
コラム 1 学者詩人ハウスマン
第2章 『アストロノミカ』とストア派の詩論
——第1巻の序歌をめぐって
1 第1巻序歌の構造
2 詩と題材の関係
2-1 強調される「新しさ」
2-2 ローマにおける天文詩の流行
2-3 詩的技法の検討
2-4 マーニーリウスの宇宙観
2-5 宇宙の音楽
3 『アストロノミカ』とストア派の詩論
3-1 ストア派の詩論
3-2 マーニーリウスにおける詩の捉え方
4 序歌における意味の二重性
4-1 韻文こそが宇宙を語るに相応しいということ
4-2 詩人の作品と宇宙の作品の呼応
4-3 詩人が乗り越えるべき困難
まとめ
第3章 「テクストの中の宇宙」というイメージの淵源
1 エピクーロス派の詩論の検証
1-1 ルクレーティウスは忠実なエピクーロスの徒か
1-2 エピクーロス自身の姿勢
1-3 ピロデーモスという転換点
1-4 ピロデーモスとルクレーティウスの相互関係
2 ルクレーティウスの詩論
2-1 詩という蜜と哲学という薬
3 原子論との関わり——詩と世界
3-1 原子と文字の比喩
3-2 音韻的な言葉遊びの分析
3-3 映像としての詩
3-4 反復と再生のモチーフ
3-5 詩と世界を重ね合わせること
4 詩と生の類想の淵源としてのピロデーモス
4-1 ピロデーモスのエピグラムに見られる「生という書物」
4-2 ピロデーモスの影響の可能性について
まとめ
コラム 2 ルクレーティウスにおける詩行の反復
第4章 星座神話と詩人の戯れ
——アンドロメダーの物語を中心に
1 神話に対するマーニーリウスの態度
1-1 星座起源譚とその典拠の多彩さ
1-2 神話観の発展的変容
2 アンドロメダー挿話と詩的意匠
2-1 最終巻における小叙事詩
2-2 修辞的特徴
3 ペルセウスの戦い(5.603-604)
3-1 写本の異読をどう考えるか
3-2 写本伝承の概要
3-3 文法上の問題点の整理
3-4 修辞面の検討
3-5 語源的文彩を利用した表現
3-6 問題の箇所の再解釈
まとめ
第5章 自然との闘い
——『農耕詩』から『アストロノミカ』へ
1 敬虔な態度と不敬虔な態度
1-1 詩人の飛翔
1-2 巨人族の比喩
2 『農耕詩』と『アストロノミカ』
2-1 「自然」(natura)の捉え方
2-2 神の意志・恩恵
2-3 競争による発展
2-4 自然との闘い
3 文明史の描かれ方
3-1 ルクレーティウス,ウェルギリウスとの共通点・相違点
3-2 『アストロノミカ』の中で文明史が占める位置
まとめ
コラム 3 語句の配置に見る『アストロノミカ』の遊戯詩的要素
第6章 計算としての理性——計り知れない宇宙を計ること
1 詩人=占星術師=数学者
1-1 推論による探究
1-2 詩と数学
1-3 計算としての理性
2 数学詩の伝統
2-1 ギリシア数学者たちのエピグラム
2-2 ローマにおける反発——数学と詩の相容れなさ
2-3 『重さと計量についての詩』
3 『アストロノミカ』における計算描写
3-1 第2巻——アスペクトの幾何学的描写とドーデカテーモリア
3-2 第3巻——「時の見張り」の算出
3-3 第4巻——忌み角度の列挙
4 ratioの意味の再検討
4-1 先行研究の問題点
4-2 神的理性としてのratio
4-3 ratioの変遷と会計的意味
5 戸口調査の比喩
5-1 ローマにおける戸口調査
5-2 『アストロノミカ』における「戸口調査」
6 計り知れない宇宙を計ること
まとめ
第7章 『アストロノミカ』における百科全書主義
1 古代における百科全書主義
1-1 原初からプリーニウスまでの流れ
1-2 共和政から帝政への変動と政治的地誌
2 『アストロノミカ』における百科全書主義的要素
2-1 秩序ある作品としての宇宙
2-2 『アストロノミカ』の技術・文明観と現実描写
2-3 『アストロノミカ』におけるローマの位置づけ
2-4 分類・秩序立ての原理
まとめ
おわりに
参考文献一覧
あとがき
英文要約
索引(学者名/出典/人名・作品名/事項)