ホーム > 書籍詳細ページ

プリミエ・コレクション 108

改革開放と小売業の創発

移行期中国の流通再編

石 鋭

A5上製・212頁

ISBN: 9784814002719

発行年月: 2020/03

  • 本体: 2,800円(税込 3,080円
  • 在庫あり
 
  • mixiチェック

内容

計画経済から市場経済への移行のなかで流通システムは再編された。いわゆる国営の「配給機関」に過ぎなかった百貨店は、市場メカニズムに基づく業態へと転換し、続いて登場したスーパーは中国独自の「生鮮スーパー」としての発展を遂げた。これまでの研究が着目してこなかった「流通と小売業」から描き出す初めての通史。

受賞

第24回日本流通学会 学会奨励賞

書評

『アジア経済』Vol.62 No.2(2021.6)、99-102頁、評者:鐘淑玲氏

プロフィール

石 鋭(せき えい,SHI Rui)
1989年 中国山東省に生まれる
2018年 京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了 博士(経済学)学位取得
2019年 上海対外経貿大学専任講師に就任,現在に至る
専門分野:中国経営史,流通史,小売業研究
主要著作:
「改革開放後の中国における百貨店の変容とその革新――上海市,済南市,淄博市を事例とした地域性の比較分析」(『アジア経営研究』第23号,2017年8月,153-168頁),「済南市における小売業の近代化――中国地方中核都市における流通近代化の一考察」(『中国研究月報』第71巻第12号,2017年12月,21-38頁)。

目次

序章
1.業態の成立と発展への着目
(1)業態(retail format)の定義
(2)世界の小売業態の起源とその研究史
(3)世界の百貨店業態とスーパー業態
2.制度的・経済的な文脈
3.研究の手法と枠組み
4.本書の構成

第1章 「勤倹節約社会」における百貨店――1949―1978年
1.計画経済期の経済体制と流通
(1)経済体制と流通
(2)新中国初期の市場と中間流通に対する改造
(3)消費生活
2.経済回復期における私営百貨店の対応(1949―1952年)
3.私営百貨店の改造と国営百貨店の成立(1953―1965年)
(1)経済建設期(1953―1965年)における私営百貨店の改造
(2)国営百貨店の成立とその経営
4.売場運営の動揺と回復(1966―1978年)
5.計画経済期の百貨店は「百貨店業態」といえるのだろうか?

第2章 改革の漸進性と圧縮された変容
――改革開放後の体制転換
1.流通産業における制度的な変化
(1)所有形態の多様化
(2)価格の自由化

(3)経営の自主権の獲得
(4)流通システムの改革
(5)改革の特質としての漸進性
2.小売業構造の変化――業態の視点から――
(1)百貨店の成長を中心とした小売業の発展(1978―1995年)
(2)旧来型百貨店の動揺と新興業態の急成長(1996―2000年代初頭)
(3)成長の中での再編と競争激化,eコマースの登場(2000年代初以降)
(4)中国における小売業の業態構造の変容
3.改革の漸進性と小売業の「圧縮」された変容

第3章 生鮮スーパー業態の誕生
――福建永輝集団による創発的プロセス
1.「鮮度指向」「生鮮品」の歴史的条件
(1)国際比較の中の生鮮スーパー
(2)生鮮食料品の特性と課題
(3)中国における生鮮品の消費
2.生鮮スーパーへの着目(1999―2000年)
(1)永輝の概況
(2)生鮮スーパーの発祥地としての福州市
(3)創業までの経緯と生鮮品販売への着目
3.産地直仕入れを柱とした仕入れシステムの構築(2001―2003年)
4.仕入れ・物流システムの全国展開と店舗運営の革新(2004―2010年)
(1)全国展開
(2)全国的仕入れシステムの構築
(3)物流システムの構築
(4)店舗運営
5.急激な全国化と調達システム・店舗運営の変化(2010―2016年)
6.生鮮スーパーの「業態」としての成立
7.生鮮スーパー業態の成立と歴史的条件・創発的プロセス

第4章 都市間格差の「逆説」
――漸進的な改革下での百貨店の変容・革新
1.上海市,済南市,淄博市の概況と業態変容・革新の背景
2.上海市における百貨店
(1)市場化:国営百貨店の変容(1980年代―1990年代初)
(2)「百貨店」への回帰:合理化と高級化(1993―2009年)
(3)動揺と転換:ライフスタイル化戦略(2010年代)
3.済南市における百貨店
(1)市場化:国営企業の変容(1978―1993年)
(2)百貨店化:ストアイメージの定着と経営合理化(1994―2000年代末)
(3)動揺と転換:提携とショッピングモール化(2010年代)
4.淄博市における百貨店
(1)市場化:国有百貨店の変容(1990年代半ばまで)
(2)百貨店化:ストアイメージの転換(1990年代半ば―2000年代末)
(3)動揺と転換(2010年代)
5.地方都市企業の能動性を引き出した漸進的体制改革

第5章 流通改革の罠
――アパレル小売と百貨店の変容
1.中国における百貨店とアパレル産業
(1)改革開放後のアパレル産業
(2)流通改革とアパレルの中間流通の変化
(3)百貨店とアパレル
2.百貨店アパレルの流通システムと「百貨店アパレル問題」
(1)百貨店における聯営
(2)中間流通における代理商制度
(3)流通システムと百貨店アパレル問題
3.アパレル企業の経営戦略の変化
(1)ファスト・ファッションの台頭と直営店舗の拡大
(2)eコマースの拡大とアパレル産業の成長
(3)マルチブランド戦略
(4)アパレル企業の百貨店への関与
4.百貨店における仕入れの変化
(1)国内系百貨店の集中仕入れ制度
(2)外資系百貨店の再進出とバイヤー制の導入
(3)国内系百貨店におけるバイヤー制の導入
5.流通改革の罠

結語

あとがき
参考文献
1.英語文献
2.中国語文献
3.日本語文献
索引
このページの先頭へ