学術選書050
書き替えられた聖書
新しいモーセ像を求めて

秦 剛平

四六並製・・税込 1,944円
ISBN: 9784876988501
発行年月: 2010/11
在庫あり
【シリーズ既刊】
異教徒ローマ人に語る聖書:創世記を読む
聖書と殺戮の歴史:ヨシュアと士師の時代
神の支配から王の支配へ:ダビデとソロモンの時代

内容

旧約聖書のモーセは、イスラエルの民を引き連れエジプトから脱出する出エジプト、神より授かった《汝殺すなかれ》等の戒律を含む十戒などの話で名高いが、物語はモーセによる大量虐殺などの事件を含み、矛盾に満ちあふれる。ヨセフスによる再話は、巧妙に改変して聖書とは異なった歴史物語にしている。ユダヤ・キリスト教研究の世界的権威が、聖書がどのように理解され読まれていたかを、軽妙な語り口で紹介する。

目次

はじめに

第1章……モーセ誕生の前史
 最初にテクストの問題
 エジプト人の性癖は
 イスラエルの民の増大
 男子殺害の命令
 アムラムにたいする神の啓示

第2章……モーセの誕生
 モーセの誕生
 モーセ、ナイル川へ捨てられる
 嬰児、流れから救い上げられる
 新手のお手当て詐欺?
 モーセの名の由来
 モーセの頭のよさと容貌の美しさ
 幼児モーセとファラオ
 捨て子伝説について

第3章……成人後のモーセ
 モーセ、人を殺し、ミディアンの地へ遁走
 エチオピア人のエジプト侵入
 モーセの戦果
 モーセの軍団、エチオピアの王都サバに迫る
 モーセ、エチオピアの王の娘と結婚する
 モーセ、ミディアンの地へ逃げる
 モーセとリウエルの娘たち
 燃える茨
 モーセ、使命に怯える
 神、奇跡をあらわしてモーセを励ます
 神の名についての啓示

第4章……エジプトに戻ったモーセ
 モーセ、エジプトへ戻る
 ファラオの前で
 強情なファラオ
 ヨセフスの語る第一の災禍
 ヨセフスの語る第二の災禍
 ヨセフスの語る最後の災禍

第5章……エジプト脱国とエリュトラ海での奇跡
 ヘブルびと、エジプトを脱国する
 ラメセスの町から出国して
 レートポリスの町へ
 ヨセフスの情報源は?
 種なしのパンの祭
 会衆から絶たれるとは?
 脱国した者の数は?
 数の誇張は聖書の伝統芸
 出エジプトの年代は?
 モーセの一行、荒れ野に入る
 ファラオの軍勢の追撃
 モーセの祈り
 エリュトラ海の奇跡
 エジプト軍の壊滅
 ヘブルびとの歓喜
 アレクサンドロス大王と奇跡
 奇跡にたいするヨセフスの態度
 『黄金伝説』のクレメンス

第6章……シナイ山への行進
 シナイ山への行進
 荒れ野について
 人びとの不平・不満
 指揮官が非難される状況の設定
 レフィデムの水の湧出
 神殿で保管されている文書とは?
 アマレク人との戦い(1)
 アマレク人との戦い(2)
 主はわが軍旗
 リウエルの訪問と助言

第7章……シナイ山での十戒の授与
 モーセ、シナイ山に登る
 「十の言葉」
 「十の言葉」の第二項は?
 人びと、モーセに律法をもとめる
 律法の大部分の紹介は
 再話したくない箇所は
 モーセ、神の山に登る
 モーセ、十戒の石板をもって戻ってくる
 幕屋の造営
 ヨセフスが再話しなかった物語
 異教徒の読者や聞き手を意識するヨセフス
 異教徒の知識人たち
 アロン、大祭司に選ばれる
 食物に関する律法
 レプラ患者に関する律法
 その他の規定

第8章……シナイ山からカナンの地へ
 ヘブルびとの不満、再び高まる
 モーセの一行、カナン人と戦う
 無規律の支配
 コラの反乱
 ヨセフス創作のコラのアジ演説
 ヨセフス創作のモーセの反コラ演説
 コラ、割れた大地に呑み込まれる
 モーセの定めたもろもろの規定
 モーセの姉ミリアムと兄アロンの死
 アモリ人の王シホンとの戦い
 バラクとバラムの物語
 ピネハスと神の依怙贔屓

第9章……モーセの最期
 ヨシュア、モーセの後継者になる
 モーセの告別の挨拶
 モーセの最後の言葉
 モーセの死
 ヨセフス、モーセ物語を締めくくる

 あとがきに代えて

 参考文献
 索引
 図版一覧

プロフィール

秦 剛平 (はた ごうへい)

1942年生まれ。多摩美術大学教授、同大学新図書館館長。専攻はヘレニズム・ローマ時代のユダヤ教。

 主要著書/『ヨセフス』『旧約聖書の真実』『新約聖書の真実』『聖母マリアとキリスト教伝説』(ちくま学芸文庫)、『旧約聖書続編』(リトン)、『描かれなかった十字架』『あまのじゃく聖書学講義』『旧約聖書を美術で読む』『新約聖書を美術で読む』『反ユダヤ主義を美術で読む』『絵解きでわかる聖書の世界』(以上は青土社)、『乗っ取られた聖書』『異教徒ローマ人に語る聖書—創世記を読む』(学術選書、京都大学学術出版会)ほか
 古典からの主要訳書/フィロン『フラックスヘの反論/ガイウスヘの使節』(京都大学学術出版会)、エウセビオス『コンスタンティヌスの生涯』(同上)、ピロストラトス『テュアナのアポロニオス伝1』(同上)、ヨセフス『ユダヤ戦記』全7巻(山本書店3分冊、ちくま学芸文庫3分冊)、『ユダヤ古代誌』全20巻(山本書店11分冊、ちくま学芸文庫6分冊)、『アピオーンヘの反論』(山本書店)、『自伝』(山本書店)、エウセビオス『教会史』全10巻(講談社)、『七十人訳ギリシア語聖書』5分冊[モーセ五書](河出書房新社)
 その他の主要訳書/バートン・L・マック『失われた福音書』『誰が新約聖書を書いたのか』、ジャック・マイルズ『神の伝記』、ジェームス・C・ヴァンダーカム『死海文書のすべて』、ピンハス・サデー『ユダヤの民話』上下、デイヴィッド・ゴールドスタイン『ユダヤの神話伝説』、ビアトリス・S・ヴァインリヒ『イディッシュの民話』(以上は青土社)、ジョン・D・クロッサン『イエスの言葉』(河出書房新社)ほか
 主要論文/ヨセフス、エウセビオス、七十人訳ギリシア語聖書関係のもの多数
 論集の編纂/ヨセフス論集、4分冊(H・L・フェルトマンとの共編、山本書店)、エウセビオス論集、3分冊(ハロルド・W・アトリッジとの共編、リトン)