学術選書042
災害社会

川崎 一朗

四六並製・250頁・税込 1,944円
ISBN: 9784876988426
発行年月: 2009/04
在庫あり
*推 薦*
阪神淡路大震災の直撃を受け、災害に対処するには人の和こそが最重要であることを思い知らされた私には、本書の言葉の一つ一つが心に響く。欠点指摘型議論にとどまるのではなく、自然科学の手堅さに社会科学の複眼的な手法を取り入れて提案型の発信をした著者の熱い思いに万感のエールをおくりたい。巨大開発で見捨てられた人の生活の貧困化こそが災害である。いま、私たちは何をすべきかを問う本書に、私は改めて自己反省を迫られた。
本山美彦(京都大学名誉教授)

書評

『京都新聞』'09.6.26朝刊「くらし」面
『京都新聞』'11.1.26朝刊「本の大路小路」、評者:松岡正剛氏

内容

地震予知や免震工学は劇的に進歩した。しかしそれだけで災害は防げるだろうか?耐震補強を受けられない貧困層、いたずらな投資による防災を無視した再開発……東海・東南海地震に備えるには、科学技術を生かせない現代日本の在り方から問う必要がある。『スロー地震』研究で地震学をリードする著者が、格差社会を防災科学から照射する。

目次

はじめに

第1章……意外な場所を大地震が直撃する
  2008年四川地震の地震像
  何故中国内陸部で大地震が起こるのか?
  北京周辺の地震多発地帯とアムール・プレート
  2008年岩手・宮城内陸地震
  2004年スマトラ超巨大地震
第2章……海溝型地震の危険因子が社会の脆弱性に出会う場所
  地震危険要因と地震脆弱性
  地震とは何者?
  ほぼ百年間隔で繰り返す東南海・南海地震
  海溝型地震の長期評価と被害想定
  南関東における足下の地震リスク
第3章……内陸型地震リスクを実感する
  活断層とは何者?
  活断層の長期評価
  丹波山地の異常地震活動
  有馬高槻構造線と想定地震
  京都大学阿武山観測所
  満点計画
第4章……断層直上の地震動と第四紀軟弱堆積層による長周期地震
  地震動の共振
  断層から遠方の地震動
  断層近傍の地震動
  三河地震と断層直上の地震動
  1984年長野県西部地震における「飛ぶ石」
  浜岡原子力発電所の地震リスク
  軟弱地盤と長周期地震動
  1985年メキシコ地震の大きな被害
第5章……沖積平野の大都市の脆弱性
  軟弱地盤と都市構造
  上町台地と上町断層
  密集市街地の再開発
  東大阪市の再開発モデル地区
  三木の振動台と耐震補強
  管理放棄マンション
  老朽化するライフライン
第6章……地震リスクの先送り--超高層ビルの乱立
  地震学と社会
  法の枠組み
  建築基準法と都市計画法
  関東大地震の断層モデル
  「田園都市国家の構想」
  規制緩和による民間投資の推進
  バブル景気のあと
  1995年兵庫県南部地震の被害
  超高層ビル建築ラッシュ
  紀伊半島沖地震による長周期地震動
  乱立する超高層ビルへの不安
第7章……超高層ビル社会への提案
  超高層ビルの社会的コスト
  日本の個性--木の文化と多彩な景観
  国民の財産--公共施設の跡地
  理系の知恵--緊急地震速報
  緊急地震速報についての報道への疑問
  工学系の知恵--免震と耐震
  曖昧さに不寛容な時代
  超高層ビル乱立社会への提案
  アカウンタビリティとジャーナリズム
第8章……災害脆弱性としての格差社会
  格差社会の衝撃
  2008年金融危機
  人口変動から見た社会
  大都会は人口の墓場
  「部分」と「全体」
  もっと地方分権を
  非正規雇用税の提案
第9章……次の東南海・南海地震に備える社会を作るために
  30年後への不安
  地球温暖化は事実か
  「農」の不安
  自由貿易という不公平な競争
  「地域からの挑戦」--智頭の試み
  淀川水系流域委員会
  「臨床の知とは何か」
  アカデミズムの不作為ではないのか?
附章……学問と社会--京都大学らしさとは? 
  京都大学病
  心に暖める京都大学らしさ
  ユニークな研究
  科学の進歩を妨げるもの
  研究成果の発信
  ポスドク修業
  指導教官と違う道
  理科嫌い
  京都大学における地震学と測地学
  京都大学宇治キャンパス

おわりに
参考文献
索引

プロフィール

川崎一朗(かわさき いちろう)
 京都大学防災研究所教授。理学博士。専門は地震学・測地学。
 1946年大阪市生まれ。1970年東京大学理学部地球物理学科卒業。1976年同大学院博士課程修了。1978年富山大学理学部助教授、教授を経て、2002年2月より現職。

【著書】
『サイレント・アースクェイク』(共著)東京大学出版会(1993)、『スロー地震とは何か』(NHKブックス、2006)、『地震予知の科学』(共著)(東京大学出版会、2007)など