地域研究叢書15
周縁を生きる人びと
オラン・アスリの開発とイスラーム化

信田 敏宏

菊上製・472頁・税込 5,508円
ISBN: 9784876986415
発行年月: 2004/12
在庫あり

受賞

東南アジア史学会賞 受賞

内容

国教イスラームへの改宗と「同化政策」を強力に進めるマレーシア。「森の民」として汎神論的世界に生きてきた先住民オラン・アスリは、その中で、どのようにして、アイデンティティを守ろうとしているのか。その生き様は、文化/宗教的な覇権争いとと経済開発が結びつく現代世界に共通する問題を鮮やかに象徴している。

目次

凡 例

序 章
1 フィールドワークと研究テーマ
2 開発とイスラーム化
3 本書の特長―― オラン・アスリ研究史
4 本書の構成

第I部 オラン・アスリの概況

第1章 オラン・アスリ―― 森、開発、イスラーム化
1 オラン・アスリとはどのような人びとか
2 「森の民」としてのアイデンティティ
第2章 オラン・アスリの歴史とオラン・アスリ政策
1 先住民「ビドゥアンダ」とイスラーム化―― 前植民地期
2 オラン・アスリとマレー人の創造―― 英国植民地期
3 オラン・アスリ政策の萌芽―― 日本軍占領期・非常事態宣言期
4 マレーシア独立後のオラン・アスリ政策
5 オラン・アスリのイスラーム化政策
6 飼い慣らされる人びと

第II部 ドリアン・タワール村の生活世界

第3章 ドリアン・タワール村の<風景>
1 ドリアン・タワール村の概観
2 ドリアン・タワール村の周辺
3 ドリアン・タワール村の景観
第4章 ドリアン・タワール村の歴史
1 移住小史―― マレーシア独立以前
2 マレーシア独立以後のドリアン・タワール村
3 新聞記事のなかのドリアン・タワール村
4 こんにちのドリアン・タワール村
第5章 ドリアン・タワール村の社会関係
1 家族・親族関係
2 親族群の特徴
3 「上の人びと」と「下の人びと」の歴史的生成過程
4 村の人びとの範疇化
5 アダット・グループ、宗教グループ、酔漢グループ
6 称号継承をめぐるポリティクス
第6章 ドリアン・タワール村の経済関係
1 ドリアン・タワール村の生業
2 ゴム採液業の年間サイクル
3 ゴム採液業
4 ドリアン収穫
5 「上の人びと」と「下の人びと」の経済格差
第7章 森を再利用する人びと
1 「森に生きる人びと」から「森から出た人びと」へ
2 「森を再利用する人びと」の戦術
3 「森の民」としてのアイデンティティ

第III部 イスラーム化をめぐる出来事

第8章 解決されないインセスト
1 ドリアン・タワール村のアダットをめぐる状況
2 インセストの事例
3 周縁世界におけるインセスト
第9章 「間違った結婚」をめぐるポリティクス
1 オラン・アスリのアダット
2 ドリアン・タワール村の村内ポリティクス
3 「間違った結婚」とアダットの婚姻規則
4 「間違った結婚」をめぐるポリティクス
5 アダット再考
第10章 改宗と抵抗
1 オラン・アスリのイスラーム問題
2 離婚劇の背景
3 離婚劇
4 オラン・アスリのイスラーム化
第11章 する側の論理とされる側の論理
1 上からのイスラーム化
2 バティン逮捕の噂とタンカップ・バサー騒動
3 ウンダン来訪とイスラーム宣教活動
4 後日談
5 イスラーム化をめぐるせめぎあい
第12章 結 論
1 ドリアン・タワール村再訪
2 イスラーム化への対応
3 抵抗の源泉

  主要な登場人物
  註
  引用文献
  あとがき
  索  引

プロフィール

信田敏宏(のぶた としひろ)

国立民族学博物館助手
1968年 東京都生まれ
1992年 東京都立大学人文学部卒業
2000年 同大学院社会科学研究科社会人類学専攻博士課程単位取得退学
2002年 同大学院社会科学研究科より博士(社会人類学)を取得
東京都立大学人文学部助手(2001年より)を経て、2003年より現職

主な著書
「首長の罪と罰――マレーシア、先住民社会における習慣法」宮本勝編『〈もめごと〉を処理する』雄山閣、2003年
「『上の人々』と『下の人々』――オラン・アスリ社会における開発と階層化」『社会人類学年報』(弘文堂)26号、2000年
「改宗と抵抗――マレーシアのオラン・アスリ社会におけるイスラーム化をめぐる一考察」『東南アジア研究』37巻2号、1999年
「オラン・アスリの内陸交易ルートとその戦略的側面――トゥミアの事例を中心に」『アジア・アフリカ言語文化研究』51号、1996年