日本語指示体系の歴史

李 長波

菊上製・462頁・税込 5,616円
ISBN: 9784876984466
発行年月: 2002/05
在庫あり

受賞

第31回金田一京助記念賞 受賞

内容

いわゆる「コ・ソ・ア」の変遷を国語学/認知科学双方の視点から追うことで、人称認知に依拠した指示体系の説明原理を提示しつつ、古代の「私とそれ以外」から現代の「私・貴方対それ以外」へと変化した他者認知の歴史を描く。

目次

はじめに

序章 指示詞研究の視点と課題
第一節   指示詞とは何か
第一節一項 指示とは何か
第一節二項 指示詞の定義

第二節   指示詞と人称体系
第二節一項 佐久間仮説の隠された前提
第二節二項 人称体系の二つの型
第二節三項 指示対象をめぐる話し手と聞き手との関係

第三節   指示詞の範囲とその周辺
第三節一項 指示詞の用法の広がり
第三節二項 指示詞とその文法化
第三節三項 指示詞の範囲

第二章 現代日本語の指示体系

第一節   先行研究の問題点と本章の立場
第一節一項 いわゆる「現場指示」と「文脈指示」
第一節二項 いわゆる「前方照応」と「後方照応」
第一節三項 いわゆる「聞き手領域」と「ソ系」指示詞 

第二節 本章の立場
第二節一項 知覚対象指示と観念対象指示
第二節二項 了解済の指示対象と未了解の指示対象
第二節三項 「融合関係・対立関係」と「中立関係」

第三節 「コ・ソ・ア」の選択関係
第三節一項 「対立関係」の「コ・ソ」
第三節二項 「融合関係」の「コ・ア」
第三節三項 「中立関係」の「ソ」
第三節四項 「観念指示」の「ソ」と「ア」
第三節五項 「コ・ソ・ア」の選択関係

第四節 現代語の指示体系と人称体系

第五節 「中立関係」の「ソ」と「対立関係」の「ソ」

第六節 まとめ

第三章 古代日本語の指示体系

第一節 日本語史の時代区分と文献の性格

第二節      上代語の指示体系
第二節一項    上代語の指示詞の語形
第二節二項    上代語の指示詞の語形と意味との対応関係
第二節二項(一) 統計に見る上代語の指示詞の意味的な広がり
第二節二項(二) 基本形「コ」
第二節二項(三) 「ココ」と「ソコ」
第二節二項(四) 「ソレ」と「コレ」
第二節二項(五) 「コノ」ト「ソノ」
第二節二項(六) 「カク」と「シカ」、「カ」
第二節二項(七) まとめ — 指示詞の語形と意味との対応
第二節四項    「コ・ソ・カ系」指示詞の意味的対立
第二節四項(一) 「コ系」と「ソ系」
第二節四項(二) 「カ系」
第二節四項(三) まとめ — 「コ・ソ・カ」の意味
第二節五項 上代語の指示詞と人称の関係
第二節五項(一) 「コ系」・「ソ系」と人称
第二節五項(二) 「カク」、「シカ」と人称、その他
第二節五項(三) 「カ系」と人称
第二節五項(四) まとめ — 「コ・ソ・カ」と人称

第三節      中古語の指示体系
第三節一項    中古語の指示詞の語形
第三節二項(一) 中古語の指示詞の語形と意味との対応関係
第三節二項(二) 「ソコ」の現場指示の用法
第三節二項(三) 「〜レ形」の場所指示の用法
第三節二項(四) 「〜ナタ形」の意味と用法
第三節二項(五) 指示詞の人称代名詞への転用
第三節二項(六) 「コ系」と「ソ系」の意味
第三節二項(七) 「サ」、「シカ」と「カク」
第三節二項(八) 「カ系」と「ア系」指示詞の意味
第三節三項    中古語の指示詞と人称との関係

第四節      中世語の指示体系
第四節一項    中世前期の指示詞
第四節一項(一) 中世前期の指示詞の語形
第四節一項(二) 中世前期の指示詞の語形と意味との対応関係
第四節一項(三) 中世前期の指示詞と人称との関係
第四節二項    中世後期の指示体系
第四節二項(一) 中世後期の指示詞の語形
第四節二項(二) 中世後期の指示詞の語形と意味との対応関係
第四節二項(三) 中世後期の指示詞と人称との関係

第五節      近世語の指示体系
第五節一項    近世前期の指示体系
第五節一項(一) 近世前期の指示詞の語形
第五節一項(二) 近世前期の指示詞の語形と意味との対応関係
第五節一項(三) 近世前期の指示詞と人称との関係

第五節二項    近世後期の指示体系
第五節二項(一) 近世後期の指示詞の語形
第五節二項(二) 近世後期の指示詞の語形と意味との対応関係
第五節二項(三) 近世後期の指示詞と人称との関係
第五節三項(一) 知覚指示の「コ・ソ・ア」
第五節三項(二) 観念指示の「コ・ソ・ア」

第六節      指示体系の史的変化
第六節一項    指示体系の記述的枠組み
第六節二項    指示体系の史的展開
第六節二項(一) 上代以前の指示体系 —「直接的経験対間接的経験」
第六節二項(二) 上代語の指示体系 —「一人称対非一人称」
第六節二項(三) 中古語から近世前期までの指示体系 —「一人称対非一人称」
第六節二項(四) 近世後期江戸語の指示体系 —「三人称領域」と「二人称領域」の確立
第六節三項    「一人称対非一人称」にまつわる幾つかの関連事象

第四章 古代中国語と古代日本語の人称体系

第一節   はじめに

第二節   古代中国語の指示体系と人称体系
第二節一項 古代中国語の指示体系 — 研究史の概観
第二節二項 「彼」と人称との関連
第二節三項 上古時代の指示体系の概観

第三節   上代日本語の人称体系
第三節一項 「シ」の場合
第三節二項 「キミ」の場合
第三節三項 「ヒト」の場合
第三節四項 上代日本語の人称体系の概観

第四節 古代中国語の人称体系と上代日本語との関わり
第四節一項 「他」の場合
第四節二項 「渠」の場合
第四節三項 「彼」の場合

第五節 中古語から近世後期江戸語へ — 三人称代名詞が成立するまで
第五節一項  中古和語文献における「カレ・アレ」
第五節二項  中世語から近世後期までの「カレ・アレ」の消長
第五節三項  中世前期から中世後期までの仮名法語における「カレ」の用法
第五節四項  『史記桃源抄』における「アレ」

第六節   近世語及び明治初期における「カレ」と「アレ」
第六節一項 読本と通俗物における「カレ」
第六節二項 漢文笑話翻訳本における「他(ルビ:カレ)」と「他(ルビ:アレ)」
第六節三項 噺本における「カレ・カノ・アレ」の用法
第六節四項 『怪談牡丹燈籠』と『真景色累ケ淵』の「カレ」

第七節 まとめ — 三人称代名詞が成立するまでのみちすじ

第八節 人称体系における「自・他」の問題 — いわゆる「人称代名詞の転換」

参考文献

付録一 テキスト一覧
付録二 噺本書誌

プロフィール

李 長波(り ちょうは)

京都大学大学院人間・環境学研究科助手
1962年 中国黒龍江省海倫県に生まれる
1982年 大連外国語学院日本語学科卒業
1982年 大連外国語学院日本語学科 助手
1987年 同 講師
1999年 京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了

主な著訳書
『中国の漢字問題』(共訳、大修館書店、1999年)