日本農民政策史論
開拓・移民・教育訓練

伊藤 淳史

A5上製・350頁・税込 4,536円
ISBN: 9784876983834
発行年月: 2013/12
在庫あり

受賞

2015年度日本農業経済学会学術賞

書評

『農業と経済』2014年6月号、106頁、評者:舩戸修一氏
『村落社会研究ジャーナル』21(1)、2014年10月、61-62頁、三須田善暢氏
『歴史と経済』57(2)、2015年1月、55-57頁、小島庸平氏
『農業経済研究』86(4)、2015年3月、288-290頁、並松信久氏
『農林業問題研究』50(4)、2015年3月、265-266頁、玉真之介氏

内容

土地や物や金(農地・食糧・金融等)についての農業政策史研究は数多い。しかし,政策のもとに耕作するのは農民であり,その視点から見たとき,実は国家や政策は一元的,固定的なものではない。政策の立案者のみならず,受容者にも焦点を当て,近現代日本農政の系譜,その光と影を鮮やかに描き出す。

目次

序章 「農民政策」から日本農政を捉え直す
 1. 日本農政における「人」の問題
 2. なぜ「農民政策」は見過ごされたのか? —研究史の問題点と本書の視角
 3. 農業政策研究における農民政策分析の不在
 4. 「石黒農政」評価と農民政策
 5. 移民政策研究における戦時と戦後の断絶
 6. 農本思想研究における2つの欠落 —受け手側の反応と戦後分析の不在
 7. 本書の課題と構成

第1章 戦時体制下農民の意識と行動
 1. 道府県農会報を分析することの可能性と意味
    1)道府県農会報の性格およびその変遷
    2)題材とする記事
 2. 共同作業の実態—労働・生活
    1)労働の共同化
    2)生活の共同化—共同炊事・共同託児事業
    3)共同作業の意味と性格
 3. 農民訓練に対する反応
    1)短期講習に対する農会技術員の反応
    2)「興亜青年勤労報国隊」の顛末
    3)農業増産報国推進隊
    4)「草の根農本主義」の虚実
 4. 農民意識の多様性と戦時農会の位置

第2章 加藤完治の営農指導—戦後開拓における入植者意識
 1. 実地における農業指導者・加藤完治と入植者たち
 2. 入植から加藤完治組合長辞任まで
    1)入植の経緯
    2)加藤完治の営農指導
    3)加藤完治の白河離脱
 3. 加藤弥進彦組合長による経営形態の転換
    1)全体共同経営から個別経営へ
    2)酪農への転換
 4. 定着の要因—教育としての開拓
 5. 加藤完治の営農指導—その虚像と実像

第3章 農業労務者派米事業の成立過程—戦後農政における那須皓
 1. 戦後農政としての農業移民という視点
 2. 農業労務者派米事業をめぐる時代状況
    1)「二三男問題」の登場
    2)戦後移民政策の推移
    3)カリフォルニアにおける農業労働力事情
 3. 農業実習生派米事業と国際農友会
    1)農業実習生派米事業の開始
    2)国際農友会の設立
 4. 農業労務者派米事業をめぐる農林省と外務省の対立
    1)那須訪米と外務省の警戒(54年10月〜55年5月)
    2)那須再訪米後の対立激化(55年11月〜56年2月)
    3)農林・外務両省の衝突(56年3月〜5月)
 5. 農業労務者派米協議会発足と事業の開始
 6. 戦後移民を推進したアクターたち

第4章 農民道場の戦後—農業者研修教育施設の史的展開
 1. 農林省における戦後教育改革
 2. 修錬農場(農民道場)の発足および戦時期の変化
 3. 戦後の内容「刷新」—開拓増産修錬農場・経営伝習農場
 4. 施設教育の推移—1950年代〜70年代
    1)1950年代—制度的(未)整備過程
    2)1960年代—基本法農政下の2つの姿
    3)1970年代—「脱経伝」の取り組み
 5. 新農業大学校の発足
 6. 「農民教育の三本柱」の現在

第5章 農村青年対策としての青年隊組織—食糧増産隊・産業開発青年隊・青年海外協力隊
 1. 「参加する側」からの視点 —なぜ青年隊組織は推進されるのか?
 2. 戦時期・戦後直後における青年隊組織
    1)農業増産報国推進隊・嚮導隊
    2)食糧増産隊(少年農兵隊)
    3)戦後の増産隊—「少年農兵」から「開拓増産」へ
 3. 産業開発青年隊・農村建設青年隊
    1)農村二,三男対策中央協議会の発足
    2)先駆的事例—山形・宮崎
    3)産業開発青年隊・農村建設青年隊の成立
    4)青年隊の官製化
 4. 青年海外協力隊
    1)「日本版平和部隊」構想の登場
    2)青年海外協力隊の発足
    3)「草の根の大使」の系譜 —国際農友会・日本国際農村青年連盟
    4)アメリカの「平和」,日本の「海外協力」
 5. 青年隊組織と「満洲の残像」

第6章 農業政策としての戦後移民政策—日系ブラジル移民の史的脈絡
 1. 戦後移民と現代世界・現代日本
 2. 戦後移民政策の開始と外務省・農林省の動向—1950年代
    1)1950年代前半—所管をめぐる省庁間対立
    2)1950年代後半—それぞれの政策意図
    3)最盛期の送出形態とブラジルにおける位置
 3. 新たな意義の模索—1960年代・70年代
    1)移民の減少と機構改革
    2)『農業白書』にみる農業移民の位置付け
 4. 移民政策の終焉—1980年代・90年代
 5. 移民政策の継続と農林省の関与
 6. 日系ブラジル移民研究の再検討
    1)日系ブラジル移民の史的脈絡
    2)改定入管法の意図と「意図せざる結果」
    3)グローバル・シティ論と日系人労働者
 7. 戦後日本の国家像と戦後移民

終章 戦時・戦後農民政策の展開と石黒農政の戦後
 1. 農民政策の具体相
    1)政策意図と農村現場における実態
    2)小括
 2. 戦後における農民政策の展開
    1)農民政策の展開過程
    2)小括
 3. 農民政策の戦時と戦後
    1)戦時農政における人の動員
    2)戦後農民政策—連続と(2つの)断絶
 4. 内原グループと農民政策—戦後における分岐
    1)石黒忠篤—改革派小農主義者
    2)小平権一—もうひとりの「社会派官僚」
    3)那須皓—政治なき政策論の陥穽
    4)加藤完治—皇国日本との一体化
    5)橋本伝左衛門—皇国日本への便乗
 5. 石黒農政再考
 6. 戦後農政の展望—むすびにかえて

引用文献
English Summary
あとがき
索引

プロフィール

伊藤淳史(いとうあつし)
京都大学大学院農学研究科助教
1973年 福岡県生まれ
1996年3月 京都大学農学部農林経済学科卒業
2004年3月 京都大学大学院農学研究科博士後期課程研究指導認定退学
2004年4月 日本学術振興会特別研究員
2005年4月 京都大学大学院農学研究科助手(2007年4月より助教)
2012年1月 京都大学博士(農学)取得
専攻  近現代日本農業史