地域研究叢書 26
屋敷地林と在地の知
バングラデシュ農村の暮らしと女性

吉野 馨子

菊上製・416頁・税込 3,888円
ISBN: 9784876982691
発行年月: 2013/02
在庫あり

受賞

日本村落研究学会研究奨励賞第22号(2013年度)

書評

『農業と経済』2013年9月号、102頁、評者:及川洋征氏
『東南アジア研究』51巻2号、347-350頁、評者:浅田晴久氏
『村落社会研究ジャーナル』No.40、41-42頁、評者:佐藤康行氏

内容

世界中各地で広く見られる屋敷地林、そこは、日常生活に最も近い生産の場である。そして農業システムの中で 最も高い多様性と、焼畑に次いで古い歴史をもつ。さらに特筆すべきは、その保持には女性の果たす役割が大きいということである。近代化によっ て失われつつある屋敷地林と在地の知は、持続的な社会を模索する上での鍵概念なのだ。

目次

口絵

第1部 “人が作った森”から持続社会を考える

第1章 農村,屋敷地と「在地の知」
1 人々の暮らしが育んだ“森”の多様性―研究の視角
2 屋敷地林研究の視角
3 小農という概念をめぐって
4 在地の知への注目
5 バングラデシュの屋敷地と屋敷地林
6 見えない価値を可視化する―本書の課題・目的
7 女性の活動と植物への注目―本書の方法
8 本書の構成
第2章 バングラデシュの社会・経済と調査村の概況
1 変わりゆくバングラデシュの経済と農村社会
2 調査村の水文環境
3 カジシムラ村
4 ドッキンチャムリア村
5 事例村の位置づけ

第2部 屋敷地の利用にみる生活知,在地の知の態様

第3章 屋敷地の構造とその利用:カジシムラ村の事例から
1 屋敷地の構造
2 屋敷地の植物
3 家畜の飼養
4 屋敷地生産物の利用
5 小括
【コラム1 屋敷地林のスケッチから】
第4章 屋敷地をもつということ:ドッキンチャムリア村を事例に
1 D村の屋敷地の構造
2 屋敷地をもつということ
3 小括
第5章 屋敷地林の植物利用からみえる村人の生活知:ドッキンチャムリア村を事例に
1 屋敷地でみられた植物とその利用
2 生活の論理に根差した資源と利用の多様性
3 小括
【コラム2 村の子どもの遊びと屋敷地の植物】
第6章 “女性が育む森”―屋敷地をめぐる資源の利用と管理:ドッキンチャムリア村の事例から
1 屋敷地を軸とした村の女性の世間
2 生産現場としての屋敷地
3 JSRDEのアクションプログラムから
4 小括
【コラム3 村の料理と女性―100%スローフードの世界】
【コラム4 ヘビが映し出す村の暮らし―畏れと憧れと】

第3部 屋敷地林と暮らしの変容

第7章 都市近郊化と屋敷地林の変化:カジシムラ村における屋敷地林の植生と生産物の利用の変化
1 屋敷地の植生の変化
2 新しい屋敷地を造る動き
3 生産物の利用の変化―果物に注目して
4 食の変化と屋敷地の生産物
5 暮らしの変化と女性
6 屋敷地林の伐採と補充
7 小括
【コラム5 家族,家計,屋敷地林:村の女性の語りから】(2006~07年)
第8章 屋敷地林の植生の変化が映し出す村の暮らしの変容:ドッキンチャムリア村の事例から
1 営農体系の変化
2 植生の変化
3 変化の要因―意図した変化と意図せぬ変化
4 小括
第9章 屋敷地の社会経済的役割の変容:ドッキンチャムリア村の事例から
1 屋敷地の「共」的な利用の変化
2 屋敷地林の植物と人々の関わり方の変容
3 屋敷地林からの生産物の利用
4 世帯の社会経済的状況による屋敷地利用の態度の相違
5 小括
【コラム6 村の女の居場所】
第10章 21世紀における屋敷地林の意味を考える
1 屋敷地の成り立ち―水文環境への適応
2 植生の多様性
3 暮らしのニーズに基づいた生産体系
4 屋敷地の変容―変わったものと変わらぬもの
5 屋敷地と女性
6 バングラデシュ農村の“経済”と屋敷地
7 近代技術と屋敷地林
8 バングラデシュの農村開発と屋敷地林
9 おわりに―バングラデシュの屋敷地林が私たちに問いかけること

図表集
Appendix
Appendix 1 調査の方法
Appendix 2 2つの調査村で観察された全植物リスト
引用文献リスト
あとがき
索引

プロフィール

吉野 馨子(よしの けいこ)
1965年 千葉県生まれ。1990年,京都大学大学院農学研究科(熱帯農学専攻)修了。神奈川県庁,国際協力事業団ジュニア専門員,農村生活総合研究センター研究員などを経て,2010年より法政大学サステイナビリティ研究教育機構プロジェクトマネージャ(准教授)。博士(農学)。主なフィールドはバングラデシュ農村及び日本の農山漁村研究。専門は生活農(林漁)業論。

主な著作,論文に『「3.11」からの再生―三陸の港町・漁村の価値と可能性』(共編著,お茶の水書房,2013-近刊),「消費社会における『食の安全』の限界」(お茶の水書房『持続可能性の危機』,2012),「グローバリゼーション下における生存基盤としての農村―ローカルな生活者・資源・コミュニティ・制度からサステイナビリティを考える」(「サステイナビリティ研究」第2号,2011年)。The Role and possibilities for subsistence production: Reflecting the experience in Japan, In: From Community to Consumuption: New and Classical Themes in Rural Sociological Research (Emerald Publishing, 2010),「氾濫原の恵みを生かした村の暮らしと環境の変容―バングラデシュ農村における伝統的な資源利用と近代化」(古今書院『村落開発と環境保全』,2008)。「住民による農産物の入手と利用からみた地域内自給の実態把握―長野県飯田市の事例調査から」『農林業問題研究』44巻3号(共著,2008)など。