学術選書 076
埋もれた都の防災学
都市と地盤災害の2000年

釜井 俊孝

四六並製・224頁・税込 1,944円
ISBN: 9784814000425
発行年月: 2016/09
在庫あり

書評

月刊『地理』2017年2月号、116頁、評者:吉田英嗣氏
『毎日新聞』2017年2月19日付「今週の本棚」

内容

半分だけ倒壊したコロッセオ,大阪城の堀跡に生じた凹み,年々高さを増す天井川……。これらはいずれも,“やり過ぎてしまった”開発に対する自然からの反撃である。地下に埋もれた災害の痕跡は,人々がその地で自然と対峙してきた歴史を伝え,現代に続く災害リスクを教えてくれる。私達の暮らす町の下には,どのような歴史が眠っているのだろうか? 地盤災害と人間の関係を探る防災考古学への招待。

目次

はじめに―過去から照射する未来

第1章……ローマも一日にしてならず―都市と災害の歴史
 永遠にして災害の都
 コロッセオのある限り
 世界史を揺るがした地震
 古代のツインタワー
 ローマの地下世界
 古代のゴミ山
 二〇〇〇年前の震災復興
 コラム1 「タルペイアの崖」の地層
 コラム2 リスボン地震の災後

第2章……古墳は語る―科学と考古学の間
 巨大内陸地震の爪痕
   大王の墳墓と地すべり―今城塚古墳
   古代航路のランドマーク―西求女塚古墳
 プレート地震の感震器
   王家の谷の古墳―カヅマヤマ古墳
   宅地開発に揺れる古墳―赤土山古墳
 コラム3 近畿トライアングル

第3章……水底の証言者
 千軒遺跡
 御厨の地すべり
   湖底に向かう地すべり/湖岸地すべりのメカニズム
 フロイスが報告した地すべり
   湖底地形が語るもの/複数の地すべり
 江戸時代の湖底遺跡
   現代のウォーターフロントで
 コラム4 海底に残る関東大震災の痕跡

第4章……山崩れと人生
 山の木を刈るということ―タブーと防災
 石庭の砂の山地
   山の成り立ち/山崩れの副産物
 開発の始まり
   山中の遺跡/埋没黒色土壌
 一二世紀の大震災
 離宮の谷
 マツとはげ山
   京マツタケの始まり/花粉は語る
 山の寺と土石流
   科学の時間と生活の時間/堆積物が語る谷の歴史
   崩壊の免疫性/中世の宗教都市
 現代の山麓で
 コラム5 ヨーロッパの大開墾時代

第5章……天井川時代
 天井川はどうしてできたのか
 天井川以前―木津川河床遺跡の世界
 天井川の基底
   南山城、北河内の天井川/多羅尾盆地
   周防国府周辺の開発と天井川/天井川の始まり
 中世社会と天井川
   高まる開発圧力/中世を分かつもの
 近世の天井川と周辺地域の洪水
   浮世絵に描かれた天井川/食料増産時代の天井川/埋まる古墳
   埋まる太閤堤/洪水は止まらない/土砂留制度
 近代化の中の天井川
   天井川トンネル/近代砂防事業の始まり
   鉱毒と天井川/茶畑が作った天井川
 現代の天井川
   戦中の森林荒廃と戦後の復興/極端気象の時代
 コラム6 東南アジアの洪水と森林伐採

第6章……埋もれた近世都市
 埋もれた大阪
   大阪の成り立ち/埋もれた谷筋/埋もれた崖
   大阪城の外堀/近世大阪の産業遺構
 秀吉の京都
   総構の時代/御土居堀/聚楽第

第7章……埋もれた都の近現代
 都市型斜面災害の出現
   土地制度が防いでいた災害/欲が招いた崖崩れ
   都市における斜面災害の始まり
 埋もれた郊外
   消えゆく山林/消えゆく里山/宅地の地すべり

おわりに

基礎知識1 地震の痕跡
基礎知識2 地すべり地形
基礎知識3 液状化現象
基礎知識4 年代測定法
基礎知識5 洪水・堆積物
基礎知識6 表面波探査法

プロフィール

釜井 俊孝(かまい としたか)
1957年東京都生。1979年筑波大学卒業(地球科学専攻)。1986年日本大学大学院修了(地盤工学専攻)。利根コンサルタント(株)技師(1979~1986)。通商産業省工業技術院・地質調査所(現・産業技術総合研究所)研究官・主任研究官(1986~1995)。日本大学理工学部土木工学科助手・専任講師・助教授(1995~2000)。京都大学防災研究所助教授・教授(2000~現在)。博士(工学)

主要著書など
『斜面防災都市』理工図書2002年、『地震で沈んだ湖底の村』サンライズ出版2012年、他論文報告多数。