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東京電力福島第一原子力発電所事故によって,原子力に対する信頼は大きく失われました。「安全神話」への失望や反発は当然ですが,原子力の利用や管理一般に関して根拠に欠ける情報が飛び交う状況に至ってしまったのは危険です。原子力利用は,医療など様々な分野に広がっていますし,特に事故原子炉の廃炉が長い年月にわたる課題になる中,正しい知識や管理技術の継承が失われることで,かえって,危険が増してしまうからです。第1分冊では,事業者や政府から独立した専門家の立場から,東電事故の全体像と原子力の安全管理に関する問題点について考えます。
山名 元(やまな はじむ;総合編集,1・2・3・7章執筆)
京都大学名誉教授
東北大学大学院工学研究科を修了後,動力炉・核燃料開発事業団で核燃料サイクル研究開発に従事。平成8年より19年間,京都大学原子炉実験所にてアクチニド化学研究に従事。
福田俊彦(ふくだ としひこ;4章執筆)
原子力損害賠償・廃炉等支援機構 執行役員
東京大学大学院工学研究科を修了後,東京電力株式会社で軽水型原子力発電所の設計・建設,運転・保守業務に従事。福島事故後は,本社緊急対策本部,福島第一安定化センターにて事故収束活動に従事。平成27年より現職。
杉本 純(すぎもと じゅん;5章,コラム 1・2・3執筆)
東京工業大学 特任教授(前京都大学教授)
京都大学大学院工学研究科(原子核工学専攻)を修了後,日本原子力研究所で原子炉安全研究に従事。平成23年から28年まで,京都大学原子核工学専攻にてシビアアクシデント研究に従事。平成28年より現職。
中島 健(なかじま けん;5章)
京都大学 教授
北海道大学大学院工学研究科を修了後,日本原子力研究所(現,日本原子力研究開発機構)にて,臨界安全性等の研究に従事。平成15年より現在まで,京都大学 原子炉実験所にて,原子炉物理研究・教育及び研究炉安全管理等に従事。
平野光將(ひらの みつまさ;6章)
電力中央研究所 研究アドバイザー
東京大学工学部原子力工学科卒業後,日本原子力研究所で高温ガス炉などの新型熱中性子炉の開発に従事。平成元年から原子力規制支援機関(NUPEC,JNES)にて確率論的リスク評価技術の開発と活用の研究に従事。平成26年より現職。
谷口武俊(たにぐち たけとし;付録1執筆)
東京大学政策ビジョン研究センター 教授
東京大学大学院工学系研究科博士課程を修了後,(財)エネルギー総合工学研究所,電力中央研究所社会経済研究所を経て,平成24年より現職。
専門は技術リスク問題の政策科学研究。
中川政樹(なかがわ まさき;付録2執筆)
原子力損害賠償・廃炉等支援機構 理事特別補佐
1973年,京都大学経済学部経済学科を卒業後,丸紅株式会社に入社,原子力機器・技術の営業を担当。2006年より(独)原子力安全基盤機構,2014年より現職。
仲谷麻希(なかたに まき;全体構成,編纂事務局)
京都大学原子炉実験所 非常勤職員
高校在学中に1年間アメリカへ交換留学
ミューズ音響芸術学院卒業後,会議音響オペレータ—,一般企業事務などを経て2012年から同実験所 原子力安全基盤科学研究プロジェクト事務に従事。
京都大学名誉教授
東北大学大学院工学研究科を修了後,動力炉・核燃料開発事業団で核燃料サイクル研究開発に従事。平成8年より19年間,京都大学原子炉実験所にてアクチニド化学研究に従事。
福田俊彦(ふくだ としひこ;4章執筆)
原子力損害賠償・廃炉等支援機構 執行役員
東京大学大学院工学研究科を修了後,東京電力株式会社で軽水型原子力発電所の設計・建設,運転・保守業務に従事。福島事故後は,本社緊急対策本部,福島第一安定化センターにて事故収束活動に従事。平成27年より現職。
杉本 純(すぎもと じゅん;5章,コラム 1・2・3執筆)
東京工業大学 特任教授(前京都大学教授)
京都大学大学院工学研究科(原子核工学専攻)を修了後,日本原子力研究所で原子炉安全研究に従事。平成23年から28年まで,京都大学原子核工学専攻にてシビアアクシデント研究に従事。平成28年より現職。
中島 健(なかじま けん;5章)
京都大学 教授
北海道大学大学院工学研究科を修了後,日本原子力研究所(現,日本原子力研究開発機構)にて,臨界安全性等の研究に従事。平成15年より現在まで,京都大学 原子炉実験所にて,原子炉物理研究・教育及び研究炉安全管理等に従事。
平野光將(ひらの みつまさ;6章)
電力中央研究所 研究アドバイザー
東京大学工学部原子力工学科卒業後,日本原子力研究所で高温ガス炉などの新型熱中性子炉の開発に従事。平成元年から原子力規制支援機関(NUPEC,JNES)にて確率論的リスク評価技術の開発と活用の研究に従事。平成26年より現職。
谷口武俊(たにぐち たけとし;付録1執筆)
東京大学政策ビジョン研究センター 教授
東京大学大学院工学系研究科博士課程を修了後,(財)エネルギー総合工学研究所,電力中央研究所社会経済研究所を経て,平成24年より現職。
専門は技術リスク問題の政策科学研究。
中川政樹(なかがわ まさき;付録2執筆)
原子力損害賠償・廃炉等支援機構 理事特別補佐
1973年,京都大学経済学部経済学科を卒業後,丸紅株式会社に入社,原子力機器・技術の営業を担当。2006年より(独)原子力安全基盤機構,2014年より現職。
仲谷麻希(なかたに まき;全体構成,編纂事務局)
京都大学原子炉実験所 非常勤職員
高校在学中に1年間アメリカへ交換留学
ミューズ音響芸術学院卒業後,会議音響オペレータ—,一般企業事務などを経て2012年から同実験所 原子力安全基盤科学研究プロジェクト事務に従事。
原子力の利用を考える基礎を知るために——刊行にあたって
はじめに
第1章 大学人が見た原子力発電所事故 (山名 元)
原子力事故の結果
事故の検証活動により見えて来たもの
人災であった原子力事故
大学として取り組めること
原子力の安全基盤科学への取組
何を語るか
コラム 1 スリーマイル島原子力発電所2号機事故 (杉本 純)
第2章 原子炉の仕組み (山名 元)
2-1 原子力発電と原子炉型
2-1-1 原子炉の基本構成
2-1-2 世界で使われている様々な原子炉型
2-1-3 発電用原子炉の利用状況
2-2 軽水炉の仕組み
2-2-1 軽水炉の基本原理
2-2-2 沸騰水型原子炉(BWR)の仕組み
2-2-3 加圧水型原子炉(PWR)の仕組み
コラム 2 チェルノブイリ原子力発電所4号機事故 (杉本 純)
第3章 我が国の原子力利用の歴史を振り返る (山名 元)
3-1 原子力利用拡大の歴史
3-1-1 原子力開発の開始と原子力の導入
3-1-2 軽水炉の改良
3-1-3 事故の発生と世界的な原子力停滞
3-1-4 核不拡散と核セキュリティ
3-1-5 原子力再拡大の流れから2011年まで
3-2 原子力政策と世論
3-2-1 昭和31年~昭和42年長期計画
3-2-2 昭和47年~昭和57年長期計画
3-2-3 昭和62年~平成6年長期計画
3-2-4 2000年長期計画と原子力政策大綱
3-2-5 原子力世論の経緯
第4章 福島第一原子力発電所で起こったこと (福田俊彦)
4-1 地震発生から全電源喪失まで
4-1-1 地震発生
4-1-2 非常時冷却設備
4-1-3 津波襲来
4-1-4 まとめ
4-2 過酷事故・炉心溶融・水素爆発
4-2-1 1号機:3月11日~12日
4-2-2 3号機:3月13日~14日
4-2-3 2号機:3月14日~15日
4-2-4 4号機:3月15日
4-2-5 まとめ
4-3 放射性物質の放出と広域環境汚染
4-4 使用済燃料プールの危機回避
4-5 廃炉への挑戦
4-6 福島事故の本質的問題
第5章 原子力の安全確保に向けて (中島 健・杉本 純)
5-1 原子力安全の考え方
5-1-1 原子力施設の安全確保
5-1-2 深層防護
5-1-3 安全設計と安全評価
5-1-4 シビアアクシデント
5-1-5 固有の安全性
5-1-6 想定外の「全電源喪失」
5-1-7 シビアアクシデントとアクシデントマネジメント
5-2 原子力安全研究
5-2-1 福島第一原子力発電所事故の前に実施された原子力安全研究
5-2-2 原子力安全研究は福島事故に役立ったか
5-2-3 今後の原子力安全研究
5-3 原子力防災について
5-3-1 原子力防災とは何か
5-3-2 原災法制定以前の経緯
5-3-3 JCO臨界事故における原子力防災
5-3-4 福島第一原子力発電所事故における防災
5-3-5 まとめ
5-4 福島第一原子力発電所事故後の安全規制と防災
5-4-1 新規制基準の策定
5-4-2 原子力防災の見直し
5-4-3 今後の信頼性向上に何が必要か
コラム3 設計基準事象 (杉本 純)
第6章 原子力の確率論的リスク評価 (平野光將)
6-1 確率論的リスク評価の考え方
6-1-1 原子力施設の安全確保の基本的考え方
6-1-2 深層防護(多重防護)とは
6-1-3 決定論的安全評価
6-1-4 確率論的リスク評価(PRA)の基本的考え方
6-1-5 PRAの特徴と不確実さ
6-2 原子力発電所の確率論的リスク評価
6-2-1 PRAの概要(評価の範囲)
6-2-2 レベル1PRA
6-2-3 レベル2PRA
6-2-4 レベル3PRA
6-2-5 地震PRA
6-3 PRAリスク情報を活用した安全規制/安全管理活動の枠組み
6-3-1 基本的考え方
6-3-2 決定論的アプローチと確率論的アプローチの統合
6-4 我が国におけるリスク情報活用の状況
第7章 原子力研究への大学の取り組み (山名 元)
7-1 原子力関連技術者のコミットメント
7-2 大学としての知の統合
7-3 科学と工学への取り組み
7-3-1 科学と工学のバランス
7-3-2 社会と科学と工学
7-3-3 大学の役割
7-3-4 社会との対話
7-3-5 大学教員の想像力
7-3-6 原子力リスクへの対応
7-4 大学での原子力研究への取り組み
7-4-1 広義の原子力との協働
7-4-2 自然現象・環境現象への取り組み
7-4-3 現象の解明とモデル化・計算技術高度化
7-4-4 原子力レガシー対応研究
7-4-5 原子力の本質課題の解決に向けた新技術の可能性探求研究
7-4-6 放射線安全・放射線影響に関わる研究
7-5 複合的な原子力科学研究への取り組みの重要性
付録 1 技術リスクを考える (谷口武俊)
1.リスクとは何か(リスクの概念)
2.現代社会におけるリスクの特徴
3.科学技術とリスク・ガバナンス
4.おわりに
付録 2 「私家本 原子力規制」
元商社マンによる原子力規制入門 (中川政樹)
第1節 40年の原子力ビジネスから見えた景色
1-1 学生時代の原点,全体像の把握
1-2 異なる文化との遭遇
1-3 ロシア製高速炉技術を売り込み
1-4 ベトナム人に指摘された審査マニュアルの不在
1-5 原子力安全という当たり前のことの学習
第2節 IAEA安全要件と各国規制機関の実態
2-1 原子力安全を守る枠組み
2-2 10項目のIAEA安全原則
2-3 規制機関の設置・独立性
2-4 安全に対する一義的責任
2-5 国際協力の責務と取り決め
2-6 規制機関の組織と人材育成
2-7 助言機関・支援機関との連携
第3節 模索される原子力「許認可」のあり方
3-1 事業者と規制者の対峙の場
3-2 安全審査の体系
3-3 「新規制基準」と再稼働申請
3-4 パッチワークの日本の検査制度
3-5 日本型ROPを目指して—リスク情報を活用した規制制度へ
3-6 「福島の悲劇」=飽和状態
3-7 IAEA総会の日本批判
参考文献
おわりに
索引
はじめに
第1章 大学人が見た原子力発電所事故 (山名 元)
原子力事故の結果
事故の検証活動により見えて来たもの
人災であった原子力事故
大学として取り組めること
原子力の安全基盤科学への取組
何を語るか
コラム 1 スリーマイル島原子力発電所2号機事故 (杉本 純)
第2章 原子炉の仕組み (山名 元)
2-1 原子力発電と原子炉型
2-1-1 原子炉の基本構成
2-1-2 世界で使われている様々な原子炉型
2-1-3 発電用原子炉の利用状況
2-2 軽水炉の仕組み
2-2-1 軽水炉の基本原理
2-2-2 沸騰水型原子炉(BWR)の仕組み
2-2-3 加圧水型原子炉(PWR)の仕組み
コラム 2 チェルノブイリ原子力発電所4号機事故 (杉本 純)
第3章 我が国の原子力利用の歴史を振り返る (山名 元)
3-1 原子力利用拡大の歴史
3-1-1 原子力開発の開始と原子力の導入
3-1-2 軽水炉の改良
3-1-3 事故の発生と世界的な原子力停滞
3-1-4 核不拡散と核セキュリティ
3-1-5 原子力再拡大の流れから2011年まで
3-2 原子力政策と世論
3-2-1 昭和31年~昭和42年長期計画
3-2-2 昭和47年~昭和57年長期計画
3-2-3 昭和62年~平成6年長期計画
3-2-4 2000年長期計画と原子力政策大綱
3-2-5 原子力世論の経緯
第4章 福島第一原子力発電所で起こったこと (福田俊彦)
4-1 地震発生から全電源喪失まで
4-1-1 地震発生
4-1-2 非常時冷却設備
4-1-3 津波襲来
4-1-4 まとめ
4-2 過酷事故・炉心溶融・水素爆発
4-2-1 1号機:3月11日~12日
4-2-2 3号機:3月13日~14日
4-2-3 2号機:3月14日~15日
4-2-4 4号機:3月15日
4-2-5 まとめ
4-3 放射性物質の放出と広域環境汚染
4-4 使用済燃料プールの危機回避
4-5 廃炉への挑戦
4-6 福島事故の本質的問題
第5章 原子力の安全確保に向けて (中島 健・杉本 純)
5-1 原子力安全の考え方
5-1-1 原子力施設の安全確保
5-1-2 深層防護
5-1-3 安全設計と安全評価
5-1-4 シビアアクシデント
5-1-5 固有の安全性
5-1-6 想定外の「全電源喪失」
5-1-7 シビアアクシデントとアクシデントマネジメント
5-2 原子力安全研究
5-2-1 福島第一原子力発電所事故の前に実施された原子力安全研究
5-2-2 原子力安全研究は福島事故に役立ったか
5-2-3 今後の原子力安全研究
5-3 原子力防災について
5-3-1 原子力防災とは何か
5-3-2 原災法制定以前の経緯
5-3-3 JCO臨界事故における原子力防災
5-3-4 福島第一原子力発電所事故における防災
5-3-5 まとめ
5-4 福島第一原子力発電所事故後の安全規制と防災
5-4-1 新規制基準の策定
5-4-2 原子力防災の見直し
5-4-3 今後の信頼性向上に何が必要か
コラム3 設計基準事象 (杉本 純)
第6章 原子力の確率論的リスク評価 (平野光將)
6-1 確率論的リスク評価の考え方
6-1-1 原子力施設の安全確保の基本的考え方
6-1-2 深層防護(多重防護)とは
6-1-3 決定論的安全評価
6-1-4 確率論的リスク評価(PRA)の基本的考え方
6-1-5 PRAの特徴と不確実さ
6-2 原子力発電所の確率論的リスク評価
6-2-1 PRAの概要(評価の範囲)
6-2-2 レベル1PRA
6-2-3 レベル2PRA
6-2-4 レベル3PRA
6-2-5 地震PRA
6-3 PRAリスク情報を活用した安全規制/安全管理活動の枠組み
6-3-1 基本的考え方
6-3-2 決定論的アプローチと確率論的アプローチの統合
6-4 我が国におけるリスク情報活用の状況
第7章 原子力研究への大学の取り組み (山名 元)
7-1 原子力関連技術者のコミットメント
7-2 大学としての知の統合
7-3 科学と工学への取り組み
7-3-1 科学と工学のバランス
7-3-2 社会と科学と工学
7-3-3 大学の役割
7-3-4 社会との対話
7-3-5 大学教員の想像力
7-3-6 原子力リスクへの対応
7-4 大学での原子力研究への取り組み
7-4-1 広義の原子力との協働
7-4-2 自然現象・環境現象への取り組み
7-4-3 現象の解明とモデル化・計算技術高度化
7-4-4 原子力レガシー対応研究
7-4-5 原子力の本質課題の解決に向けた新技術の可能性探求研究
7-4-6 放射線安全・放射線影響に関わる研究
7-5 複合的な原子力科学研究への取り組みの重要性
付録 1 技術リスクを考える (谷口武俊)
1.リスクとは何か(リスクの概念)
2.現代社会におけるリスクの特徴
3.科学技術とリスク・ガバナンス
4.おわりに
付録 2 「私家本 原子力規制」
元商社マンによる原子力規制入門 (中川政樹)
第1節 40年の原子力ビジネスから見えた景色
1-1 学生時代の原点,全体像の把握
1-2 異なる文化との遭遇
1-3 ロシア製高速炉技術を売り込み
1-4 ベトナム人に指摘された審査マニュアルの不在
1-5 原子力安全という当たり前のことの学習
第2節 IAEA安全要件と各国規制機関の実態
2-1 原子力安全を守る枠組み
2-2 10項目のIAEA安全原則
2-3 規制機関の設置・独立性
2-4 安全に対する一義的責任
2-5 国際協力の責務と取り決め
2-6 規制機関の組織と人材育成
2-7 助言機関・支援機関との連携
第3節 模索される原子力「許認可」のあり方
3-1 事業者と規制者の対峙の場
3-2 安全審査の体系
3-3 「新規制基準」と再稼働申請
3-4 パッチワークの日本の検査制度
3-5 日本型ROPを目指して—リスク情報を活用した規制制度へ
3-6 「福島の悲劇」=飽和状態
3-7 IAEA総会の日本批判
参考文献
おわりに
索引