変容する親密圏/公共圏 12
せめぎ合う親密と公共
中間圏というアリーナ

秋津元輝・渡邊拓也 編著

A5上製・・税込 4,536円
ISBN: 9784814000586
発行年月: 2017/01
在庫あり

目次

序 章 中間圏:親密性と公共性のせめぎ合うアリーナ [秋津元輝]
 1 つながりと現代
 2 親密圏と公共圏の継ぎ目
   2─1.親密圏と公共圏の定義
   2─2.対抗的公共圏
   2─3.ソシアビリテ(sociabilité)
 3 コミュニティから「中間圏」へ
   3─1.コミュニティとの訣別
   3─2.アリーナとしての「中間圏」
   3─3.中間圏が占める場所
 4 中間圏を構成する2つの問題系
   4─1.中間圏への期待のまなざし ─ライン1─
   4─2.生成空間としての中間圏 ─ライン2─
 5 本書の課題と構成

第I部 岐路に立たされるコミュニティ

第1章 岐路に立たされるコミュニティ ―宮古島の祭祀組織の生成と再編成を事例に [平井芽阿里]
 1 祭祀組織から考える
 2 調査地の概要
   2─1.宮古島西原
   2─2.祭祀組織
   2─3.村落祭祀
   2─4.神役の役割
 3 変容
   3─1.意図的に開く
   3─2.加入者数
   3─3.途中加入者
   3─4.「あなたの知らない世界」
 4 公開
   4─1.写真集の発売
   4─2.外部に開かれる
   4─3.CDの販売
   4─4.雑誌への公開
 5 生成と再編成
   5─1.開かれながら閉じる
   5─2.開くことで閉じる
   5─3.祭祀組織を考える

第2章 「コミュニティ」のはらむ問題性 ―マヤ系先住民女性の家事労働の視点から考える [中田英樹]
 1 グァテマラに暮らすマヤ系先住民
 2 先住民文化の否定から多文化主義下での観光資源化へ
 3 本章の理論的枠組みと分析対象の設定
 4 先住民女性の労働構成変化─ライフ・ヒストリーの聞き取りから
   4─1.Aさん:地元定住拡大家族を基盤に村のインテリへ
   4─2.‌BさんとCさんの姉妹の事例:山奥から移住後は兄姉で支え合って安定した現在
   4─3.‌DさんとEさんの事例:家族分断で移住した脆弱な互助の土壌
 5 再生産労働からみた生産労働市場

第3章 地域社会のグレーゾーン ―ホームレスから地元志向現象を考える [川端浩平]
 1 はじめに―コミュニティと中間圏の間
 2 「ホーム」を守る
   2─1.岡山ガーディアンズの結成
   2─2.ストリートネームとモチベーション
   2─3.高圧的ではない防犯パトロール
   2─4.「見て見ぬふりをしない」
   2─5.軽犯罪者予備軍の管理とジレンマ
   2─6.小括
 3 「ホーム」におけるつながり
   3─1.深夜のゲームセンター
   3─2.ホームタウンのホームレス,河島君との出会い
   3─3.河島君の生業
   3─4.河島君の楽しみと貧困ビジネス
   3─5.ホームレスを排除するデザイン
   3─6.小括
 4 まとめに―2つの意図せざる結果

第II部 中間圏という視座

第4章 インターネットとまたがる「コミュニティ」 ―西表島リゾート開発と「ネット原告団」編成を事例に [越智正樹]
 1 本章の目的
   1─1.普遍,特殊,当事者性
   1─2.表象可能性の濃淡と当事者性の問題
 2 事例─リゾート開発と「ネット原告団」
   2─1.事例の概要
   2─2.「地元の実態」─場所の履歴と集団編成
   2─3.本訴原告団の編成
   2─4.小括
 3 「ネット原告団」という中間圏の場
   3─1.「ネット原告団」の諸特性
   3─2.「ネット原告団」と親密圏・公共圏
 4 むすび―当事者性が立ち現れる場

第5章 新しい多世代コミュニティ ―政策対象としての可能性と課題 [柴田 悠]
 1 なぜ多世代コミュニティに着目するのか
   1─1.社会関係の定形化条件
   1─2.背景としての社会保障財政
   1─3.多世代コミュニティへの期待
 2 多世代コミュニティ―事例比較から見る成立条件
   2─1.地縁型
   2─2.共住型
   2─3.デイケア型
   2─4.保育型
   2─5.居場所型
   2─6.多世代コミュニティの成立条件
   2─7.政策対象となったコミュニティが孕む限界
 3 多世代コミュニティの可能性と課題

第6章 離散をつなぎなおす ―なぜサハリン残留日本人は帰国できたのか [中山大将]
 1 〈場〉から観る「残留日本人」の戦後
 2 樺太日本人社会の形成と解体
   2─1.樺太日本人社会の形成
   2─2.樺太日本人社会の解体
 3 冷戦期ソ連サハリン社会の中での残留日本人
   3─1.サハリン残留日本人の概要
   3─2.冷戦期の残留日本人の孤立化
   3─3.州都グループという〈場〉
   3─4.州都グループとサハリン残留日本人
 4 ポスト冷戦期サハリン残留日本人帰国運動
   4─1.州都グループからサハリン北海道人会へ
   4─2.永住帰国と家族・国家
   4─3.サハリン北海道人会という〈場〉
 5 〈場〉の脆さと外部要因の重要性

第7章 インターネットカフェという場所 ―マニラ首都圏の事例からみるつながりの課題 [平田知久]
 1  はじめに―方法としてのインターネットカフェ
 2  人材の送り出し国としてのフィリピンとIC
   2─1.平日の深夜にICで
   2─2.不安定なフィリピンの雇用環境
 3  ICに見る英語の功罪
   3─1.Microsoft Office 2010が使えます!
   3─2.英語とゲーム
 4  ICが地域に根付くということ
   4─1.ICオーナーたちの実践
   4─2.OFWとIC
 5 おわりに―人々のつながりを維持するための条件とその課題

第III部 中間圏概念の地平

第8章 雑談が人を結ぶ ―つながりに関する歴史社会学的考察 [渡邊拓也]
 1 中間圏の位相
 2 共食・浴場・カフェ
 3 対面的/非対面的コミュニケーション
 4 ‌共的(コミュナル)なつながりから社交的(ソーシャル)なつながりへ
 5 「コミュニケーション能力」の時代

第9章 モノと人との出会い―農業機械をめぐるユーザーとメーカーの交渉  [芦田裕介]
 1  モノと人の「出会い」
 2  「カスタマイズ型」技術開発
   2─1.ユーザーと農業機械との関わり方
   2─2.プロ農家における農業機械との関わり方
   2─3.小括
 3  「汎用型」技術開発
   3─1.農業機械産業の歴史
   3─2.藤井鉄工所からセイレイ工業へ
   3─3.クボタの開発
   3─4.現場の意見を汲み上げる
   3─5.小括
 4  モノと人の関係の再編に向けて

第10章 演奏空間という〈場〉 ―立ち上がるリミナリティとチベット難民社会の日常性 [山本達也]
 1  音,身体,中間圏
 2  概説
   2─1.チベット難民とは,その生活環境
   2─2.難民社会の文化ナショナリズム政策とアカマバンドの概略
 3  ムンドゴッド公演を取りまく状況
   3─1.伝統公演初日の事例
   3─2.アカマの公演2日目の事例
 4  難民社会内の「都市・農村問題」
 5  ムンドゴッドでの演奏空間から見えてくるもの
 6  演者たちが引きずる情動
 7  暴力と中間圏

終章 〈絆〉の理論から〈場〉の理論へ [渡邊拓也]

あとがき
索引(人名・事項)
執筆者紹介

プロフィール

執筆者紹介(執筆順,[ ]は担当章)

秋津元輝(あきつ もとき)[編者,序章]
1960年生まれ,京都大学大学院農学研究科教授
主要論文・著書:『農業生活とネットワーク―つきあいの視点から』(御茶の水書房,1998年),共著『農村ジェンダー―女性と地域への新しいまなざし』(昭和堂,2007年),編著『集落再生―農山村・離島の実情と対策』(農山漁村文化協会,2009年),「食と農をつなぐ倫理を問い直す」(桝潟俊子ほか編『食と農の社会学―生命と地域の視点から』ミネルヴァ書房,2014年),「近代農法を支えた思想と社会」(江頭宏昌編『人間と作物』ドメス出版,2016年)

平井芽阿里(ひらい めあり)[第1章]
1980年生まれ,中部大学全学共通教育部講師
主要論文・著書:『宮古の神々と聖なる森』(新典社,2012年),「ナナムイの森とともに」(小島亮編『学問の森へ 若き探求者による誘い』,風媒社,2011年),「村落祭祀の継承に関する一考察―宮古島西原の「ミャークヅツ」を事例に」(田窪行則編『琉球列島の言語と文化 その記録と継承』,くろしお出版,2013年),「海を越える神役―移住者と故郷との宗教的連帯」(小熊誠編『〈境界〉を越える沖縄: 人・文化・民俗(叢書・文化学の越境 24)』,森話社,2016年)

中田英樹(なかた ひでき)[第2章]
1971年生まれ。社会理論・動態研究所所員
主要論文・著書:『トウモロコシの先住民とコーヒーの国民―人類学が書けなかった「未開」社会』(有志舎,2013年),シルベル・エリアス,中田英樹(共編)2010年,『先住民農民の親密な社会と資本主義国家統合』(Serviprensa,グァテマラ・シティ,スペイン語),「戦後近代民主化における『三界に家なし』農婦の『土着』する主体―岩手県北の女性を綴った一条ふみの『その地に留まるということ』」,(『PRIME』第37号,2014年,明治学院大学国際平和研究所発行)

川端浩平(かわばた こうへい)[第3章]
1974年生まれ,福島大学行政政策学類准教授
主要論文・著書:『ジモトを歩く―身近な世界のエスノグラフィ』(御茶の水書房,2013年),「「当事者」は差別や排除を語るのか?―<ジモト>の在日コリアンとともに感じたこと」(好井裕明編『排除と差別の社会学』,有斐閣,2016年),「身近な世界のエスノグラフィ」(鳥越晧之・金子勇編,『現場から創る社会学理論』,ミネルヴァ書房,2016年)

越智正樹(おち まさき)[第4章]
1975年生まれ,琉球大学観光産業科学部准教授
主要論文・著書:「被占領期西表島における日米共同開発計画の顛末―沖縄周縁部開発施策の実態と地域の経験」(『島嶼研究』11,2011年),「西表島戦後開拓集落の地域形成―出身母村との親密関係」(谷富夫・安藤由美・野入直美編著『持続と変容の沖縄社会―沖縄的なるものの現在』,ミネルヴァ書房,2014年),「観光と公共性の社会学―観光社会学の現代的再定位」(『観光科学』7,2015年),「農の観光的現象と農的自然」(『西日本社会学会年報』13,2015年)

柴田 悠(しばた はるか)[第5章]
1978年生まれ,京都大学大学院人間・環境学研究科准教授
主要論文・著書:『子育て支援が日本を救う―政策効果の統計分析』(勁草書房,2016年),共著「生活目標のコーホート分析」(『ソシオロジ』59(1),2014年),「自殺率に対する積極的労働市場政策の効果」(『社会学評論』65(1),2014年),共編著『ポスト工業社会における東アジアの課題』(ミネルヴァ書房,2016年),共著「いかなる時代・世代において日本人の生活目標は変化したのか?」(太郎丸博編『後期近代と価値意識の変容』東京大学出版会,2016年)

中山大将(なかやま たいしょう)[第6章]
1980年生まれ,京都大学地域研究統合情報センター助教
主要著書・論文:『亜寒帯植民地樺太の移民社会形成―周縁的ナショナル・アイデンティティと植民地イデオロギー』(京都大学学術出版会,2014年),「サハリン残留日本人―樺太・サハリンからみる東アジアの国民帝国と国民国家そして家族」蘭信三編著『帝国以後の人の移動―ポストコロニアルとグローバリズムの交錯点』(勉誠出版,2013年),“Japanese Society on Karafuto,” (Svetlana Paichadze and Philip A. Seaton eds, Voices from the Shifting Russo-Japanese Border: Karafuto / Sakhalin, Oxon: Routledge, 2015)

平田知久(ひらた ともひさ)[第7章]
1979年生まれ,群馬大学社会情報学部講師
主要論文・著書:「アジアを移動する人々とネットカフェの風景」(佐藤卓己編『デジタル情報社会の未来(岩波講座 現代 第9巻)』岩波書店,2016年),“The Double Digital Divide and Social Inequality in Asia: Comparative Research on Internet Cafes in Taiwan, Singapore, Thailand, and the Philippines,”(The Digital Divide: Social Inequality and the Internet in International Perspective, Oxon: Routledge, 2013)

渡邊拓也(わたなべ たくや)[編者,第8章,終章]
1974年生まれ,大谷大学文学部講師
主要論文・著書:「医療化の周辺:ADHDの出現とその功罪」(『京都社会学年報』12,2004年),「医薬品からドラッグへ:一九世紀フランスにおける阿片」(『ソシオロジ』56 (1),2011年),共訳書『教えてデュベ先生,社会学はいったい何の役に立つのですか?』(フランソワ・デュベ著,山下雅之・濱西栄司との共訳,新泉社,2014年),訳書『教えてルモアンヌ先生,精神科医はいったい何の役に立つのですか?』(パトリック・ルモアンヌ著,新泉社,2016年)

芦田裕介(あしだ ゆうすけ)[第9章]
1984年生まれ,宮崎大学地域資源創成学部講師
主要論文・著書:『農業機械の社会学―モノから考える農村社会の再編』(昭和堂,2016年),「なぜ男性が農業機械を使うのか―家族農業労働の編成におけるテクノロジーとジェンダーに関する考察」(『ソシオロジ』59(2),2014年)

山本達也(やまもと たつや)[第10章]
1979年生まれ,静岡大学人文社会科学部准教授
主要論文・著書:『舞台の上の難民―チベット難民芸能集団の民族誌』(法蔵館,2013年),「かたちを変えていく歌詞―チベット難民社会におけるチベタン・ポップの作詞実践を事例に」(『国立民族学博物館研究報告』40(2),2015年),“Selling Healing: A Case Study of Tibetan Chanting CD Production in Kathmandu,”(Tibetan and Himalayan Healing: An Anthology for Anthony Arias, Kathmandu, Vajira books, 2015)