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【推薦】長有紀枝氏(立教大学社会学部教授・認定NPO法人難民を助ける会理事長)
アフリカの,特に紛争地に関わったことがある人なら誰でも抱くであろう相反する二つの感情がある。深い絶望と希望と。アフリカ研究の第一線に関わってきた執筆陣による本書には,その絶望を絶望に終わらせず,希望を単なるスローガンにしないための処方箋が詰まっている。抑止と対応と紛争後という3段階における知恵——アフリカの人々が培ってきた「潜在力」を知る必読の書である。
アフリカの,特に紛争地に関わったことがある人なら誰でも抱くであろう相反する二つの感情がある。深い絶望と希望と。アフリカ研究の第一線に関わってきた執筆陣による本書には,その絶望を絶望に終わらせず,希望を単なるスローガンにしないための処方箋が詰まっている。抑止と対応と紛争後という3段階における知恵——アフリカの人々が培ってきた「潜在力」を知る必読の書である。
植民地主義の負の遺産と新自由主義的近代化がもたらした凄惨な混乱から脱しつつあるアフリカ諸国。国家と法による断罪・懲罰(応報的正義)とは異なる,被害者の要求(真相の開示,経験の語り,謝罪賠償等)に注意を払い,犯罪によって歪められた人々の関係を正す「修復的正義」を本質とした,アフリカの「移行期正義」の内実に迫る。
『アフリカレポート』No.54(2016)、評者:津田みわ氏
『アジア・アフリカ地域研究』2017 No.17-1、120-124頁、評者:牧野久美子氏
『アジア・アフリカ地域研究』2017 No.17-1、120-124頁、評者:牧野久美子氏
阿部利洋(あべ としひろ)
大谷大学文学部・准教授
京都大学大学院文学部研究科博士課程修了,博士(文学)。
主な著作に,『紛争後社会と向き合う―南アフリカ真実和解委員会』(京都大学学術出版会),『真実委員会という選択―紛争後社会の再生のために』(岩波書店)など
榎本珠良(えのもと たまら)
明治大学研究・知財戦略機構・共同研究員(国際武器移転史研究所)
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了,博士(国際貢献)。
主な著作に「武器移転規制と秩序構想―武器貿易条約(ATT)の実施における課題から」『国際武器移転史』第1号,Governing the vulnerable self at home and abroad: Peace and justice in northern Uganda and “KONY 2012”. African Study Monographs, Suppl. 50など。
遠藤貢(えんどう みつぎ)
東京大学大学院総合文化研究科・教授
東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了,英国ヨーク大学大学院南部アフリカ研究センター博士課程修了,DPhil。
主な著作に,『崩壊国家と国際安全保障―ソマリアにみる新たな国家像の誕生』(有斐閣),『地域から見た国際政治』(有斐閣,共編著)など。
岡野英之(おかの ひでゆき)
立命館大学衣笠総合研究機構・専門研究員
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了,博士(人間科学)。
主な著作に『アフリカの内戦と武装勢力―シエラレオネにみる人脈ネットワークの生成と変容』(昭和堂)など。
栗本英世(くりもと えいせい)
大阪大学大学院人間科学研究科・教授
京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学,文学修士。
主な著書に,『未開の戦争,現代の戦争』(岩波書店),『植民地経験』(共編著,人文書院),Conflict, Age and Power in North East Africa (共編著,James Currey),『共生学が創る世界』(大阪大学出版会,共編著)など。
クロス京子(くろす きょうこ)
立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構・専門研究員
神戸大学大学院法学研究科博士課程後期課程修了,博士(政治学)。
主な著作に,『移行期正義と和解―規範の多系的伝播・受容過程』(有信堂),『安全保障論―平和で公正な国際社会の構築に向けて』(信山社,共著),「規範的多元性と移行期正義―ローカルな『和解』規範・制度のトランスナショナルな伝播メカニズム」『国際政治』(第171号)など。
佐川徹(さがわ とおる)
慶應義塾大学文学部・助教
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。
主な著作に,『暴力と歓待の民族誌―東アフリカ牧畜社会の戦争と平和』(昭和堂)など。
佐々木和之(ささき かずゆき)
Protestant Institute of Arts and Social Sciences(PIASS)平和紛争研究学科・上級講師
ブラッドフォード大学平和学博士課程修了,Ph.D(平和研究)。
主な著作に,Public Reforms in Rwanda, PIASS Publication Series No.1(PIASS,共著), Reconciliation Processes in Rwanda, PIASS Publication Series No.2(共著,PIASS)など。
佐藤章(さとう あきら)
日本貿易振興機構アジア経済研究所・主任研究員
一橋大学大学院社会学研究科修了,博士(社会学)。
主な著作に,『ココア共和国の近代―コートジボワールの結社史と統合的革命』(アジア経済研究所),『和解過程下の国家と政治―アフリカ・中東の事例から』(アジア経済研究所),『統治者と国家―アフリカの個人支配再考』(アジア経済研究所,編著)など。
島田周平(しまだ しゅうへい)
東京外国語大学大学院総合国際学研究院・特任教授
東北大学理学部卒業,博士(理学)。
主な著作に,『地域間対立の地域構造―ナイジェリアの地域問題』(大明堂),『アフリカ 可能性を生きる農民』(京都大学学術出版会),『現代アフリカ農村―変化を読む地域研究の試み』(古今書院)など。
武内進一(たけうち しんいち)
日本貿易振興機構アジア経済研究所・地域研究センター・センター長
東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学,博士(学術)。
主な著作に,『現代アフリカの紛争と国家―ポストコロニアル家産制国家とルワンダ・ジェノサイド』(明石書店),Confronting Land and Property Problems for Peace(Routledge,編著)などがある。
津田みわ(つだ みわ)
日本貿易振興機構アジア経済研究所・地域研究センター・主任研究員
慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻修士課程修了(法学修士)。
主な著作に,『和解過程下の国家と政治』(共著,アジア経済研究所),『ケニアを知るための55章』(明石書店,共編著),『二〇世紀〈アフリカ〉の個体形成』(平凡社,共著)など。
大谷大学文学部・准教授
京都大学大学院文学部研究科博士課程修了,博士(文学)。
主な著作に,『紛争後社会と向き合う―南アフリカ真実和解委員会』(京都大学学術出版会),『真実委員会という選択―紛争後社会の再生のために』(岩波書店)など
榎本珠良(えのもと たまら)
明治大学研究・知財戦略機構・共同研究員(国際武器移転史研究所)
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了,博士(国際貢献)。
主な著作に「武器移転規制と秩序構想―武器貿易条約(ATT)の実施における課題から」『国際武器移転史』第1号,Governing the vulnerable self at home and abroad: Peace and justice in northern Uganda and “KONY 2012”. African Study Monographs, Suppl. 50など。
遠藤貢(えんどう みつぎ)
東京大学大学院総合文化研究科・教授
東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了,英国ヨーク大学大学院南部アフリカ研究センター博士課程修了,DPhil。
主な著作に,『崩壊国家と国際安全保障―ソマリアにみる新たな国家像の誕生』(有斐閣),『地域から見た国際政治』(有斐閣,共編著)など。
岡野英之(おかの ひでゆき)
立命館大学衣笠総合研究機構・専門研究員
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了,博士(人間科学)。
主な著作に『アフリカの内戦と武装勢力―シエラレオネにみる人脈ネットワークの生成と変容』(昭和堂)など。
栗本英世(くりもと えいせい)
大阪大学大学院人間科学研究科・教授
京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学,文学修士。
主な著書に,『未開の戦争,現代の戦争』(岩波書店),『植民地経験』(共編著,人文書院),Conflict, Age and Power in North East Africa (共編著,James Currey),『共生学が創る世界』(大阪大学出版会,共編著)など。
クロス京子(くろす きょうこ)
立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構・専門研究員
神戸大学大学院法学研究科博士課程後期課程修了,博士(政治学)。
主な著作に,『移行期正義と和解―規範の多系的伝播・受容過程』(有信堂),『安全保障論―平和で公正な国際社会の構築に向けて』(信山社,共著),「規範的多元性と移行期正義―ローカルな『和解』規範・制度のトランスナショナルな伝播メカニズム」『国際政治』(第171号)など。
佐川徹(さがわ とおる)
慶應義塾大学文学部・助教
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。
主な著作に,『暴力と歓待の民族誌―東アフリカ牧畜社会の戦争と平和』(昭和堂)など。
佐々木和之(ささき かずゆき)
Protestant Institute of Arts and Social Sciences(PIASS)平和紛争研究学科・上級講師
ブラッドフォード大学平和学博士課程修了,Ph.D(平和研究)。
主な著作に,Public Reforms in Rwanda, PIASS Publication Series No.1(PIASS,共著), Reconciliation Processes in Rwanda, PIASS Publication Series No.2(共著,PIASS)など。
佐藤章(さとう あきら)
日本貿易振興機構アジア経済研究所・主任研究員
一橋大学大学院社会学研究科修了,博士(社会学)。
主な著作に,『ココア共和国の近代―コートジボワールの結社史と統合的革命』(アジア経済研究所),『和解過程下の国家と政治―アフリカ・中東の事例から』(アジア経済研究所),『統治者と国家―アフリカの個人支配再考』(アジア経済研究所,編著)など。
島田周平(しまだ しゅうへい)
東京外国語大学大学院総合国際学研究院・特任教授
東北大学理学部卒業,博士(理学)。
主な著作に,『地域間対立の地域構造―ナイジェリアの地域問題』(大明堂),『アフリカ 可能性を生きる農民』(京都大学学術出版会),『現代アフリカ農村―変化を読む地域研究の試み』(古今書院)など。
武内進一(たけうち しんいち)
日本貿易振興機構アジア経済研究所・地域研究センター・センター長
東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学,博士(学術)。
主な著作に,『現代アフリカの紛争と国家―ポストコロニアル家産制国家とルワンダ・ジェノサイド』(明石書店),Confronting Land and Property Problems for Peace(Routledge,編著)などがある。
津田みわ(つだ みわ)
日本貿易振興機構アジア経済研究所・地域研究センター・主任研究員
慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻修士課程修了(法学修士)。
主な著作に,『和解過程下の国家と政治』(共著,アジア経済研究所),『ケニアを知るための55章』(明石書店,共編著),『二〇世紀〈アフリカ〉の個体形成』(平凡社,共著)など。
序章 紛争を抑止し和解を進める知恵を探る [遠藤 貢]
1 マクロレベルで「アフリカ潜在力」を考える―本巻の位置づけ
2 アフリカにおける武力紛争と紛争対応―その変容と傾向
3 「国家建設」に代わるアプローチ
(一)「国家建設」とその課題/(二)「国家収斂」説批判
(三)ハイブリッド・ガバナンスの可能性と隘路
4 国際社会とのインターフェイス―移行期正義(transitional justice)の諸相
(一)移行期正義の制度とその課題 14/(二)アフリカ潜在力からみた行動様式 16
第1部 アフリカにおける国家と紛争
第1章 冷戦後アフリカの紛争と紛争後―その概観 [武内進一]
1 紛争と紛争後を一国レベルで捉える
2 紛争経験国
3 紛争後の和解、共生政策の概観
4 紛争後の和解、共生の評価
5 政治体制の三類型
6 和解・共生に向けた課題
第2章 クラン小国家的主体形成の可能性と課題―北部ソマリアにおける国家と社会の交錯 [遠藤 貢]
1 北部ソマリアにおける「下からの」秩序構築の実践
2 ソマリランドにおけるハイブリッド・ガバナンスの形成と展開
(一)ボラマ会議(一九九三年一月~三月)/(二)新憲法制定への道程/(三)民主化との齟齬
3 「境界領域」問題とハイブリッドな政治秩序の隘路
(一)ドゥルバハンテの伝統的権威の変容、内部対立、SSC設立/(二)カトゥモの設立
(三)「境界領域」への選挙の影響と新たな展開
4 クラン小国家的な行政主体の創設―可能性と課題
第3章 紛争解決と和解への潜在力の諸相 [栗本英世]
1 紛争下で〈顕在した〉生きる力と潜在力
(一)新たな秩序形成の過程としての「崩壊国家」
(二)無政府状態のもとで興隆した商業活動―ソマリア
(三)無政府状態下を生き延びた一万人の人びと―南部スーダン
2 崩壊国家における法と秩序の維持
3 「道徳共同体」における伝統的方法による調停の可能性と不可能性
4 「上からの平和」と「下からの平和」―グローバル化の時代における紛争解決と和解の主体
5 「道徳共同体」を拡げつなぐこと―紛争解決と和解への潜在力
コラム1 アフリカの「青年層」―潜在力か、それとも紛争の社会的な要因か? [岡野英之]
第2部 ローカルな紛争対応の可能性
第4章 フロンティアの潜在力―エチオピアにおける土地収奪へのローカルレンジの対応 [佐川 徹]
1 現代アフリカにおけるフロンティアの動態
2 国家の再辺境から開発の最前線へ
3 エチオピアにおける土地取引と農場開発
4 農場開発に直面した人たちの「沈黙」
5 フロンティアへの移動
(一)「牧畜中心主義」の活性化/(二)漁撈への参入
6 社会関係の修復可能性を担保する移動/接触回避
第5章 制度と統治者の相克―コートジボワール内戦にみる紛争へのナショナルレベルの対応 [佐藤 章]
1 和平プロセスにおける政府への期待と現実
2 反乱軍が提起したもの
3 和平という名の敗北
4 大統領の抵抗
5 国民和解政府の苦難の道のり
(一)ジャラ首相期(二〇〇三年三月~二〇〇五年一二月)
(二)バニ首相期(二〇〇五年一二月~二〇〇七年四月)
(三)ソロ首相期(二〇〇七年四月~二〇一〇年一二月)
6 政権に固執する国家元首
7 絶対的な処方箋でない〈政治の制度化〉―安定化への展望
第6章 紛争に対する国内的要因の重要性―ナイジェリアの二つの紛争から考える [島田周平]
1 ナイジェリアの二つの紛争
2 紛争を引き起こす初期条件としての軍事政権(一九八四年~一九九八年)
(一)人気取り政策/(二)民主化の動きを阻止する強権政治/(三)紛争に対する強権的対応
3 二つの紛争が過激化する過程
(一)二〇〇〇年以降のニジェールデルタの紛争の過激化
(二)北部ナイジェリアにおけるボコハラム運動
4 二つの紛争の異なる展開―収束と拡大
(一)ニジェール紛争の収束/(二)ボコハラム運動の拡大
5 国際化するボコハラム
(一)内部からの国際化プロセス/(二)外側からの国際化プロセス
(三)国際的テロリスト集団の認定と過激化
6 二〇一五年の大統領選挙に与えた紛争の影
7 紛争の地域性理解の重要性
コラム2 リベリアの紛争解決における女性の潜在力 [クロス京子]
第3部 移行期正義の諸相―ローカルレベルから国際関係の次元
第7章 創造的な逸脱の許容―南アフリカ真実和解委員会と移行期正義 [阿部利洋]
1 南アフリカの移行期正義―真実和解委員会
2 南アフリカTRCは国家・社会規模で行う紛争解決モデルとして評価されている
3 TRCはアフリカの文化・社会に内在する紛争解決法の表れとはいえない
(一)南アフリカ国内の意識調査結果/(二)報告書公開式典におけるマンデラ元大統領のスピーチ
(三)ポストTRCの社会統合をめぐる問題/(四)TRC設立のルーツは南アフリカの文化的伝統か?
4 TRC後の和解論―TRCの独自性は理論的にどのように把握されてきたか
(一)和解の結合モデルと触媒アプローチ/(二)結合モデルと触媒アプローチの問題点
5 あるタイプの逸脱ないし派生的効果を許容する制度
6 紛争から生じた肯定的なパラドクス
第8章 「家族の会話」(Fambul Tok)プロジェクト
―シエラレオネにおける新しい移行期正義 [クロス京子]
1 紛争後のシエラレオネ―リベラル国家建設の実験場
2 和平合意後の政治的混乱と特別法廷の設立
3 真実和解委員会による和解―公式制度におけるグローバルとローカルの混合
(一)真実和解委員会によるローカルレベルの和解の模索
(二)真実和解委員会によるローカルな和解の制度化
(三)グローバルとローカルの競合―真実和解委員会による和解追求の限界
4 現地「潜在力」の活用―ファンブル・トックの試み
(一)真実和解委員会の教訓を踏まえたファンブル・トック/(二)「家族の会話」の開始
(三)非公式なローカルとグローバルの混合移行期正義
5 グローバルとローカルの二項対立を超えて
第9章 <和解をもたらす正義>ガチャチャの実験―ルワンダのジェノサイドと移行期正義 [佐々木和之]
1 ルワンダ大虐殺後の移行期正義
2 ガチャチャの歴史的及び政治的文脈
(一)ルワンダ紛争の複雑性/(二)大虐殺の被害者と加害者/(三)内戦終結後の政治状況
3 ガチャチャの概要―修復的特徴に焦点を当てて
(一)ガチャチャの概要/(二)ガチャチャの修復的特徴
4 十分に生かされなかった修復的特徴
(一)消極的な住民参加/(二)疑問視される自白と謝罪の真実性
(三)公益労働刑と「再統合と和解」の乖離/(四)失望を招いた賠償・補償プログラム
5 ガチャチャは和解をもたらしたのか
(一)ガチャチャの修復作用と分断作用/(二)修復的潜在力を発揮できなかったガチャチャ
第10章 〈ICCでの裁き〉という選択―ケニアにおける選挙後暴力と移行期正義 [津田みわ]
1 PEVと国内の特別法廷設置案
2 政党内部の意見対立
3 国内特別法廷方式の否決
4 現地化オプションと不処罰への危惧
5 ICCによる裁きの開始とその課題―むすびにかえて
コラム3 北部ウガンダにおける「伝統」をめぐって [榎本珠良]
終章 「アフリカの潜在力」という視角 [武内進一]
1 政治・国際関係ユニットから見た「アフリカの潜在力」
2 国家建設をめぐる「潜在力」
3 紛争解決に関する「潜在力」
4 和解と共生をめぐる「潜在力」
5 「アフリカの潜在力」という概念の効用
索引
1 マクロレベルで「アフリカ潜在力」を考える―本巻の位置づけ
2 アフリカにおける武力紛争と紛争対応―その変容と傾向
3 「国家建設」に代わるアプローチ
(一)「国家建設」とその課題/(二)「国家収斂」説批判
(三)ハイブリッド・ガバナンスの可能性と隘路
4 国際社会とのインターフェイス―移行期正義(transitional justice)の諸相
(一)移行期正義の制度とその課題 14/(二)アフリカ潜在力からみた行動様式 16
第1部 アフリカにおける国家と紛争
第1章 冷戦後アフリカの紛争と紛争後―その概観 [武内進一]
1 紛争と紛争後を一国レベルで捉える
2 紛争経験国
3 紛争後の和解、共生政策の概観
4 紛争後の和解、共生の評価
5 政治体制の三類型
6 和解・共生に向けた課題
第2章 クラン小国家的主体形成の可能性と課題―北部ソマリアにおける国家と社会の交錯 [遠藤 貢]
1 北部ソマリアにおける「下からの」秩序構築の実践
2 ソマリランドにおけるハイブリッド・ガバナンスの形成と展開
(一)ボラマ会議(一九九三年一月~三月)/(二)新憲法制定への道程/(三)民主化との齟齬
3 「境界領域」問題とハイブリッドな政治秩序の隘路
(一)ドゥルバハンテの伝統的権威の変容、内部対立、SSC設立/(二)カトゥモの設立
(三)「境界領域」への選挙の影響と新たな展開
4 クラン小国家的な行政主体の創設―可能性と課題
第3章 紛争解決と和解への潜在力の諸相 [栗本英世]
1 紛争下で〈顕在した〉生きる力と潜在力
(一)新たな秩序形成の過程としての「崩壊国家」
(二)無政府状態のもとで興隆した商業活動―ソマリア
(三)無政府状態下を生き延びた一万人の人びと―南部スーダン
2 崩壊国家における法と秩序の維持
3 「道徳共同体」における伝統的方法による調停の可能性と不可能性
4 「上からの平和」と「下からの平和」―グローバル化の時代における紛争解決と和解の主体
5 「道徳共同体」を拡げつなぐこと―紛争解決と和解への潜在力
コラム1 アフリカの「青年層」―潜在力か、それとも紛争の社会的な要因か? [岡野英之]
第2部 ローカルな紛争対応の可能性
第4章 フロンティアの潜在力―エチオピアにおける土地収奪へのローカルレンジの対応 [佐川 徹]
1 現代アフリカにおけるフロンティアの動態
2 国家の再辺境から開発の最前線へ
3 エチオピアにおける土地取引と農場開発
4 農場開発に直面した人たちの「沈黙」
5 フロンティアへの移動
(一)「牧畜中心主義」の活性化/(二)漁撈への参入
6 社会関係の修復可能性を担保する移動/接触回避
第5章 制度と統治者の相克―コートジボワール内戦にみる紛争へのナショナルレベルの対応 [佐藤 章]
1 和平プロセスにおける政府への期待と現実
2 反乱軍が提起したもの
3 和平という名の敗北
4 大統領の抵抗
5 国民和解政府の苦難の道のり
(一)ジャラ首相期(二〇〇三年三月~二〇〇五年一二月)
(二)バニ首相期(二〇〇五年一二月~二〇〇七年四月)
(三)ソロ首相期(二〇〇七年四月~二〇一〇年一二月)
6 政権に固執する国家元首
7 絶対的な処方箋でない〈政治の制度化〉―安定化への展望
第6章 紛争に対する国内的要因の重要性―ナイジェリアの二つの紛争から考える [島田周平]
1 ナイジェリアの二つの紛争
2 紛争を引き起こす初期条件としての軍事政権(一九八四年~一九九八年)
(一)人気取り政策/(二)民主化の動きを阻止する強権政治/(三)紛争に対する強権的対応
3 二つの紛争が過激化する過程
(一)二〇〇〇年以降のニジェールデルタの紛争の過激化
(二)北部ナイジェリアにおけるボコハラム運動
4 二つの紛争の異なる展開―収束と拡大
(一)ニジェール紛争の収束/(二)ボコハラム運動の拡大
5 国際化するボコハラム
(一)内部からの国際化プロセス/(二)外側からの国際化プロセス
(三)国際的テロリスト集団の認定と過激化
6 二〇一五年の大統領選挙に与えた紛争の影
7 紛争の地域性理解の重要性
コラム2 リベリアの紛争解決における女性の潜在力 [クロス京子]
第3部 移行期正義の諸相―ローカルレベルから国際関係の次元
第7章 創造的な逸脱の許容―南アフリカ真実和解委員会と移行期正義 [阿部利洋]
1 南アフリカの移行期正義―真実和解委員会
2 南アフリカTRCは国家・社会規模で行う紛争解決モデルとして評価されている
3 TRCはアフリカの文化・社会に内在する紛争解決法の表れとはいえない
(一)南アフリカ国内の意識調査結果/(二)報告書公開式典におけるマンデラ元大統領のスピーチ
(三)ポストTRCの社会統合をめぐる問題/(四)TRC設立のルーツは南アフリカの文化的伝統か?
4 TRC後の和解論―TRCの独自性は理論的にどのように把握されてきたか
(一)和解の結合モデルと触媒アプローチ/(二)結合モデルと触媒アプローチの問題点
5 あるタイプの逸脱ないし派生的効果を許容する制度
6 紛争から生じた肯定的なパラドクス
第8章 「家族の会話」(Fambul Tok)プロジェクト
―シエラレオネにおける新しい移行期正義 [クロス京子]
1 紛争後のシエラレオネ―リベラル国家建設の実験場
2 和平合意後の政治的混乱と特別法廷の設立
3 真実和解委員会による和解―公式制度におけるグローバルとローカルの混合
(一)真実和解委員会によるローカルレベルの和解の模索
(二)真実和解委員会によるローカルな和解の制度化
(三)グローバルとローカルの競合―真実和解委員会による和解追求の限界
4 現地「潜在力」の活用―ファンブル・トックの試み
(一)真実和解委員会の教訓を踏まえたファンブル・トック/(二)「家族の会話」の開始
(三)非公式なローカルとグローバルの混合移行期正義
5 グローバルとローカルの二項対立を超えて
第9章 <和解をもたらす正義>ガチャチャの実験―ルワンダのジェノサイドと移行期正義 [佐々木和之]
1 ルワンダ大虐殺後の移行期正義
2 ガチャチャの歴史的及び政治的文脈
(一)ルワンダ紛争の複雑性/(二)大虐殺の被害者と加害者/(三)内戦終結後の政治状況
3 ガチャチャの概要―修復的特徴に焦点を当てて
(一)ガチャチャの概要/(二)ガチャチャの修復的特徴
4 十分に生かされなかった修復的特徴
(一)消極的な住民参加/(二)疑問視される自白と謝罪の真実性
(三)公益労働刑と「再統合と和解」の乖離/(四)失望を招いた賠償・補償プログラム
5 ガチャチャは和解をもたらしたのか
(一)ガチャチャの修復作用と分断作用/(二)修復的潜在力を発揮できなかったガチャチャ
第10章 〈ICCでの裁き〉という選択―ケニアにおける選挙後暴力と移行期正義 [津田みわ]
1 PEVと国内の特別法廷設置案
2 政党内部の意見対立
3 国内特別法廷方式の否決
4 現地化オプションと不処罰への危惧
5 ICCによる裁きの開始とその課題―むすびにかえて
コラム3 北部ウガンダにおける「伝統」をめぐって [榎本珠良]
終章 「アフリカの潜在力」という視角 [武内進一]
1 政治・国際関係ユニットから見た「アフリカの潜在力」
2 国家建設をめぐる「潜在力」
3 紛争解決に関する「潜在力」
4 和解と共生をめぐる「潜在力」
5 「アフリカの潜在力」という概念の効用
索引