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プリミエ・コレクション 75

民族境界の歴史生態学

カメルーンに生きる農耕民と狩猟採集民

大石 高典

A5上製・280頁

ISBN: 9784814000227

発行年月: 2016/03

  • 本体: 3,700円(税込 4,070円
  • 在庫あり
 
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内容

ミニ・アフリカ,カメルーンの熱帯雨林は,市場経済化,開発と自然保護,先住民運動などの急速な変化に揺れている.変わりゆく暮らしのなかで,農耕民と狩猟採集民の境界はいかに維持されているのか.伝統と変容が交錯するなかでの民族間の境界の駆け引きを,歴史的な視点から描き出し,自然/生業/社会の相互作用に迫る.

受賞

2022年度 大同生命地域研究奨励賞(本書の内容を含む業績に対して)

書評

月刊『地理』2017年2月号、112頁、評者:佐藤廉也氏
『境界研究』NO.7(2017)、91-96頁、評者:近藤祉秋氏
『年報人類学研究』第7号 2017年、114-117頁、評者:辻貴志氏
『社会人類学年報』43号、177-180頁、評者:二文字屋脩氏
『コンタクト・ゾーン』9号、416-418頁、評者:高倉浩樹氏
『FIELD PLUS(フィールドプラス)』19号、評者:服部志帆氏
『アフリカ研究』92号、166-169頁、評者:澤田昌人氏
『文化人類学』第85巻第2号、評者:園田浩司氏

プロフィール

大石 高典(おおいし たかのり)
1978年 静岡県生まれ.東京外国語大学・特任講師.
京都大学農学部,大学院理学研究科,こころの未来研究センター特定研究員,総合地球環境学研究所プロジェクト研究員等を経て,現職.
京都大学地域研究博士.専門は生態人類学,アフリカ地域研究.

主な著書に,『森棲みの社会誌―アフリカ熱帯林の人・自然・歴史Ⅱ』(共著,京都大学学術出版会)や『人と動物の人類学』(共著,春風社)などがある.

目次

口  絵
図表一覧

序章 揺れる境界――自然 /生業 /社会のねじれ―
I.分離的共存――かさなり合う境界を生きる
II.本書の方法
  1.農耕民側からの研究
  2.歴史的視点
  3.外部世界とのかかわり
III.本書の構成
第1章 ドンゴ村へ
I.バカ・ピグミー /バクウェレ /「ハウサ」
  1.バカ・ピグミー
  2.バクウェレ
  3.バカ・ピグミーとバクウェレの関係
  4.商業民
II.カメルーン共和国東部州ムルンドゥ郡ドンゴ村
1.三つの民の共在地
2.ドンゴ村における20年の生態人類学研究史――1994~2015
第2章 「原生林」のなかの近代―廃村の歴史生態学―
I.外部世界との関わりはバカ・ピグミーとバクウェレの関係にどう影響したか
II.森の歴史を読む二つのアプローチ
III.森に刻まれた近代史
  1.フランス委任統治期における地域住民と外部世界との関わり
  2.バクウェレ,バカ・ピグミー両居住集団の動態
  3.地名がつなぐ記憶
  4.森林景観に刻まれた居住史
  5.つきあわせる――現地調査と文献調査の整合性
IV.熱帯雨林景観のなかの世界システム―― 象牙,野生ゴム,そしてカカオ栽培
第3章 森の「バカンス」―二つの社会的モード―
I.対照的な農耕民の姿
  1.定住集落と漁撈キャンプ――二つの社会的なモード
  2.バクウェレ社会における漁撈キャンプとバカンス
  3.レフュジアとしての生業空間の広がり
column 漁撈キャンプの朝
II.バクウェレによる漁撈実践
  1.バクウェレの生業活動における漁撈活動の位置
  2.タンパク源としての魚
  3.熱帯雨林水系の特徴と漁撈技術
  4.移動しながらの漁撈生活
  5.燻製加工された魚のゆくえ
III.漁撈キャンプにおける社会関係の諸相――逸話からのアプローチ
  1.村から森へと向かう心理
  2.森での食物探し
  3.森の恵みに対する態度
  4.社会的モードのずれ
IV.森住み感覚と「バカンス」
  1.森を楽しむ
  2.バクウェレの森住み感覚―アンビバレントな自己表象
第4章 「ゴリラ人間」と「人間ゴリラ」―人間=動物関係と民族間関係の交錯と混淆―
I.熱帯雨林の住民とゴリラ
II.ゴリラの民族誌
  1.ゴリラの民族動物学
  2.人間とゴリラの近接
  3.ゴリラ狩猟の民族誌
III.「ゴリラ人間」と「人間ゴリラ」の民族誌
  1.「ゴリラ人間」としての農耕民
  2.動物になって畑を荒らす狩猟採集民
  3.「人間ゴリラ」の民族誌
  4.人間とゴリラの入れ代わりと混淆
IV.人と動物の混淆
第5章 バカ・ピグミーによる換金作物栽培と民族間関係
I.市場経済のなかでの平等主義規範
II.カメルーン東南部におけるカカオ栽培
  1.カメルーン東南部におけるカカオ栽培の歴史的背景
  2.アフリカ熱帯雨林地域におけるカカオ栽培の特徴
III.カカオ畑を測る
  1.カカオ畑の野外観察と計測調査
  2.カカオ栽培に関する聞き取り調査
IV.カカオ畑のデモグラフィー
  1.カカオ栽培の消長
  2.現金収入の獲得と消費
  3.バカ・ピグミーの賃金労働
V.市場経済への適応
  1.遅延型利得経済への適応
  2.経済的な報酬の認知とその即時消費
  3.変化する価値観と,近隣農耕民との民族間関係
第6章 嗜好品が語る社会変化―精霊儀礼からディスコへ―
I.狩猟採集民と嗜好品
II.カメルーン東南部における嗜好品――たばこと酒を中心に
  1.たばこの種類と嗜好
  2.酒の種類と嗜好
Ⅲ.日常生活の一部としての喫煙と飲酒
  1.バカ・ピグミーの日常生活における喫煙と飲酒
  2.酒と労働をめぐるバクウェレとバカ・ピグミーの駆け引き
  3.飲酒の社会的文脈の変化――精霊儀礼とバー
IV.精霊の踊りからディスコへ――日常的な嗜好品利用の変化
  1.狩猟採集民=農耕民関係における嗜好品
  2.嗜好品がつなぐ地域経済と市場経済
  3.たばこと酒の両義性
第7章 周縁化されるバカ・ピグミー―森のなかのミクロな土地収奪―
I.アフリカにおける土地紛争――近年の質的変化
II.カカオ畑の貸借と売買
  1.前払い契約(ヤナ)
  2.カカオ畑の貸借契約(ロカシオン)と売却
  3.カカオ畑の賃貸・売却理由
III.社会的な不平等と対立
IV.カカオ畑と土地の権利をめぐる論争
V.土地契約をめぐる地域住民間の駆け引き
VI.地方政府による土地問題への介入
VII.土地収奪によるバカ・ピグミーの周縁化
終章 開かれた境界―自然/生業/社会の広がり―
I.分離的共存の諸相
  1.両側から社会関係をみる
  2.関係の歴史的展開をみる
  3.より広いシステムのなかで関係をみる――二者関係から三者関係へ
  4.結論
II.今後の展望―分離的共存のこれから

あとがき
初出一覧
引用文献
索  引

Essai
1 熱帯雨林調査とハーバリウム
2 熱帯雨林とゴジラ―カメルーンでむかえた 3・11
3 イモワーズとエバ―バクウェレ社会における結婚事情
4 フィールドでよむ歳時記
5 病がもたらす想像力
6 ムスリム商業民との甘苦い茶の時間
7 トウガラシをきかせる
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