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知のバリアフリー

「障害」で学びを拡げる

嶺重 慎・広瀬浩二郎 編/京都大学障害学生支援ルーム 協力

A5並製・286頁

ISBN: 9784876985425

発行年月: 2014/12

  • 本体: 2,400円(税込 2,640円
  • 在庫あり
 
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内容

ようやく制度として大学に根付きつつある障害者支援。その最前線を担う当事者の報告と問題提起から見えてくるのは,「健常者」基準で成り立つ学問そのものの限界だった。「障害」を切り口にして初めて見えてくる新たな知が,人間の可能性を大きく拡張する。大学での障害を通じた学びの過去・現在から未来を見据え,新たな知のあり方を発信する。

書評

『産経新聞』2014.12.25朝刊 京都面
『全私学新聞』2015.1.13
『毎日新聞』2015.1.18朝刊 京都面
NHKハートネットTVブログ--「知のバリアフリー」で学びを拡げる!
『点字毎日 活字版』2015.1.29「図書室」
『朝日新聞』大阪本社版 2015.2.3 夕刊「文化面」
『ノーマライゼーション』2015年2月号、63頁、評者:杉野昭博氏
『毎日新聞』2015.3.1「今週の本棚」

プロフィール

(五十音順、矢印は担当執筆箇所)

【編者】
広瀬 浩二郎(ひろせ こうじろう)→終章
国立民族学博物館民族文化研究部准教授。1967年東京都生まれ。13歳の時に失明。筑波大学附属盲学校(現在は視覚特別支援学校)から京都大学に進学。2000年同大学院にて文学博士号取得。専門は日本宗教史、触文化論。2001年より国立民族学博物館に勤務。主な著書に、『障害者の宗教民俗学』(明石書店、1997年)、『さわる文化への招待』(世界思想社、2009年)、『さわって楽しむ博物館—ユニバーサル・ミュージアムの可能性』(編著、青弓社、2012年)、『世界をさわる—新たな身体知の探究』(編著、文理閣、2014年)など

嶺重 慎(みねしげ しん)→第8章
京都大学大学院理学研究科教授。神戸市出身、1986年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、理学博士。専門は宇宙物理学、特にブラックホール天文学。一般向け講演や一般書執筆に加え、バリアフリー学習教材(点字版や手話版)製作にも力を入れている。2007年井上学術賞、2008年日本天文学会林忠四郎賞、2012年京都新聞教育社会賞受賞。主な著書に、『天文学入門—星・銀河と私たち』(共編著、岩波書店、2005年)、『さわっておどろく!』(共著、岩波書店、2012年)、『宇宙と生命の起源2—素粒子から細胞へ』(共編著、岩波書店、2014年)など。

【執筆者】
石川 准(いしかわ じゅん)→第3章
静岡県立大学国際関係学部/大学院国際関係学研究科教授。富山県魚津市出身、1987年東京大学大学院社会学研究科社会学A専攻博士課程単位取得退学、社会学博士。専門は障害学、アイデンティティ論等。内閣府障害者政策委員会前委員長。2000年通商産業大臣表彰受賞他。主な著書に、『見えないものと見えるもの—社交とアシストの障害学』(医学書院、2004年)、『障害学への招待』(共編著、明石書店、1999年)など。

岩隈 美穂(いわくま みほ)→Column 4
京都大学大学院医学研究科准教授。千葉県出身、2002年米国オクラホマ大学コミュニケーション研究科博士課程修了、コミュニケーション学博士。専門はコミュニケーション学、障害学、医療社会学。主な著書に、『多文化社会と異文化コミュニケーション』(共著、三修社、2007年)、『よくわかる障害学』(共著、ミネルヴァ書房、2014年)、『Struggle to Belong』(Hampton Press, in press)など。

植戸 貴子(うえと たかこ)→Column 1
神戸女子大学健康福祉学部社会福祉学科教授。神戸市出身、1990年ニューヨーク州立大学オールバニー校大学院社会福祉修士課程修了、Master of Social Work。専門は障害者ソーシャルワーク、特に知的障害者の地域生活支援。社会福祉士・精神保健福祉士、2006年から神戸市障害者施策推進協議会委員。主な著書に、『障害者ソーシャルワーク』(共編著、久美、2002年)、『障害者ソーシャルワークへのアプローチ—その構築と実践におけるジレンマ』(共著、明石書店、2011年)など。

遠藤 利三(えんどう としぞう)→第6章
元筑波大学附属盲学校教諭(中学・高等部数学)。東京都出身、1973年東京教育大学理学部数学科卒業。1999年「電波の日・情報月間」関東電気通信協会長表彰。主な発表論文等に、「プログラム電卓の指導」(東京教育大学附属盲学校紀要、1977年)、「盲学校における計算機の指導」(共著、情報処理学会第19回全国大会論文集、1978年)、「点字とコンピュータ(点字制定100周年)」(数学セミナー、1991年3月)など。

大野 照文(おおの てるふみ)→第7章
京都大学総合博物館教授。京都府出身。1983年、ボン大学でDr. rer. nat.を取得。専門は層位・古生物学。無脊椎動物の生態や多細胞動物の爆発的進化の原因の研究を進めると同時に、博物館における生涯学習への動機付けの研究にも携わっている。主な著書に、『現代地球科学』(共著、放送大学教育振興会、2011年)など。

岡田 弥(おかだ あまね)→Column 6
日本ライトハウス情報文化センターサービス部長。奈良市出身。視覚障害リハビリテーション指導員。1992年日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター入職、2001年に情報文化センターに異動。視覚障害者用のグッズや機器の展示・紹介・指導を担当。視覚障害リハビリテーション協会理事。視覚障がい乳幼児研究会幹事。「点字毎日」連載コラム執筆中。

岡森 祐太(おかもり ゆうた)→第2章2節
京都大学経済学部経済経営学科4年生。日本経済史ゼミに所属。経営学の考え方に経済環境の影響や歴史的な背景をプラスして企業行動を読み解くことに関心がある。

尾関 育三(おぜき いくぞう)→Column 7
元筑波大学附属盲学校教諭。1929年名古屋市に生まれる。5歳の時、長野県松本市に転居。11歳で失明。翌年、盲学校に転校。1951年東京教育大学教育学部特殊教育学科入学。1958年同大学院教育学研究科修了、修士。同附属盲学校に勤務。本務のかたわら、コンピュータの点字への応用などを研究。後、京都大学にて佐藤幹夫教授の指導のもと、概均質ベクトル空間の研究に関わる。1990年定年退職後、大学入試問題点訳の専門機関の設立に加わり専務理事を務める。現在フリー。

河原 達也(かわはら たつや)→第4章
京都大学学術情報メディアセンター/大学院情報学研究科教授。1987年京都大学大学院工学研究科修士課程情報工学専攻修了。専門はマルチメディア情報処理、特に音声認識および対話システム。音声認識のフリーソフトJuliusの設計、衆議院の会議録作成の音声認識の開発に従事し、講演・講義の字幕付与への展開を図っている。主な著書に、『音声認識システム』(共著、オーム社、2001年)、『音声対話システム』(編著、オーム社、2006年)など。

桑原 暢弘(くわはら のぶひろ)→第2章2節
株式会社NTTドコモ。京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻修士課程修了。河原達也教授の指導のもと、音声認識に関する研究に従事。修士論文テーマは「音声認識結果の有用性判定に基づく聴覚障がい者のためのリアルタイム字幕付与」。音声認識結果を効率的に編集・提示するために、字幕としての有用性の観点から音声認識結果を自動的に分類する手法、および自動分類に基づく字幕提示法を提案した。

近藤 武夫(こんどう たけお)→Column 3
東京大学先端科学技術研究センター准教授。博士(心理学)。DO-IT Japanサブディレクター、米国ワシントン大学DO-IT Center連携研究員。広島大学教育学研究科助教、ワシントン大学計算機科学工学部客員研究員を経て現職。専門は特別支援教育(支援技術)、発達神経心理学。主な著書に、『バリアフリー・コンフリクト—争われる身体と共生のゆくえ』(共著、東京大学出版会、2012年)、『発達障害の子を育てる本—ケータイ・パソコン活用編』(監修、講談社、2012年)など。

佐野(藤田) 眞理子(さの[ふじた] まりこ)→第1章
広島大学大学院総合科学研究科教授、アクセシビリティセンター長。東京都出身。1984年スタンフォード大学大学院文化人類学科博士課程修了、Ph.D.。専門は文化人類学。主な著書に、『アメリカ人の老後と生きがい形成—高齢者の文化人類学的研究』(大学教育出版、1999年)、『大学教育とアクセシビリティ—教育環境のユニバーサルデザイン化の取組み』(共著、丸善、2009年)など。

新納 泉(にいろ いずみ)→第5章
岡山大学大学院社会文化科学研究科教授。滋賀県出身、1983年京都大学大学院文学研究科博士課程学修退学、文学修士。専門は考古学、特に古墳や鉄器時代の比較研究など。岡山県を中心に数多くの古墳を発掘。イギリスやアイルランドに留学し、日本の古墳時代社会との違いに注目。世界考古学会議東アジア地区委員や、考古学研究会代表委員などを務め、現在は日本考古学協会理事。2014年山陽新聞社賞(学術功労)受賞。

橋詰 健太(はしづめ けんた)→第2章2節
京都大学理学研究科数学・数理解析専攻数学系修士課程1年。専攻は数学。代数幾何学に関心があり、特に双有理幾何学に力をいれている。

橋本 雄馬(はしもと ゆうま)→Column 5
京都大学理学部卒業。和歌山県出身。現在、京都府立高校で勤務。学生時代に京都大学点訳サークルに所属し、点訳活動や対面朗読等を通じて、障害学生に関わる。視覚障害児の理数教育に関心がある。

村田 淳(むらた じゅん)→第2章
京都大学学生総合支援センター障害学生支援ルーム助教(チーフコーディネーター)。京都府立大学大学院公共政策学研究科福祉社会学専攻博士前期課程修了。2007年より京都大学における障害学生支援に従事。新たな視点でのバリアフリーマップ製作、発達障害のある学生の修学支援やグループ活動を早くから実施するなど、支援現場で様々な取り組みを行う一方、組織的な障害学生支援体制の構築を担うなど、大学全体のバリアフリー化に向けた取り組みを実施している。全学共通科目「偏見・差別・人権」「障害とは何か」を担当。

安井 絢子(やすい あやこ)→第2章2節
京都大学大学院文学研究科倫理学専修博士後期課程3年。倫理学のなかでも、「ケアの倫理」という倫理理論を中心に研究している。現在、博士論文執筆に向けて、ケアの倫理が一つの規範理論として確立しうるか、その体系化について研究中。

山本 斎(やまもと いつき)→Column 2
京都大学理学研究科・理学部相談室カウンセラー。京都市出身。2001年京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了(生命科学専攻)、2010年京都大学大学院教育学研究科博士後期課程研究指導認定退学。臨床心理士。2012年に開設された「京都大学理学研究科・理学部相談室」において、学生・教職員・保護者を対象とした相談活動を行うかたわら、構成員同士の交流を目的としてグループ活動も行っている。

目次

「さわる口絵」について
はじめに[嶺重 慎]

第1部 障害学生支援の理論と実践

序——障害学生支援から始まる「知のバリアフリー」[広瀬浩二郎]
   来る者は拒まず/不代替物になれ/「たいへんでしたね」/大学とは自分で
   勉強する所/しかたなしの極楽

第1章 高等教育のユニバーサルデザイン化を目指して [佐野(藤田)眞理子]
 1.誰もが疎外されない高等教育とは何か?
 2.多様なニーズとアクセシビリティ
   多様化する大学生/障害学生支援の変化
 3.「合理的配慮」とユニバーサルデザイン
    授業における「合理的配慮」/閉じられたケア/開かれたケア
 4.持続可能な全学的支援システムの構築
    規則の制定/組織の整備/学生の視点に立った点検評価/支援の拠点の設置
 5.教育の一環としての人材育成
 6.共に学び、競いあうためのユニバーサルデザイン
Column 1 疎外から共生へ——障害者ソーシャルワークの現場から[植戸貴子]

第2章 支援の場から学びのコミュニティへ——京都大学の障害学生支援[村田 淳]
 1.京都大学における障害学生支援
    専門窓口の設置/二つの特徴/支援ニーズの拡大と変化
 2.学生たちのキャンパスライフ [岡森祐太、橋詰健太、桑原暢弘、安井絢子]
 3.発達障害のある学生への支援
    支援が必要な学生の顕在化/必要に応じた修学支援/社会を見据えた支援の必要性
 4.支援と学び
Column 2 大学の相談室から[山本 斎]

第3章 障害学生支援と障害者政策[石川 准]
 1.障害学生支援の理念と現状
    障害学生支援に関する政策提言と政府の基本計画/お願いから権利へ
 2.障害者差別解消法と障害者の権利条約——障害者支援の未来
    障害者差別解消法(2013)の意義/障害者の権利条約——障害当事者による政策の監視
 3.障害学生支援の環境整備としての情報アクセシビリティ
    アクセシビリティとは/情報アクセシビリティ整備を支えたアメリカ国内法/読みたい本を読む自由
 4.アクセシビリティは人をエンパワーする
Column 3 「思いやり」から「常識」へ ——DO-ITJapanの挑戦[近藤武夫]
    DO-ITJapanの取り組み/今なおバリアは残る/法改正がもたらすもの/
    新しい価値観を目指して

第4章 聴覚障害学生支援の最先端——音声認識による字幕付与技術[河原達也]
 1.話し言葉の音声認識
    関連する研究開発の動向/音声認識の原理
 2.講演・講義映像への字幕付与——オフライン字幕付与
    字幕付与の現状/私たちの取り組み
 3.講義におけるノートテイク支援——リアルタイム字幕付与
    ノートテイクの現状/私たちの取り組み/音声認識を用いたノートテイク実験
 4.実用化にむけた展望
Column 4 障害という「資本」を活かす[岩隈美穂]
    2014年年始——夢ノート/障害という「資本」を意識する/「人と違うレンズを持つ」/
    「固有文化」の発見/これから——だからこそできること

第2部 障害学習発信の課題と展望

序——障害の学びあいを目指して[嶺重 慎]
    障害を切り口にした学びの実例/障害学習を発信する

第5章 学びあいと支えあいの原点——京大点訳サークルの誕生[新納 泉]
 1.京大点訳サークルの結成
    初期の点訳サークル/関西スチューデントライブラリー
 2.点訳サークルの活動
    11月祭の取り組み/仏和辞典の点訳/京都大学附属図書館の新営
 3.理想と現実
    当時、心がけていたこと/学生ボランティアの「生き方」/歩み続けよう、点訳サークル
Column 5 点訳サークルの今[橋本雄馬]

第 6章 盲学校における視覚障害者の学習——感光器、点字プリンタ、ポリドロン[遠藤利三]
 1.新しい技術と素晴らしい人たちとの出会い
    アマチュア無線にのめりこむ——1960年代/盲学校での出会い
 2.学習支援の技術史と私——感光器からパソコン点訳まで
    感光器を作る——1963年/電子計算機と点字プリンタの衝撃——1964年/
    盲学校における電子計算機の利用——1973年〜1975年/プログラム電卓の
    指導から点字 BASICの実験——1978年/ブレールマスターからパソコン点訳へ
 3.学びあいが学びを変える
    和光小学校での教育実習/視覚障害教育の重要性/短期記憶の重要性/
    ポリドロン/触図について/見取り図について/目的が明確になれば消
    えるバリア/入学試験問題の点訳/盲教育を支える力
Column 6 サークル活動がライフワークに![岡田 弥]

第7章 博物館とバリアフリー[大野照文]
 1.つながりでバリアを超える
    『京大日食展』でのバリア克服記/つながりでバリアを超える
 2.教材が拓く学びあい
    視覚に障害をもつ人たち向けの学習教材作り/博物館で学びの起こるとき/
    触察プログラムの開発——ヒントは盲学校の生徒さんから/ぬいぐるみ模型を
    作る/「サワッテ ミル カイ」誌上体験/バリアを超えると共有できるもの
 3.対話を通じてバリアを超える
Column 7 バリアフリーからユニバーサルデザインへ[尾関 育三]
    教育・研究のバリアを取り除く/点訳と対面朗読/漢字のバリア/障害者と
    健常者のためのユニバーサルデザインを目指して

第8章 触って楽しむ天文学——宇宙を感じる試み[嶺重 慎]
 1.眼で見えないものを探究する
    現代天文学の課題/きっかけ?/プロジェクトの始動/天文学習教材—— 3つの
    プロジェクト/盲学校で出前授業
 2.点図と手話がひらく宇宙の姿
    宇宙点図の実例/点図の難しさとおもしろさ/手話をベースにした教材づくり
 3.プロジェクトの今後

終章 共活社会を創る[広瀬浩二郎]
 1.「共活」とは何か
 2.現在の教科書と視覚障害者
 3.戦前の教科書との比較
 4.障害者史=情報保障の追求
 5.盲人史=情報変換の可能性
 6.21世紀型「共活」理論の実践に向けて

おわりに——“知”のバリアフリーが始まる!
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