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プリミエ・コレクション 51

地方債市場の国際潮流

欧米日の比較分析から制度インフラの創造へ

三宅 裕樹

A5上製, 240 pages

ISBN: 9784876983957

pub. date: 03/14

  • Price : JPY 3,200 (with tax: JPY 3,520)
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内容

経済のグローバル化や少子高齢化が進む中で,地方自治体に期 待される役割は、ますます大きくなる。そうした状況で自治体が担う地方債の共同発行という長い歴史をもつテーマに、 具体的に欧米先進諸国の事例を比較考察するという一般的な手法で迫った、基本に忠実な研究が通説に呈した疑義とは? 重要性に比して本格研究の少ない地方債を展望する。

プロフィール

三宅 裕樹(みやけ ひろき)
1982年 京都府京都市生まれ
2000年 ヴィアトール学園洛星高等学校卒業
2004年 京都大学経済学部卒業
2006年 京都大学大学院経済学研究科修士課程修了
同年  野村證券株式会社入社,株式会社野村資本市場研究所出向(11年まで)
2014年 京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了
現在,博士(経済学・京都大学)。2014年4月より京都大学大学院経済学研究科非常勤講師。

共著に『変革期の地方債市場』(金融財政事情研究会,2007年),『Basic地方財政論』(有斐閣,2013年)など。訳書に『カリフォルニア州地方債読本』(野村資本市場研究所,2011年)など。

目次

第 1 章 地方分権時代に求められる地方債発行のあり方
 Ⅰ.変革期のわが国地方債市場
  1.近づく地方自治体と金融市場との距離
  2.地方債発行の自由化
 Ⅱ.地方債発行のあり方に関する通説的見解と課題
  1.地方債の共同発行という考え方
  2.地方債発行の原則とされる自助=個別発行
  3.「個別発行」とは何か?
  4.共同発行はモラル・ハザードを招くか?
 Ⅲ.地方債発行の新機軸の模索
  1.財政と金融の結節点としての地方債
  2.機能論的アプローチの採用
  3.地方債の共同発行の潜在的可能性への注目
 Ⅳ.本書の構成
第 2 章 地方共同資金調達機関とは何か
 Ⅰ.はじめに
 Ⅱ.地方債の共同発行による資金調達の効率化
  1.金融市場からの資金調達に伴うコスト
  2.金融仲介機関による金融取引コストの軽減
  3.地方債の実質的な共同発行を可能とする地方共同資金調達機関
  4.地方政府への金融サービスの提供
  5.地方債市場における専門性
  6.リスクの満期保有による金融取引の効率化
 Ⅲ.地方共同資金調達機関に対する公的関与の根拠
  1.地方債の発行に対する支援の妥当性
  2.政策手段としての地方共同資金調達機関
 Ⅳ.地方共同資金調達機関の類型化
  1.公的支援重視モデル
  2.市場競争重視モデル
 Ⅴ.小括
第 3 章 200年の伝統を誇る公的支援重視モデル
—英国PWLBの事例を中心に—
 Ⅰ.はじめに
 Ⅱ.英国地方債市場で存在感を高めた過程・背景
  1.PWLBの創設から第二次世界大戦まで
  2.最後の貸し手機能への特化
  3.融資機能の再拡充
  4.地方債発行の全額引き受けへ
  5.PWLBに期待されてきた政策的な役割
 Ⅲ.先進諸国における公的支援重視モデルの現在
第 4 章 究極の市場競争重視モデルとしての民間地方共同資金調達機関
—米国金融保証(モノライン)保険の事例を中心に—
 Ⅰ.はじめに
 Ⅱ.地方共同資金調達機関としての金融保証保険
  1.州・地方政府への金融サービスの提供
  2.地方債市場における高い専門性
  3.地方債の信用リスクの満期保有
 Ⅲ.米国地方債市場における普及の歴史的要因
  1.米国地方債市場における伝統的な銀行機能の低下
  2.地方債市場の金融取引コストの上昇
  3.新たな金融仲介機関に対する期待に応えた金融保証保険
  4.機関投資家としての地方債ファンド
 Ⅳ.2000年代後半の金融不安定化が与えた影響
  1.1980年代後半以降の証券化商品の保証業務への進出
  2.2008年以降の金融保証保険会社の相次ぐ格下げ
  3.金融保証保険会社の保証能力の減退
 Ⅴ.原点回帰による信頼回復に努める民間金融保証保険会社
  1.地方債の保証業務の切り離しを進めたMBIA
  2.新規参入を図る動き
  3.金融保証保険業界における再編動向
 Ⅵ.連邦政府による地方債市場の混乱への対応
  1.金融市場へのアクセスが困難化した州・地方政府
  2.連邦政府によるBABプログラムを通じた起債支援
  3.さらなる地方債市場への支援をめぐる議論と挫折
 Ⅶ.相互会社型の金融保証保険会社の誕生
  1.NLCによる提案
  2.BAMの誕生へ
 Ⅷ.民間金融機関型の今後
  1.米国の地方債市場で金融保証保険が果たしてきた役割
  2.民間金融機関型が有する潜在的可能性
  3.次章の検討課題
第 5 章 もう一つの市場競争重視モデルとしての競争創出型
—地方共同資金調達機関の北欧モデル—
 Ⅰ.はじめに
  1.市場シェアの増加基調が顕著な北欧の地方共同資金調達機関
  2.競争創出型としての北欧の地方共同資金調達機関
 Ⅱ.相互会社型としてのコミュンインベスト・デンマーク地方金融公庫
  1.中央政府・地方自治体との関係
  2.歴史的な沿革:1970年代以降の金融自由化が与えた影響
 Ⅲ.地方自治体からの高い評価の背景
  1.国外の金融市場への効率的なアクセス
  2.民間の金融機関と同等の競争条件
  3.地方自治体の立場に立った中立的な金融サービスの提供
  4.2008年以降のグローバル金融危機の影響
 Ⅳ.経済合理的な運営を行うための条件を確保する難しさと対応
  1.相互会社型の地方共同資金調達機関が抱える潜在的な経営課題
  2.コミュンインベストにおける市場原理に則った対応
  3.中央政府による起債統制を前提としたデンマーク地方金融公庫の対応
 Ⅴ.政府後援企業型としてのKBN
  1.KBNの制度設計
  2.ノルウェー地方債市場における競争を勝ち抜いてきたKBN
 Ⅵ.地方共同資金調達機関の北欧モデルとは何か
  1.地方債市場の競争環境を重視する北欧諸国
  2.北欧の地方共同資金調達機関が果たす政策的役割
  3.競争創出型は北欧モデルにとどまるのか
第 6 章 変わるわが国地方債市場と変わらない「支援」への固執
—市場競争重視モデルへの創造的転換は可能か—
 Ⅰ.欧米における地方共同資金調達機関の高い位置付け
  1.地方債市場に不可欠な制度インフラとしての役割
  2.公的支援重視モデルから市場競争重視モデルへ
 Ⅱ.国際比較の観点からみたわが国の現状
  1.地方共同資金調達機関をめぐる近年の改革
  2.公的支援重視モデルとしての地方公共団体金融機構
 Ⅲ.真に求められる地方共同資金調達機関とは?
  1.公的支援重視モデルの地方共同資金調達機関はなお必要か?
  2.わが国における市場競争重視モデルの可能性
  3.今後の地方債市場のあり方をめぐる議論の深化への期待

 あとがき
 参考文献
 索  引
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