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ものの人類学2

床呂 郁哉・河合 香吏 編

菊上製・306頁

ISBN: 9784814002337

発行年月: 2019/06

  • 本体: 3,800円(税込 4,180円
  • 在庫あり
 
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内容

「ひと」と「もの」の境界とは何か。それは極めて不明瞭で流動的で、両者はときに一体となる。鍛冶屋と鎚の対話、神が宿るとされる石、ひとが「もの」化されたホロコースト等、世界の各地における多様な「もの」たちと人間の関係の事例を人類学や関連諸学の視点から検討。人間中心主義を超えた斬新な人類社会論、待望の続編。

プロフィール

伊藤詞子(いとう のりこ)
京都大学野生動物研究センター研究員
1971年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,博士(理学).
主な著書に,『制度:人類社会の進化』(京都大学学術出版会,共著),“Mahale Chimpanzees: 50 years of Research"(Cambridge University Press,共編著),『他者:人類社会の進化』(京都大学学術出版会,共著)など.

内堀基光(うちぼり もとみつ)
一橋大学・放送大学名誉教授
1948年生まれ.オーストラリア国立大学太平洋地域研究所博士研究課程修了,Ph. D.
主な著書に,『死の人類学』(講談社学術文庫,共著),『森の食べ方』(東京大学出版会),『論集 資源人類学』全9巻(弘文堂,総合編者)など.

奥野克巳(おくの かつみ)
立教大学異文化コミュニケーション学部教授
1962年生まれ.一橋大学大学院社会学研究科修了,博士(社会学).
主な著書に,『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(亜紀書房),『たぐい Vol.1.』(亜紀書房,共編著),『Lexicon 現代人類学』(以文社,共編著),『ソウル・ハンターズ:シベリア・ユカギールのアニミズムの人類学』(亜紀書房,共訳)など.

春日直樹(かすが なおき)
大阪大学・一橋大学名誉教授
1953年生まれ.大阪大学大学院人間科学研究科博士課程退学,博士(人間科学).
主な著書に,『太平洋のラスプーチン:ヴィチ・カンバニの歴史人類学』(世界思想社),『〈遅れ〉の思考:ポスト近代を生きる』(東京大学出版会),『科学と文化をつなぐ:アナロジーという思考様式』(東京大学出版会,編著)など.

金子守恵(かねこ もりえ)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授
1974年生まれ.京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了,地域研究博士.主な著書に,“African Virtues in the Pursuit of Conviviality"(Langaa RPCIG,共著),“Gender-based Knowledge and Techniques in Africa"(The Center for African Area Studies,共著),『土器つくりの民族誌』(昭和堂)など.

河合香吏(かわい かおり)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授
1961年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了.博士(理学).
主な著書に,『野の医療:牧畜民チャムスの身体世界』(東京大学出版会),『集団:人類社会の進化』(京都大学学術出版会,編著),『制度:人類社会の進化』(同),『他者:人類社会の進化』(同)など.

久保明教(くぼ あきのり)
一橋大学社会学研究科准教授
1978年生まれ.大阪大学大学院人間科学研究科単位習得退学,博士(人間科学).
主な著書に,『機械カニバリズム:人間なきあとの人類学へ』(講談社),『ロボットの人類学:二〇世紀日本の機械と人間』(世界思想社),『現実批判の人類学:新世代のエスノグラフィへ』(世界思想社,共著)など.

黒田末寿(くろだ すえひさ)
滋賀県立大学名誉教授
1947年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士.
主な著書に,『ピグミーチンパンジー:未知の類人猿』(筑摩書房・以文社),『人類進化再考:社会生成の考古学』(以文社),『自然学の未来:自然との共感』(弘文堂),『アフリカを歩く:フィールドノートの余白に』(以文社,共編著)など.

湖中真哉(こなか しんや)
静岡県立大学国際関係学部教授
1965年生まれ.筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学,京都大学博士(地域研究).
主な著書に,『牧畜二重経済の人類学』(世界思想社),『地域研究からみた人道支援』(昭和堂,共編著),『遊牧の思想』(昭和堂,共著)など.

小松かおり(こまつ かおり)
北海学園大学人文学部教授
1966年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学.京都大学博士(理学).
主な著書に,『沖縄の市場<マチグヮー>文化誌』(ボーダーインク),『食と農のアフリカ史』(昭和堂,共編著)など.

田中雅一(たなか まさかず)
京都大学人文科学研究所教授
1955年生まれ.ロンドン大学経済政治学院人類学博士課程,Ph.D.(Anthropology)
主な著書に,『供犠世界の変貌:南アジアの歴史人類学』(法藏館),『フェティシズム研究』(全3巻)(京都大学学術出版会,編著),『トラウマ研究』(全2巻)(京都大学学術出版会,編著),『癒しとイヤラシ:エロスの文化人類学』(双書Zero,筑摩書房),『誘惑する文化人類学:コンタクト・ゾーンの世界へ』(世界思想社)など.

床呂郁哉(ところ いくや)
1965年生まれ.東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退.学術博士.東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授.専攻:人類学.
著書に『越境:スールー海域世界から』(岩波書店).編著に『「もの」の人類学』(京都大学学術出版会,共編著),“An Anthropology of Things"(Kyoto University Press & Trans Pacific Press,共編著),『人はなぜフィールドに行くのか:フィールドワークへの誘い』(東京外国語大学出版会),『グローバリゼーションズ:人類学,歴史学,地域研究の視点から』(弘文堂,共編著),『東南アジアのイスラーム』(東京外国語大学出版会,共編著)など.

中村美知夫(なかむら みちお)
京都大学大学院理学研究科准教授
1971年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了,理学博士.
主な著書に,『チンパンジー:ことばのない彼らが語ること』(中公新書),『「サル学」の系譜:人とチンパンジーの50年』(中公叢書),“Mahale Chimpanzees: 50 Years of Research"(Cambridge University Press,共編著)など.

西井凉子(にしい りょうこ)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授
1959年生まれ.京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学.総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程中途退学.博士(文学).
主な書著に,『死をめぐる実践宗教:南タイのムスリム・仏教徒関係へのパースペクティヴ』(世界思想社),『情動のエスノグラフィ:南タイの村で感じる*つながる*生きる』(京都大学学術出版会),『社会空間の人類学:マテリアリティ・主体・モダニティ』(世界思想社,共編著),『時間の人類学:情動・自然・社会空間』(世界思想社,編著).

丹羽朋子(にわ ともこ)
国際ファッション専門職大学国際ファッション学部講師
1974年生まれ.東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学.
主な著書に,『フィールドノート古今東西』(古今書院,共編著),『ものの人類学』(京都大学学術出版会,共著),『災害文化の継承と創造』(臨川書店,共著)など.「窓花・中国の切り紙」展(福岡アジア美術館他),「映像のフィールドワーク展」(生活工房)などの展覧会制作にも携わる.

檜垣立哉(ひがき たつや)
大阪大学人間科学研究科教授
1964年生まれ.東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退,博士(文学・大阪大学).専攻:哲学/現代思想.
主要著作として『瞬間と永遠:ジル・ドゥルーズの時間論』(岩波書店),『ヴィータ・テクニカ』(青土社),『西田幾多郎の生命哲学』(講談社学術文庫),『食べることの哲学』(世界思想社).

伏木香織(ふしき かおり)
大正大学文学部人文学科准教授
1971年生まれ.大正大学大学院文学研究科博士後期課程終了,博士(文学).
主な著作・著書に,「「過平安橋」:シンガポールの広場に出現するゆるやかな公共性の場」(『往還する親密性と公共性:東南アジアの宗教・社会組織にみるアイデンティティと生存』(京都大学学術出版会)),“Potehi: Glove Puppet Theatre in Southeast Asia and Taiwan"(Taiyuan: Taipei, Taiwan,共編著),『「華人」という描線:行為実践の場からの人類学的アプローチ』(風響社,共編著),`Nanyin and the Singaporean culture: The creation of intangible cultural heritage in Singapore and intergenerational contrasts'(“Transglobal Sounds: Music, Youth and Migration"(Bloomsbury))など.

目次

序 章 新たな「もの」の人類学のための序章
—脱人間中心主義の可能性と課題 [床呂郁哉・河合香吏]
1 「もの」からの出発
2 「もの」をめぐる逆説的状況
3 関連諸分野における「もの」への回帰
4 人類学における「もの」研究の系譜
5 新たな「もの」概念へ
6 本書の扱う問題群—脱人間中心主義的な人類学へ向かって
7 本書の構成と各章の概要
8 結びに代えて—脱人間中心主義的人類学の可能性と課題

第Ⅰ部 ひとともののエンタングルメント

第1章 ものが生まれ出ずる制作の現場
—鉄と道具と私の共同作業 [黒田末寿]
KEY WORDS:農鍛冶,手仕事,道具の循環,共成長,制作の対話モデル,ものの主体化,未完の思想
1 鍛冶見習い
2 技術者松浦清さん
3 鍛冶の基本作業
4 鉄を打つ感覚
5 ものが私を呼んでいる
6 制作者・道具・使用者の共なる成長
7 ものが生まれ出ずる文化
8 ものが生まれ出ずる文化の広がりと制作の両義性
9 成長する制作物,未完の思想

第2章 「もの」が創発するとき
—真珠養殖の現場における「もの」,環境,人間の複雑系的なエンタングルメント [床呂郁哉]
KEY WORDS:真珠養殖,流体的なテクノロジー,エンタングルメント,創発
1 「ひと」と「もの」のエンタングルメントの人類学へ
2 真珠とは何か
3 真珠養殖の民族誌—近代的真珠養殖技術の概要
4 流体的なテクノロジーと「もの」・環境・人間のエンタングルメント
5 「もの」の創発と複雑系—設計主義を越えて
6 結語—新たなマテリアリティ研究へ向けて

第3章 存在論的相対化
—現代将棋における機械と人間 [久保明教]
KEY WORDS:将棋,コンピュータ,存在論的転回,比較,可塑性
1 怖がらないコンピュータ
2 それはいかなる転回か
3 比較の可塑性
4 相対化の実定性

Column 1 人工物を食べる—遺伝子組み換えバナナの開発 [小松かおり]
EYWORDS:遺伝子組み換え,ゲノム編集,バナナ

第Ⅱ部 もののひと化

第4章 絡まりあう生命の森の新参者
—ボルネオ島の熱帯雨林とプナン [奥野克巳]
KEY WORDS:諸自己の生態学,意思疎通,狩猟民プナン,複数種の絡まりあい,マルチスピーシーズ人類学
1 諸自己の生態学にみられる意思疎通
2 エクアドル・アヴィラの森のハキリアリをめぐる複数種の絡まりあい
3 ボルネオ島の熱帯雨林の生態学
4 ブラガの森の一斉開花・一斉結実期における複数種の絡まりあい
5 森の新参者たちの過去,現在,未来

第5章 サヴァンナの存在論
—東アフリカ遊牧社会における避難の物質文化 [湖中真哉]
KEY WORDS:存在論的比較,国内避難民,遊牧,レジリアンス,最低限のもののセット
1 東アフリカ遊牧社会における存在論
2 紛争と国内避難民
3 遊牧民の国内避難民の物質文化悉皆調査
4 避難の物質文化—民族集団B,C,D の比較分析
5 最低限のもののセット
6 サヴァンナの存在論へ向けて

第6章 石について
—非人工物にして非生き物をどう語るか [内堀基光]
KEY WORDS:自然物,人工物,岩田慶治,五来重,アニミズム
1 「ひと」の手にならない「もの」
2 「ひと」の痕とその連鎖
3 「もの」に「ひと」を見る—岩田アニミズム
4 「もの」に「ひと」を見る—石の宗教
5 より「即物的」に

Column 2 観察するサル,観察される人間
—非人間であるとはどのようなことか [伊藤詞子]
KEY WORDS:人間と非人間,フマニタスとアントロポス,自己と他者,区別と関係

第Ⅲ部 ひとのもの化

第7章 「もの人間」のエスノグラフィ
—ラスタからダッワ実践者へ [西井凉子]
KEY WORDS:もの人間,ラスタ,ダッワ,髪,声,水
1 「もの人間」という事態
2 ファイサーンとポーンの住むパーイという町
3 ラスタの世界
4 ラスタからダッワへの移行
5 ダッワ実践者になる
6 結論にかえて—もの人間,生成する出来事

第8章 中国黄土高原に潜勢する〈人ならぬ—もの〉の力
[丹羽朋子]
KEY WORDS:中国黄土高原,儀礼行為,イメージ=力,変異する出来事としての「もの」,
陰陽の境界域,剪紙が描く生の力線
1 〈人ならぬ—もの〉とはなにか
2 黄土高原の〈天地〉に生動する非人格的な力の捉え方
3 徴候的な力に触れる—災いへの対処儀礼
4 鬼への変化と孝子への変身—陝北の葬送儀礼
5 生生不息の剪紙—老女たちが描く生々流転する世界
6 まとめに代えて

第9章 〈ひとでなし〉と〈ものでなし〉の世界を生きる
—回教徒とフェティシストをめぐって [田中雅一]
KEY WORDS:アウシュヴィッツ,ホロコースト,フェティシズム,商品カタログ,ゾンビ
1 人とものとの否定的な関係
2 アウシュヴィッツの回教徒〈ひとでなし〉の出現
3 複製技術とフェティシズム—〈ものでなし〉の出現
4 ゾンビ・回教徒・フェティシスト

Column 3 音となったコトバ—インドネシア,ワヤン・ポテヒの出場詩 [伏木香織]
KEY WORDS:音,言葉,文字,ワヤン,ポテヒ,布袋戯,su liam pek,suluk,インドネシア,東ジャワ

第Ⅳ部 新たなもの概念

第10章 数からものを考える
—『無限の感知』を参照しつつ [春日直樹]
KEY WORDS:数,無限,神話,支払い,リズム
1 なぜ数をもちだすのか
2 パプアニューギニア,イクワィエ人の数え方
3 数の構造とイクワィエ人の再生産
4 神と人間,男と女
5 1,2,1,2,……の反復と無限
6 数とものの結びつき
7 「項目と数」によるアナロジー
8 リズムを含めて考える
9 ものを数で考えること

第11章 五感によって把握される「もの」
—知覚と環境をめぐる人類学的方法試論 [河合香吏]
KEY WORDS:環境,五感,生態的参与観察,経験の共有,共感
1 「身の回り世界」と知覚
2 背景—「音」のもの性についての試論
3 五感をめぐる二つの視点—五感の統合性と五感の共鳴
4 知覚を扱う方法論—生態的参与観察
5 「五感」に基づく知覚世界とその社会的共同性(五感の共鳴)の普遍性に向けて
6 結びにかえて

Column 4 使い終えた授業ノートをめぐって—ゴミとして識別されていく過程を人—「もの」関係としてとらえる試み [金子守恵]
KEY WORDS:授業ノート,ゴミ,人—「もの」関係

第Ⅴ部 ものの人類学を超えて
—動物研究と哲学からの視線

第12章 「人間」と「もの」のはざまで
—「動物」から人類学への視点 [中村美知夫]
KEY WORDS:動物の視点,存在論的転回,非人間,「自然」と「文化」,「普遍」と「特殊」
1 動物は「もの」を超える?
2 動物から人類学を見る
3 人間と非人間のはざまで—サル学者の「捻れ」た立場
4 「転回」と人類学
5 「非人間」について
6 動物の主体性なるもの
7 「自然」と「文化」
8 人類学者という「われわれ」?
9 人類学のゆくえ

第13章 〈もの自体〉を巡る哲学と人類学 [檜垣立哉]
KEY WORDS:思弁的実在論,もの自体,メイヤスー,大森荘蔵
1 〈「もの自体」の形而上学〉
2 思弁的実在論ともの
3 祖先以前的な「もの」
4 類似の問い—大森荘蔵
5 非相関主義の射程
6 課題の総覧

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