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50年目の「大学解体」 20年後の大学再生

高等教育政策をめぐる知の貧困を越えて

佐藤 郁哉 編著

A5上製, 432 pages

ISBN: 9784814001859

pub. date: 12/18

  • Price : JPY 3,800
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内容

深刻化する財政危機と志願者減少を背景に,あたかも「国際ビジネス」と化した大学の現実。その「現実」の表面のみを見て,大学の研究教育を単線的に評価する高等教育政策——
この時代になぜ,何のために大学・学術があるのかという根本的な問いが欠けたまま進む「大学改革」は,大学間の序列の固定化と教育研究の全体的な地盤沈下をもたらす。エビデンスに基づく議論と徹底した帰納法的アプローチで,「高等教育政策における知的貧困」を乗り越え,大学再生のための理念的手掛かりを示す。

書評

『週刊エコノミスト』2019年2月12日号、48-49頁、評者:服部茂幸氏
『全私学新聞』2019年2月3日付

プロフィール

佐藤郁哉(さとう いくや)
同志社大学商学部教授,一橋大学名誉教授
東京大学文学部卒業,東北大学大学院文学研究科博士後期課程中退,米国シカゴ大学
Ph. D.(社会学).
専攻は組織社会学,社会調査方法論.
東北大学助手(文学部),茨城大学助教授(人文学部),一橋大学助教授・同教授(商学部)
(2000–01 年プリンストン大学客員研究員,2013年オックスフォード大学ニッサン現代日本
研究所客員研究員)2016年4月より現職.
主な著書にKamikaze Biker(University of Chicago Press, 1991),『現代演劇のフィールド
ワーク』(東京大学出版会,1999 日経・経済図書文化賞受賞,AICT 演劇評論賞),『本を
生み出す力』(共著,新曜社,2011),『組織エスノグラフィー』(共著,有斐閣,2011 経
営行動科学学会優秀研究賞),『社会調査の考え方[上][下]』(東京大学出版会,2015)など.

苅谷剛彦(かりや たけひこ)
オックスフォード大学社会学科およびニッサン現代日本研究所教授.
米国ノースウェスタン大学大学院でPh. D.(社会学)を取得.専門は社会学,現代日本社
会論.2009年9月まで東京大学大学院教育学研究科教授を勤めた.
主な著書に『階層化日本と教育危機』(有信堂,2001 大佛次郎論壇賞奨励賞受賞),『大衆
教育社会のゆくえ』(中公新書,1995),『教育の世紀』(弘文堂,2005 サントリー学芸賞
受賞),『教育と平等』(中公新書,2009),『イギリスの大学・ニッポンの大学』(中公新書
ラクレ,2012),『オックスフォードからの警鐘』(中公新書ラクレ,2017),など.

川嶋太津夫(かわしま たつお)
大阪大学高等教育・入試研究開発センター長(教授)
名古屋大学大学院で教育社会学を専攻.名古屋大学教育学部助手を経て,1993年に神戸大
学大学教育研究センターに助教授として赴任.神戸大学大学教育推進機構および大学院国
際協力研究科教授を経て,2017年より現職.また,独立行政法人大学改革支援・学位授与
機構客員教授,国立大学協会入試委員会専門委員,第9期中央教育審議会大学分科会臨時
委員(大学院部会,制度・教育改革WG)など.
現在の専攻分野は比較高等教育論.
主な研究成果としては,『大学改革の現在』(東信堂,2003),『大学のカリキュラム改革』
(玉川大学出版部,2003),『初年次教育:歴史・理論・実践と世界的動向』(丸善,2006),
『進化する初年次教育』(世界思想社,2018),『学習成果ハンドブック』(大学基準協会,
2018)(いずれも共著)などがある.

遠藤貴宏(えんどう たかひろ)
一橋大学経営管理研究科准教授.
一橋大学商学部卒業,英国カーディフ大学ビジネススクール Ph. D.
専攻は非市場戦略,批判的経営学,持続可能性と組織.
カーディフ大学,神戸大学を経て,2018年4月より現職.
近著にLegal structure, business organisations and lobbying: The Japanese publishing sector,
1990–2001, Business History, 60(4), 2018. The role of local accounting standard setters in
institutional complexity: “Explosion” of local standards in Japan, Accounting, Auditing &
Accountability Journal, 31(1), 2018 (coauthored with Matsubara S). The Layering of Meso Level
Institutional Effects on Employment Systems in Japan. British Journal of Industrial Relations,
56(3), 2018 (coauthored with Morris J & Delbridge R).

Robin Klimecki(ロビン・クリメッキ)
ブリストル大学講師(経営学)
マインツ大学(ドイツ)BA(社会学),英国ウォーリック大学MA(組織研究),英国カー
ディフ大学Ph. D.(経営学)
専攻は,組織論,批判的経営学,社会理論.
主著は,Klimecki, R. and Willmott, H., From Demutualisation to Meltdown: A Tale of Two
Wannabe Banks, Critical Perspectives on International Business, 5(1/2), 2009. Glynos, J.,
Klimecki, R. and Willmott, H., Logics in Policy and Practice: A Critical Nodal Analysis of the UK
Banking Reform Process. Critical Policy Studies, 9(4), 2015.

目次

はじめに

序章 不思議の国の大学「改革」 [佐藤郁哉]
 1. スーパーグローバル大学事業の顚末
   (1)世界級を目指す大学に対する「重点支援」の現実
   (2)実際の配分額と申請額のギャップ
   (3)全体予算の大幅な減額
   (4)「盛って」しまった事業計画のゆくえ
   (5)「ポンチ絵」で描かれる未来像と事業計画のギャップ
 2. 大学「改革」の迷走と混乱
   (1)過剰期待と過少支援の矛盾―口は出せるがカネは出せない
   (2) 混迷をきわめる「選択と集中」政策
      ―競争的資金獲得競レース走の迷走
   (3) ゲーム化する大学改革
      ―外国人教員と「外国人教員等」のあいだ
 3. 2つの視点,2つの国
   ―本書における基本的な問題関心と分析フレームワーク
   (1)大学改革の病理診断
   (2)「決定」と「実施」両面からの分析
   (3)鏡としての英国―国際比較の視点
 4. 本書の構成と各章の概要
   (1)演繹型の政策思考による政策形成―第1章
   (2)平成期30年間に及ぶ大学改革の迷走―第2章
   (3)「国際化」をめぐる大学現場の混乱と若手研究者たち―第3章
   (4)フランケンシュタイン的怪物としての評価事業と
      ジャーナル駆動型研リサーチ究―第4章
   (5)研究評価制度とREF-ability のプレッシャー―第5章
   (6)「慢性改革病」の総合診断
 
第Ⅰ部 大学と大学改革の病理診断

第1章 「大学性悪説」による問題構築という〈問題〉
     大学改革における言語技法の分析 [苅谷剛彦]
 1. 「大学性悪説」の誕生と変容
    ―埋め込まれた論理の根幹を問う
   (1)「変化への対応」という問題
   (2)方法としての正当化のレトリック
 2. 大学性悪説の変遷
   (1)1960,70年代の大学性悪説
   (2)海外からのお墨付き
   (3)永井道雄の卓見
 3. キャッチアップ「その後」の大学性悪説
   (1)2つの補助線
   (2)臨時教育審議会による時代認識の転換
   (3)キャッチアップ型近代化の終焉
   (4)変化の変節
   (5)個性,創造性,主体性の教育
 4. 「その後」のその後
   (1)新自由主義と小さな政府
   (2)大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」
      (1998年)
   (3)グローバル人材の育成と経済ナショナリズム
 5. 二重語法とエセ演繹型の政策思考
   (1)変化に対応するための自由化=市場化
   (2)評価と自己責任
 終わりに―批判的思考力と帰納型の思考

第2章 日本の大学は,なぜ変わらないのか? 変われないのか?
     4半世紀にわたる個人的体験を通して [川嶋太津夫]
 1. プロローグ
 2. 平成の大学改革のはじまり
   (1)改革の経緯
   (2)大学設置基準の改正―教育課程の側面
   (3)大学設置基準の改正―大学組織への影響
 3. 著者自身の体験からみる大学改革―初期段階の平成改革
   (1)神戸大学・大学教育研究センターへの着任
   (2)上有政策下有対策(上に政策あれば,下に対策あり)
     ―大学現場での「面従腹背」的対応
 4. 20世紀から21世紀へ―大学改革の加速
   (1)大綱化以降の教養教育(全学教育)を誰が担うことに
      なったか?
   (2)「21世紀答申」(1998)の衝撃
   (3)計画から政策誘導へ
 5. 大学教育に対するマイクロマネジメントの時代へ
   (1)将来像答申(2005)における「3ポリシー」の提言
   (2)学士課程答申(2008)と3ポリシーの明確化
   (3)「学士力」の提言
   (4)質的転換答申(2012)とマイクロマネジメントの強化
   (5)学習指導要領と化した審議会答申と補助金による拘束
   (6)中央教育審議会の変質
      ―マクロな観点からミクロな観点への移行
 6. 日本の大学は,なぜ変わらないのか,変われないのか?
   (1)ピースミール(部分的)でパッチワーク的(つぎはぎだらけ)
      な改革の弊害
   (2)大学のサイロ構造―さまざまなレベルでの「タコツボ」的状況
 7. エピローグ―大学は制度的組織か技術的組織か

第3章 大学の経営モデルと「国際化」の内実
     次世代研究者の揺れ動き [遠藤貴宏]
 1. 「国際化」は次世代研究者を育成できているのか
    ―本章で扱う問題
   (1)日英の大学の経営モデルに見られる違い
   (2)本章の焦点
   (3)本章の構成
 2. 経営モデルという観点からみた日英の大学
   (1)経営モデル
   (2)経営モデルの概要
   (3)英国の大学の経営モデル
   (4)日本の大学の経営モデル
 3. 典型層としての社会科学系若手研究者―調査概要
   (1)学問分野による違い(社会科学)
   (2)若手研究者への焦点
   (3)分析過程
 4. 若手研究者の〈3類型〉
   (1)旗振り型
   (2)脱皮型
   (3)逃げ切り型
 5. 類型間を揺れ動く人々
   (1)揺れ動きの概要
   (2)国際化を推進する要因:
      脱皮型→旗振り型,逃げ切り型→脱皮型のケース
   (3) 国際化を問い直す契機となる要因:
      旗振り型→逃げ切り型,脱皮型→逃げ切り型のケース
 6. 研究・教育の新たな評価軸の必要性と可能性
   (1)調査結果を振り返る
   (2)経営モデルと新しい評価軸のミスマッチをめぐる問題
   (3)既存の評価軸の問題・新たな評価軸の可能性
   (4)分業体制の可能性
 
第Ⅱ部 鏡としての英国

第4章 英国の研究評価事業
    口に苦い良薬かフランケンシュタイン的怪物か?
    [佐藤郁哉]
 1. ジャーナル駆動型研リサーチ究のすゝめ
 2. 英国における研究評価制度の概要
   (1)略史
   (2)国家的な評価事業の規模とコスト
   (3)評価手続きのあらまし
   (4)評価事業と包括的補助金(ブロックグラント)
   (5)研究活動の「公開通信簿」
   (6)評価点の実質的意義と象徴的意味
 3. 口に苦い良薬かフランケンシュタイン的怪物か?
   ―評価事業に対する評価
   (1)毀誉褒貶相半ばする評価事業
   (2)公的研究資金に関する説明責任
   (3)研究戦略の明確化と実績主義
   (4)学術研究の質と幅
   (5)「評価に対する評価」の実証的根拠
   (6)「出来レースにおける熾烈な競争」のパラドックス
 4. 研究評価事業による選択と集中―「出来レース」の構造
   (1)大学タイプ別の研究補助金のシェア
   (2)上位校と下位校における補助金構成比の違い
   (3)大学間の機能分化―研究大学と教育中心大学
   (4)補助金算出上の重み付けの変遷
   (5)マタイ効果
      ―持てる者はさらに豊かに,持たざる者はさらに貧しく
 5. 「赤の女王効果」と競争の激化
   (1)上・中・下位校が抱えるそれぞれの事情
   (2)「レースから下りる」という選択肢
   (3)レッド・クイーン効果
   (4)REF-able な研究成果を生産できるREF-ableな研究者
 6. 「通信簿」としてのREFランキングと策略的対応(ゲーミング)
   (1)研究評価事業と大学ランキング
   (2)ゲーミング―上有政策下有対策
   (3)研究評価における「いたちごっこ」
   (4)「RAE・REF ゲーム」の二重構造
 7. 商学・経営学分野の事例から―「論文化」とその背景
   (1)商学・経営学分野の特徴
   (2)大学側からの期待とプレッシャー
   (3)ジャーナルリスト・フェティシズム
 8. 論文掲載至上主義と学術研究の均質化
   (1)論文シフトと研究内容の狭隘化
   (2)研究業績の均質化
 結語―戦略と策略のあいだ

第5章  個人的体験としてのREF
   [ロビン・クリメッキ(Robin Klimecki)]
 1. 生い立ち
   (1)大学入学前まで
   (2)学部時代
   (3)大学院時代
 2. 英国とドイツの比較
   (1)両国の大学制度の類似点と相違点
   (2)2つの教育制度を経験してきたことの意味
 3. 研究環境―教育,大学行政,助成金
   (1)教育負担
   (2)大学院教育
   (3)大学行政
   (4)研究予算
 4. REF
   (1)一般的な影響
   (2)ジャーナル論文,ジャーナルリスト,モノグラフ
   (3)REF の費用対効果(コスト&ベネフィット)
 まとめ

補論  REF2021  新たなルールと新たなゲームの可能性[佐藤郁哉]
 1. 「REFugee(REF難民)」の誕生
 2. ルール変更とその背景
   (1)新旧ルールの概要
   (2)教員スタッフの選抜基準
   (3)研究者1 人あたりの業績点数
   (4)業績の可搬性
 3. ゲーミング対策としてのルール変更とその限界
   (1)ルール改定の根拠としてのスターン報告
   (2)費用対効果とゲーミングの問題
   (3)新たな種類のゲーミング
 4. 「選択と集中」が引き起こしてきたさまざまな問題
   (1)研究評価事業の制度疲労とルール改定の方向性
   (2)全体最適を目指す「選択と集中」対 部分最適を目指す
      ゲーミング
   (3)さまざまなレベルの選択と集中

終章 蒙昧主義的教育行政を越えて [佐藤郁哉]
 1. 改革政策の最終診断
   (1)大学現場の困惑と混乱―改革政策の病い
   (2)脱連結と被植民地化―大学側の病い
 2. EBPM,PDCA,NPM
    ―3つの改革関連用語に見る症状と病因
   (1)EBPM という名のPBEM
   (2)「PDCA サイクル」の怪
   (3)NPM という名のNPMM
 3. 「 改革の自己目的化」の病理分析
   (1)改革関連用語の栄枯盛衰
   (2)自己目的化した処方箋
   (3)改革の自己目的化の落とし穴
 4. 蒙昧主義との訣別と真のEBPM の実現を目指して
   (1)実現可能な政策目標―「世界級の大学」で誰を幸せに
      したいのか?
   (2)借り物の改革用語とポンチ絵の呪縛からの脱却
   (3)子どもたちの未来のために「大人げない話」をする

引用文献
索  引
  事項索引
  人名索引
執筆者紹介
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