学術選書 073
異端思想の500年
グローバル思考への挑戦

大津 真作

四六・並製・366頁・税込 2,160円
ISBN: 9784876988730
発行年月: 2016/01
在庫あり

内容

マキアヴェッリ、スピノザ、ディドロなど、西欧近代には「永遠の人間観」にもとづいて既存の正統思想を批判し、時代を超える思考のグローバル化を試みたために、「異端」として排除されてきた思想家は少なくない。本書は西欧近代が誕生して以来500年のあいだに現れたオッカムからランゲに至る哲学、政治、経済、社会思想を環境に対する人間精神の果敢な挑戦としてとりあげ、現代に生きる発想の転換を迫る。

目次

はじめに

第1章 永遠の相の下に
    ギリシア人は神話を信じたか?
    比較と差別
    強力なのは身体
    人間の頭のなか
    想像力は欲望である
    コペルニクス的転回
    想像力の作用主
    自由と主体の結びつき
    存在と本質
    人間の本質
    必要は発明の母
    進歩と自由

第2章 宗教的思考からの人間精神の解放
 1 オッカムの生涯と神学論争
    薔薇は一般名詞
    時代が待っていた人物
    オッカムの剃刀
    理性と信仰の分離
    異端嫌疑
    代置理論
    代置の危険な罠
    唯名論的聖餐論
    司式者と奇蹟の多発
    正統教義における聖餐論
    オッカムの聖餐解釈
    清貧論争
    ドルチノ派異端
    千年王国の実現
    オッカムの破門
    宗教改革の先駆者
    晩年のオッカム
 2 オッカムの教会制度改革構想
    信仰に至る理性の道
    信仰に至る聖書の道
    信仰に至る最後の道
    ローマ法王も無謬ではない
    法王権力の限定
    信仰におけるマルチチュード
 3 パドヴァのマルシリウスと帝権主義
    ウィリアムの回想
    時代が待っていたもうひとりの人物
    ルートヴィヒの宮廷顧問になるまで
    驚嘆すべき著作
    マルシリウスの演出
    マルシリウスとルートヴィヒ
 4 『平和の擁護者』について
    統治体の動力因
    人間の法
    聖書による教会論
    マルシリウス政治思想の特徴

第3章 異端の国家観の系譜—マキアヴェッリからスピノザへ
 1 政治学の宗教からの自立
    統治者たちが愛読した『君主論』
    密かなる政治的計画
    宗教改革の先駆者
    模範としてのローマ国家
 2 マルチチュード概念と国家契約説の否定
    少数者による多数者の支配
    マキアヴェッリの国家統治論
 3 『神学=政治論』におけるスピノザの国家観
    自然権としての思考の自由
    マルチチュードの力を実現する
    「舌」の自由の確立
    信仰の自由と真の宗教
    永遠の人間本性と自由
 4 『国家論』に見るオランダ政治
    『国家論』執筆の動機
    戦乱のなかの謎の行動
 5 オランダ共和制の瓦解とマルチチュード論
    貴族国家オランダ
    オランダ共和制崩壊の原因

第4章 植民地グローバリゼーション時代の世界史
 1 『両インド史』とレーナル
    啓蒙末期のベストセラー
    天才的編集者レーナル
    『両インド史』第三版の刊行と出版弾圧
    レーナルの亡命と帰還
 2 『両インド史』とディドロの寄与
    広大な地域に及ぶ世界史的叙述
    『百科全書』的テーマ
    ディドロの叙述の魅力
    ディドロの自然主義的人類学
 3 ディドロは『両インド史』をどう書いたか
    歴史と主体
    社会変革への呼びかけ
 4 ディドロの反植民地主義と奴隷解放論
    植民に関するディドロの原理
    ヨーロッパ・グローバリゼーションの罪悪
    植民地主義の告発
    奴隷貿易廃止論
 5 新しいスパルタクスをめぐるランゲとディドロ
    白いスパルタクス
    アンシアン・レジームの病根
    革命的宣言

第5章 蘇るランゲ
 1 忘れられた天才的社会理論家
    反啓蒙のジャーナリスト
    ランゲとマルクス
    自由と社会は両立しない
    社会が先か、奴隷制が先か
    狩猟社会の食料危機
    生きることはパンを食べること
    社会の発展と自由の主張
    モンテスキュー批判
    奴隷制廃止の原因
    東洋的専制の擁護
 2 ランゲの社会観
    真に自由な状態とはなにか
    自由の喪失と社会状態=奴隷状態
    社会の根本原理
    苛酷な競争社会
 3 近代の奴隷制
    法律の制定
    奴隷はなにを持っているか
    近代の奴隷制の特徴
    マルチチュードの叛乱権

第6章 思考する「力」に関する考察
    一元論を語る勇気
    カント二元論の謎とき
    欲望一元論への恐れ
    真理と「舌」
    真理は力である
    勇気は相対的なもの
    勇気の中身
    常識を打破する勇気
    真理に口なし
    恐怖はどこから?
    理性と自由の実現

おわりに

索引(事項・人名)

プロフィール

大津 真作(おおつ しんさく)

1945年大阪府に生まれる。
甲南大学名誉教授。
専門はヨーロッパ社会思想史。

主な著訳書
『啓蒙主義の辺境への旅』(世界思想社、1986)、『市民社会思想史I』(高文堂出版社、1996)、『市民社会思想史II』(高文堂出版社、1997)、『理性と愛』(高文堂出版社、2004)、『倫理の大転換』(行路社、2012)、『思考の自由とはなにか』(晃洋書房、2012)など。
ヴェーヌ『歴史をどう書くか』(法政大学出版局、1982)、ヴェーヌ『ギリシア人は神話を信じたか』(法政大学出版局、1985)、ジャルダン『トクヴィル伝』(晶文社、1994)、フュレ『フランス革命を考える』(岩波書店、1989)、レーナル『両インド史 東インド篇』上巻(法政大学出版局、2009)、レーナル『両インド史 東インド篇』下巻(法政大学出版局、2011)、ランゲ『市民法理論』(近代社会思想コレクション、京都大学学術出版会、2013)、レーナル『両インド史 西インド篇』上巻(法政大学出版局、2015)など。