学術選書064
インダス文明の謎
古代文明神話を見直す

長田 俊樹

四六並製・208頁・税込 1,944円
ISBN: 9784876988648
発行年月: 2013/10
在庫あり

書評

『京都新聞』2013年10月20日、読書面
『日本経済新聞』2013年11月16日、文化面記事
『望星』2013年12月号、86-87頁、評者:丸山 純氏
『朝日新聞』2013年12月4日夕刊コラム「テーブルトーク」
『古代文化』Vol.66(2014年6月)、153-155頁、評者:小茄子川歩氏

内容

アーリヤ人侵入説,大河文明説,二大首都説……インダス文明はこれまで誤った「神話」に彩られてきた。最大の理由は,遺跡の発掘が難しく,モヘンジョダロとハラッパーの二つに依拠した解釈が横行してきたからだ。近年,新たな遺跡の発掘により従来の知見が続々と覆されている。多様な遺跡の実態を紹介しながら,最新のインダス文明像を描き出す。

目次

口 絵
はじめに

第1章 インダス文明とはなにか
1 分布と年代をめぐる議論
  分布
  年代
2 インダス文明都市と環境
  五大都市
  遺跡分布の集中地域
3 インダス文明の文化的特徴
  インダス文明の共通要素
  インダス印章とインダス文字
  インダス文明の多様性
4 インダス文明研究の歴史と課題
5 おわりに

第2章 モヘンジョダロ遺跡とハラッパー遺跡インダス文明に関する神話
1 モヘンジョダロ遺跡とハラッパー遺跡の訪問記
  わたしとパキスタン
  パキスタン考古局とパキスタン国立博物館
  モヘンジョダロ遺跡への道
  モヘンジョダロ遺跡博物館
  モヘンジョダロ城塞部
  ハラッパー遺跡
  「労働者の長屋」「円形作業場」「穀物倉」
2 モヘンジョダロ遺跡とハラッパー遺跡はどのように研究されてきたのか
  モヘンジョダロ遺跡およびハラッパー遺跡発掘史
  ウィーラーによるインダス文明神話
3 ハラッパー遺跡出土人骨をめぐる新しい研究
  インダス文明と暴力

第3章 パキスタンの砂漠地帯に広がるインダス遺跡涸れた川とインダス文明
1 パキスタン砂漠地帯の遺跡群をめぐる
  ガンウェリワーラー遺跡訪問
  タール砂漠に広がる遺跡群
  タール砂漠行
  コート・ディジー遺跡
  タルール・ジー・ビート遺跡
  タール砂漠にインダス文明遺跡を探る
2 失われた川とインダス文明遺跡の発見
  失われた川
  スタインによるサラスヴァティー川踏査
  ムガルのチョーリスターン遺跡踏査
3 大河なき大都市は成立するのか
  砂漠の中のインダス文明遺跡

第4章 ガッガル川流域を踏査するはたしてサラスヴァティー川は大河だったのか
1 ファルマーナー遺跡
  ファルマーナー遺跡の発掘
  ファルマーナー墓地
  ファルマーナー遺跡出土の印章
  新しい研究:カレーの起源
  種子の大きさと遺跡規模
2 ラーキーガリー遺跡
  インド最大のインダス文明遺跡、ラーキーガリー遺跡
  アジア一〇大危機文化遺産
  ラーキーガリー遺跡の新たな発掘調査
3 ガッガル川流域のインダス文明遺跡
  バナーワリー遺跡、クナール遺跡、ビッラーナー遺跡
  カーリーバンガン遺跡
4 「サラスヴァティー川」問題
  「サラスヴァティー川」問題とは
  古環境研究グループの調査
  砂丘の年代をはかる
  学会発表とその反応
  ヒンドゥー原理主義とインダス文明

第5章 ドーラーヴィーラー遺跡乾燥した「水の要塞都市」
1 ドーラーヴィーラー遺跡とは
  日本ではじめての新聞報道
  ドーラーヴィーラー遺跡発見
  ドーラーヴィーラー遺跡への道
2 ドーラーヴィーラー遺跡案内
  ドーラーヴィーラー遺跡訪問者センター
  貯水池
  城塞
  城塞北門
  城塞の庭
  墓地
  広場
  水路
  貯水池の役割
  二つの市街地
3 はたしてドーラーヴィーラーは「水の要塞都市」なのか
  水の要塞都市ドーラーヴィーラー
  モンスーンの水

第6章 カッチ県とその周辺の遺跡海岸沿いのインダス文明遺跡と流通
1 カーンメール遺跡
  発掘までの経緯
  城塞
  出土遺物
2 カッチ県とサウラーシュトラ半島に分布するインダス文明遺跡
  ジュニー・クラン遺跡
  スールコータダー遺跡
  シカールプル遺跡
  カッチ対岸の遺跡:バガーサラー遺跡、クンタシー遺跡
  新しい発掘:キルサラー遺跡
3 インダス文明におけるグジャラート州海岸沿い遺跡の位置づけ
  カッチ県とその周辺の小さな遺跡
  交易センターとしてのロータル遺跡
  インダス文明期の海水準

第7章 新しいインダス文明像を求めて
1 インダス文明ははたして大河文明か
2 インダス文明ネットワーク
  鉱物をめぐる産地・生産・流通ネットワーク
  流動性と遊牧民
  インダス文明とメソポタミア
  インダス文明と湾岸地域
  新しい研究:多言語多文化社会
  新しいインダス文明像

おわりに
参考文献

プロフィール

長田 俊樹 (おさだ としき)
 
総合地球環境学研究所名誉教授及び客員教授。
神戸市生まれ。北海道大学文学部卒。インド・ラーンチー 大学博士課程修了(Ph.D.)。国際日本文化研究センター助手、京都造形芸術大学教授を経て、2003年10月から2012年9月まで総合地球環境学研究所教授。専門は、言語学。
著書は、A Reference Grammar of Mundari(東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所)、『新インド学』(角川叢書)、『ムンダ人の農耕文化と食事文化:民族言語学的考察』(国際日本文化研究センター)、『インダス 南アジア基層世界を探る』(京都大学学術出版会、編著)など多数。翻訳・監訳書にベルウッド著『農耕起源の人類史』(京都大学学術出版会)、『危機言語:言語の消失でわれわれは何を失うのか』(京都大学学術出版会)。