学術選書060
天然ゴムの歴史
ヘベア樹の世界一周オデッセイから「交通化社会」へ

こうじや 信三

四六並製・336頁・税込 2,376円
ISBN: 9784876988600
発行年月: 2013/05
在庫あり

書評

『日経サイエンス』2013年8月号

内容

タイヤの原料として現代の交通化社会を支えるゴム。天然ゴムを産み出すヘベア樹(パラゴムノキ)は現在主に東南アジアと南アジアで栽培されているが,その原産地はアマゾンである。ゴムの樹はどのようにしてアマゾンを脱出し,世界中に広まったのか? また,それは人類の社会に何をもたらし,どこへ導くのか? ヘベア樹の移植と交通化の立役者であるウイッカム,フォード,マーカム,リドレイら4人の男の生き様を軸に,天然ゴムのダイナミックな歴史を生き生きと語る。

目次

まえがき

序章 天然ゴム前史
1 天然ゴムの樹ヘベアとその原産地
2 天然ゴムとヨーロッパ人との出会い
3 天然ゴムの樹ヘベアのオデッセイと「交通化社会」
4 本書の概要と「ゴムの木」へのコメント

第Ⅰ章 キナノキのプラント・イントロダクション ——ヘベア樹に先行したマーカムの試み
1 はじめに
2 南アメリカに自生するキナノキ
3 キュー植物園
4 時代の子,探検家マーカム
5 大英帝国インド省
6 キナノキのプラント・イントロダクション
7 キナノキ移植のその後とマーカム

第Ⅱ章 若きウイッカムとゴムとの出会い ——ニカラグア,オリノコ,そしてアマゾンへ
1 はじめに
2 ウイッカムの探検家への道:初めての熱帯はニカラグア
3 アマゾンと並ぶ大河オリノコの遡行
4 オリノコ河上流でのゴム樹のタッピング体験
5 リオ・ネグロ河からアマゾン本流の街マナウスへ
6 アマゾン河本流を下ってパラ(ベレン)へ

第Ⅲ章 ヘベア樹プラント・イントロダクションの始動 ——ウイッカムとキュー植物園・インド省の綱引き
1 はじめに
2 ヘベア樹のプラント・イントロダクション前史
3 アマゾンにおけるゴムブームの実情
4 サンタレンでのウイッカム一行
5 ウイッカムとキュー植物園・インド省のやりとり
6 私人ウイッカムへの公的な依頼状
7 ヘベア樹とウイッカム:アマゾンからの「脱出」は成るか?

第Ⅳ章 ヘベア樹のオデッセイ ——アマゾンからキュー植物園,そして南アジア・東南アジアへ
1 はじめに
2 タパジョス河流域でのウイッカムのヘベア種子集め
3 ウイッカムとヘベア種子:アマゾンからキュー植物園へ
4 ヘベア種子,キュー植物園で発芽し2700本の苗木に成長
5 ヘベア樹,キュー植物園からアジアへ
6 「クロス対ウイッカム論争」
7 ウイッカムによるヘベア樹のプラント・イントロダクション:総括

第Ⅴ章 ウイッカム,失敗に魅入られたプランター
1 はじめに
2 ヘベア後のウイッカム,クイーンズランドへ
3 ビクトリア王朝の最盛期,ウイッカムは英領ホンジュラスに
4 ウイッカム最後(?)のオデッセイはパプアニューギニアでの離別
5 晩年のウイッカム

第Ⅵ章 ゴム・プランテーションの確立とリドレイ
1 はじめに
2 アジアにおけるウイッカム樹の成長は?
3 若きリドレイ,アジアへ
4 リドレイとマレー半島のゴム・プランテーション
5 自転車,自動車産業の勃興

第Ⅶ章 ブラジルへ里帰りしたヘベア樹 ——フォードとフォードランディア
1 はじめに
2 イギリスの天然ゴム独占体制
3 機械工ヘンリー・フォード
4 自動車王ヘンリー・フォード
5 フォード社のアマゾン進出:天然ゴムの独占体制打破へ?
6 フォードランディアの悪戦苦闘
7 フォードランディアの終焉

第Ⅷ章 天然ゴムに魅せられた人々 ——この奇妙な植物資源の科学
1 はじめに
2 ゴム弾性:そのユニークな特性
3 天然ゴムと合成ゴム
4 原産地アマゾンでヘベア樹の「栽培」は可能なのか?
5 天然ゴムに魅せられた人々:ウイッカムとフォードをめぐって
6 おわりに

第Ⅸ章 21世紀における「交通化社会」と人類
1 はじめに:天然ゴムをめぐる現代史
2 19世紀にはじまった「交通化社会」への途
3 交通機関としての自動車の特異性
4 日本のクルマ事情:馬車の時代なしに自動車がやってきた!
5 21世紀の自動車とゴムタイヤ
6 人類のサステイナビリティにつながる「交通化社会」へ
7 おわりに

終章 天然ゴムの未来
1 はじめに:人類を取りまく環境と21世紀
2 21世紀における天然ゴムの需要と供給の関係
3 天然ゴムのリサイクル
4 アレルギー症問題
5 先端バイオ技術の適用
6 バイオ・セイフティ(Bio-safety)
7 おわりに

参考文献
事項索引
人名索引
図表一覧

プロフィール

こうじや 信三 (こうじや しんぞう)
 
1942年  大阪に生れる
1965年  京都大学工学部(高分子化学科)卒業 
1969年  京都大学大学院工学研究科博士課程(高分子化学専攻)中退 
同年   京都工芸繊維大学工芸学部(工業化学科)助手,(同 助教授を経て)
1991年  同 (物質工学科)教授 
1993年  京都大学化学研究所へ転任
2006年  京都大学名誉教授
同年から2009年  までマプア(Mapua)工科大学(フィリピン,マニラ),
マヒドン(Mahidol)大学理学部(タイ,サラヤ)客員教授を歴任

研究分野
高分子科学,特にゴム材料科学を中心にソフト・マターの構造と物性研究とその機能性材料への展開.