地域研究叢書17
境界の社会史
国家が所有を宣言するとき

石川 登 著

菊上製・360頁・税込 4,860円
ISBN: 9784876987443
発行年月: 2008/03
在庫あり
第3回 樫山純三賞 受賞

*推 薦*
 国境の民族誌がトランスナショナル・モダニティの実相を鮮明に描き出す。国境社会における密貿易、国際政治、民族の生成、非対称な労働移動、そしてロケーション・ワークの歴史的分析と現代的フィールドワークを通して、国家生成と資本主義の構造的理解にいたる優れた研究である。
アナ・ツィン(カリフォルニア大学 サンタクルーズ校)

 石川は、歴史学、人類学、社会学のアプローチを自由に駆使しながら、研究対象に切り込んでいく。本書は、最初から最後のぺージまでを貫く詳細な「厚い記述」と深く洗練された理論的洞察を同時に実現した類稀な研究である。
エリック・タグリアコッゾ(コーネル大学)

受賞

第3回 樫山純三賞 受賞

書評

『史學雜誌』第118編第2号、128-129頁、評者:坪井祐司氏
『地理学評論』第83巻第1号、117-120頁、評者:祖田亮次氏
『文化人類学』75-2、287-291頁、評者:永渕康之氏

内容

国境を生みだすのは紛争や国際政治というマクロな事象だけではない。ミクロな社会関係の連鎖と断絶によって「国家空間」は生成する。英国人青年による「領有」を契機に国家化されていくボルネオ国境地帯でのフィールドワークを通して、従来の国民国家論やナショナリズム論に強烈なジャブを送り、歴史学、社会学、地理学などに新たな分析枠組を付す。周縁に、そして境界にこそ「核」があるという、人類学からの斬新な提言。

目次

第一章 目的と方法
 国家・領域・国民
 国家の空間的契機
 マレー海域世界と国境
 国民国家へのアプローチ
 「国民」の不均衡な拡張
 フィールドワークとマイクロ・ヒストリー
 本書の構成

第一部 スルタンの辺境から国家の周縁へ

第二章 国家が所有を宣言する時
 国家空間をめぐる四つのプロセス
 国家と領有
 「曼陀羅」と「銀河系政体」
 国家が所有を宣言する時
 「無主の土地」の国有化宣言
 国家=最高地主と労働力動員
 ルンドゥ地区における農園開発
 労働組織化と複合社会
 華人資本家・苦力・阿片
 焼畑耕作民と国家
 マレー貿易商とココ椰子農園
 無主の土地から複合社会へ
第三章 国境の履歴
 フロンティアと国境線
 国家空間・想像・地図
 国境の内在化
 焼畑・阿片・家族
 焼畑耕作民と領域国家
 苦力の逃散
 マレー人家族と記憶
 領域とアイデンティティ
 森林産物の越境
 国家と社会の共鳴関係
第四章 ゴムとコンフロンタシ
 国家経済圏と国際レジーム
 東南アジアにおけるゴムの拡大
 チャールズ・ブルックとゴム生産
 ルンドゥ地区のゴム・ブーム
 国際ゴム協定(1934)とサラワク王国
 ゴム密貿易と国境社会
 基幹産業としての密貿易
 政治的フロンティアの誕生
 第二部へのプレリュード

第二部 国境線上の国家と村落

第五章 国家の臨界点
 護符とシャロット
 国境とトランスナショナル・エスノグラフィ
 テロック・ムラノー村の景観
 海のフロンティア
 テロック・ムラノーの誕生
 エンクレーブとしての農民社会
 国際政治と焼畑
 国家の臨界点
第六章 民族の周縁
 国家領域と社会集団
 民族と周縁化
 包摂と排除
 サラワク・マレー人とは誰か
 民族の出自と国家の出自
 国家と民族の周縁
第七章 村と国の境界
 国家領域とアイデンティティ
 民族の見えにくさ
 東漸する境界線
 儀礼的空間
 国境空間の国際的契機
 コンフロンタシとコミュニスト
 国家とロケーション・ワーク
 国家の歴史と村人の記憶
 サラワク独立とアハマッド・ザイディ
 アハマッド・ザイディの逃避行
 国家と民族の運動
 事件と構造
第八章 国家の浸透圧
 社会的フローと構造
 サラワク・マレー人とサンバス・マレー人
 開拓村タマジョの出現
 国境線上の村
 国境コミュニティの共生
 国家を超える互酬性
 国境の浸透圧
 労働と婚資
 隠れた緊張
 差異の連鎖
第九章 国境線の使い方
 ダトゥ岬再訪
 通貨危機と国境貿易
 インターフェイスとしての国境社会
 ジャラン・ティクスとジャラン・ガジャ
 メイドと材木
 工業フロンティアと国境
 国境空間の脱領域化
 開発ニッチとしての国境地帯
第十章 国家空間と権力
 組織的権力と構造的権力
 共鳴する国家と社会
 プロト・トランスナショナリズム
 フロンティアの資源化
 西カリマンタンの下部構造化
 私たちのトランスナショナリズム

補遺 テロック・ムラノーの環境依存型農業
 海から陸へ
 ケランガス林における焼畑
  1.下草刈りと森林の伐採(7月下旬〜9月初旬)
  2.火入れ(8月下旬〜9月中旬)
  3.播種:堀り棒ともみの投げ入れ(9月中旬〜10月初旬)
  4.除草
  5.収穫(3月初旬〜4月初旬)
 土地利用と焼畑生産
 テロック・ムラノーにおける商品作物生産
  1.ゴム
  2.カカオ
  3.胡椒
  4.ココ椰子
 焼畑耕作・換金作物・社会関係

あとがき
索  引

プロフィール

石川 登(いしかわ のぼる)
京都大学東南アジア研究所准教授,Ph.D.(人類学)
東京都立大学人文学部卒,ニューヨーク市立大学大学院修了
京都大学東南アジア研究センター助手,助教授を経て現職.

主要著書
Dislocating Nation-States: Globalization in Asia and Africa, Kyoto University Press (Copublication with Transpacific Press), 2005年(共編)
Flows and Movements in Southeast Asia: New Approaches to Transnationalism, Kyoto University Press (Copublication with Singapore University Press), 2008年(編)