「他者」たちの農業史
在日朝鮮人・疎開者・開拓農民・海外移民

安岡 健一

A5上製・356頁・税込 4,320円
ISBN: 9784876983865
発行年月: 2014/02
在庫あり

受賞

2014年度日本農業史学会賞
2015年度日本村落研究学会研究奨励賞

書評

『信濃毎日新聞』2014年5月28日付 文化欄 紹介記事
『図書新聞』2014年8月2日付、評者:藤原辰史氏
『農業と経済』2014年9月号、評者:岩崎正弥氏
『村落社会研究ジャーナル』No.42、評者:細谷亨氏
『経済史研究』第19号(2016年1月)、評者:松本武祝氏

内容

農民と言えば,代々その土地に定住した者,日本の農民と言えば日本人 これが歴史研究の前提であった.しかしそれは本当なのか? 在日朝鮮人, 疎開者,開拓農民,戦後の海外農業移民といった,農村にとって外部の存在すなわち「他所者」の視点から20世紀の日本社会の大変動を捉え,定住者の歴史観と違う農村像,日本を描く意欲作.

目次

序 章
第一節 「他者」という問いの設定
 (1)移動と定住が交差する現場としての地域
 (2)「日本」農業研究が周縁化したもの
 (3) 敗戦の再定位と時期区分
第二節 方法と構成——「国民国家論」と「他者」
研究ノートから 「不通線」——横光利一『夜の靴』

第一章 日本農村における民族の問題
第一節 農業と民族の結びつきを問いなおす——もう一つの農業問題
 (1)農村における朝鮮人と日本農業の「矛盾」——課題と方法
 (2) 近代世界における外国人農業労働者
 (3) 日本における中国人農業労働者の不在について
第二節 植民地支配開始後の日本農村における朝鮮人
 (1)日本農業の変容と農業労働者——第一次大戦後の農業・農村の変容
 (2) 朝鮮農業の変容——植民地農政と朝鮮農民の移動
 (3) 二つの変容の交差——朝鮮人農業労働者の登場
研究ノートから 「悪いかんとく」
 (4) 日本の「怒りの葡萄」——農民運動と民族問題
 (5) 日中戦争全面化と朝鮮人農業労働者
第三節 戦時期の農村変容と朝鮮人の「農耕転換」
 (1) 戦時農政と「朝鮮人農民問題」
 (2) 農業労働者から小作農民へ
 (3) 京都府における朝鮮人の郡部移動と「農耕転換」
 (4) 戦時末期の朝鮮人農民——京都府久世郡寺田村の事例
第四節 戦後在日朝鮮人農民層の形成
 (1) 日本人の引揚げと朝鮮人の帰還
 (2) 定着をめぐる対抗
第五節 帝国日本における「自己」と「他者」のはざまで

第二章 疎開・帰農・戦後開拓——「戦場化」する地域と疎開文化人
第一節 疎開——敗戦直前の大移動
 (1) 疎開経験を分析するということ
 (2) 貴司山治という作家
第二節 疎開以前の作家生活——「成功」と「挫折」の過程
 (1) 作家同盟の解体から「皇道主義」へ
 (2) 戦時下の作家生活——時代小説の「成功」
 (3)「作家生活の消滅」——最後の「転向」へ
第三節 戦時体制下の疎開・帰農政策
 (1) 戦時開拓の展開
 (2) 転廃業・疎開政策と帰農
 (3) 貴司山治の疎開
 (4) 戦時末期の地域社会
 (5) 疎開後の生活
第四節 崩捜から「復興」へ——文学運動・開拓農民組合運動へ
 (1)戦後開拓のはじまり
 (2) 胡麻郷への定着と新しい理想
 (3) 文化運動
 (4) 開拓農民運動
 (5) 京都府農地委員としての活動
第五節 疎開の終わり——「復興」の中の挫折
 (1) 京都府における戦後開拓
 (2) 疎開者の帰郷
 (3)「地下足袋事件」と開拓政策の転換
 (4) 疎開地とのつながり
 (5) 疎開者の生から見えるもの——未完の貴司山治自伝

第三章「境界」を生きた農民たち——満洲開拓から戦後開拓へ
第一節「国民の精神的復員」再論
第二節 国家による引揚開拓農民対策
 (1) 戦後開拓政策と満洲開拓関係官僚
 (2) 全国的な当事者団体の設立
第三節 戦後地域社会と引揚者
 (1) 地域における引揚者問題
 (2) 引揚者たちの政治
第四節 開拓農民の天皇経験——戦後巡幸と新たな「日本農民」の形成
 (1) 人びとにとっての巡幸という問題
 (2) 1947 年の関西巡幸
第五節 引揚開拓農民による戦後入植
 (1) 農村部における引揚者——寺田村・城南農工場を事例に
 (2) 原谷地域と入植者
第六節 定着と沈黙——引揚開拓農民と戦後日本
研究ノートから 「赤い引揚者」の時代——「国民」と「階級」と

第四章「他者」となる在外日本人——戦後農地改革と移民
第一節 戦後農地改革のトランスナショナル・ヒストリー
第二節 農地改革における在外日本人問題の経過
 (1) 農地改革の概要
 (2) 農地改革における在外日本人問題の経過
第三節 移民たちの対応——カリフォルニアを中心に
 (1) 在米不在地主協議会の結成
 (2) 買収の原則をめぐる混乱
 (3) 日系人メディア・運動における不在地主運動の位置づけ
第四節「皇国の海外代表」か「寄生地主」か——所有と居住のむすびつき
研究ノートから ホノルルからの訴願

第五章 土地に根付こうとする人びと——戦後海外農業移民行政と農民
第一節 戦後移民と農業・農村問題
 (1) 戦後移民の概要
 (2) 政策に向き合う人びと
第二節 戦後農村「人口問題」の展開
第三節 海外移民行政の機構と人的系譜——1954年閣議決定まで
第四節 移民送出の論理とその政策
 (1) 海外移住法案制定過程にみる移民の定義をめぐって
 (2) 全国拓殖農業協同組合連合会の設立をめぐって
第五節 農民は移民行政をどう受けとめたか
第六節「人口」と人びとのあいだ

終 章
第一節 移民・国家・農村
第二節 異種混淆性か,帝国の秩序か
第三節「断片化された歴史」からの解放——今後の課題

引用文献一覧
謝辞——あとがきにかえて
索 引

プロフィール

安岡健一(やすおか けんいち)
飯田市歴史研究所 研究員
1979年 兵庫県神戸市生まれ
2004年3月 京都大学農学部 卒業
2009年3月 京都大学大学院農学研究科博士後期課程 研究指導認定退学
2010年4月 日本学術振興会特別研究員PD(人文学)
2011年9月 京都大学博士(農学)取得
2013年4月 飯田市歴史研究所 研究員