農本思想の社会史
生活と国体の交錯

岩崎 正弥

菊上製・368頁・税込 4,194円
ISBN: 9784876980390
発行年月: 1997/02
在庫なし

書評

『日本史研究』431号、評者:玉真之介氏

内容

これまでの農本思想研究は、日本ファシズム・イデオロギーとの関連でとらえるか、農本主義者のライフ・ヒストリーから内在的に追求するかに分断されていた。本書はこうした二極化した農本思想のとらえ方を批判的に見直し、<生活世界>というキー概念を基底に、自然委任→社会創出→国体依存と展開されるその実態を克明に分析する。

目次

序章  課題と方法
  第一節 課題
  第二節 分析視角と構成

第一部 大正期「<自然>委任型」農本思想
第1章 帰農思想の特質
  第一節 帰農の背景と帰農への批判
  第二節 新たな生活世界の創造
  第三節 一五年戦争下の帰農生活者
第2章 江渡狄嶺の「農行」思想
  第一節 狄嶺の帰農
  第二節 <場>と<行>の思想
  第三節 狄嶺と国体・天皇・戦争
第3章 石川三四郎の「土民生活」
  第一節 「土民生活」の源泉
  第二節 一五年戦争下の石川三四郎
  第三節 「土民生活」と農本主義

第二部 昭和恐慌期「<社会>創出型」農本思想
第4章 農本連盟の歴史的位置とその思想
  第一節 昭和恐慌期の農村
  第二節 農本連盟の結成
  第三節 農本連盟の<地域社会>構想をめぐって
第5章 規範と自治の<地域社会>構想
  第一節 岡本利吉の規範社会構想
  第二節 権藤成卿の自治社会構想
  第三節 岡本と権藤における<地域社会>構想の歴史的意味
第6章 農本主義運動、その理念と現実との緊張
  第一節 農本主義運動の勃興
  第二節 農本主義運動の活発化のなかで
  第三節 農本主義運動の終息
  第四節 「<社会>創出型」農本思想の変質

第三部 戦時期「<国体>依存型」農本思想
第7章 総力戦体制下の農本思想
  第一節 「<国体>依存型」農本思想の特質
  第二節 農政イデオローグの葛藤
  第三節 戦時下農民文学の視線
  第四節 戦時下の農本主義運動
  第五節 「<国体>依存型」農本思想と戦時下農村厚生運動
第8章 戦時下農村保健運動の歴史的意味
  第一節 人的資源論と厚生運動
  第二節 戦時下の国民健康管理と農村
  第三節 滋賀県湖北地域における戦時下農村保健運動
  第四節 戦時下農村保健運動の特質

第9章 農民道場の「訓育」実態
  第一節 藍野塾の設立とその「訓育」内容
  第二節 農民道場生の意識構造334
  第三節 戦時下農村厚生運動の歴史的意味をめぐって
終章 農本思想の歴史的・現代的意味
  第一節 農本思想の変質
  第二節 農本思想と生活世界
  第三節 農本思想の通説批判

あとがき

プロフィール

岩崎正弥(いわさき まさや)

現 職:愛知大学経済学部専任講師(地域経済論)
1961年12月 静岡県生まれ。
1984年 3月 京都大学農学部農林経済学科卒業.。
1995年 1月 京都大学大学院農学研究科農林経済学専攻(農学原論講座)博士課程修了。京都大学博士(農学)。
京都大学研修員、龍谷大学非常勤講師などを経て現職。

主要論文:
「『帰農農本主義』の歴史的意味」『社会思想研究』第16号、1992年。
「戦時下の農村保健運動の実態―滋賀県湖北地域を事例として―」『歴史評論』第536号、1994年2月、など。