プリミエ・コレクション 84
物語世界への没入体験
読解過程における位置づけとその機能

小山内 秀和

A5上製・194頁・税込 3,024円
ISBN: 9784814000838
発行年月: 2017/03
在庫あり

内容

物語を読みながら,あたかも自分が主人公になったようにその世界に没頭する。本好きと言われる人なら,大抵経験したことのある体験には,人が生きる上でどんな意味があるのだろう。他者を慮る心,ひらめきや想像力,表現力など,読書と社会的能力の関わりを知る上での定量的データを集める手法を初めて提案する。〈読書を科学する〉方法を探る意欲作。

目次

はじめに
本書を読む際の注意点

第1章 「物語」を読むという行為
 1―1 人間と物語のかかわり
    1―1―1 人間と物語の密接な関係
    1―1―2 「物語」とは何か
 1―2 物語を読むという体験に迫る
    1―2―1 私たちはなぜ物語を読むのか
    1―2―2 物語を読むとはどのような体験なのか
    1―2―3 物語世界への没入
    1―2―4 本書の構成

第2章 物語への没入体験とはどのようなものか
 2―1 物語読解の認知的過程
    2―1―1 物語を理解するプロセス
    2―1―2 物語理解とは「状況モデル」を心の中に構築すること
    2―1―3 状況モデルとは「物語世界」である
    2―1―4 物語理解は物語読解過程の一部である
 2―2 物語読解における没入体験に迫る
    2―2―1 「状態」と「特性」
    2―2―2 催眠感受性と没入性
    2―2―3 読みへの没頭
    2―2―4 物語世界への移入仮説
    2―2―5 フロー体験
    2―2―6 登場人物への同一化
    2―2―7 共感と感情移入
 2―3 物語への没入体験の全体像
    2―3―1 没入体験を統合的に捉える試み
    2―3―2 没入体験を構成する六つの要素

第3章 没入体験の「特性」を測る
 3―1 没入体験の日本語尺度を開発する
    3―1―1 没入体験を「尺度」で測る
    3―1―2 没入体験の「特性」を測る尺度は少ない
    3―1―3 尺度の信頼性と妥当性を担保する
    3―1―4 没入の「特性」を測れるLRQ
 3―2 文学反応質問紙の予備調査(研究1)
    3―2―1 研究1の調査の目的
    3―2―2 LRQを翻訳する
    3―2―3 LRQ原尺度の妥当性
    3―2―4 原尺度から項目を選抜する
    3―2―5 予備調査の結果の考察
 3―3 日本版文学反応質問紙の本調査(研究2)
    3―3―1 LRQ―Jはどのような尺度と関連するか
    3―3―2 調査の概要
    3―3―3 LRQ―Jの因子構造
    3―3―4 LRQ―Jの信頼性
    3―3―5 LRQ―Jと他の尺度との関連
    3―3―6 LRQ―Jの信頼性と妥当性は示されたか

第4章 没入体験は読書行為とどう関連するか
 4―1 没入体験と文学的体験
    4―1―1 物語への没入体験を読書行為に位置づける
    4―1―2 「文学的体験」とは何か
    4―1―3 没入体験と文学的体験の関係
 4―2 物語への没入と読書習慣
    4―2―1 没入体験と読書習慣
    4―2―2 文学的体験と読書習慣
 4―3 女子大学生を対象とした読書活動の調査(研究3)
    4―3―1 調査の概要
    4―3―2 LRQ―Jと余暇活動の関連
    4―3―3 関連性を詳細に分析する「構造方程式モデリング」
    4―3―4 調査結果から何が分かるか
 4―4 一般社会人を対象とした文学的体験と読書習慣の調査(研究4)
    4―4―1 没入体験や読書活動の男女差
    4―4―2 批判的に考える傾向と没入体験
    4―4―3 調査の概要
    4―4―4 調査の結果得られたこと
    4―4―5 調査結果からいえること

第5章 没入体験の「状態」を測る
 5―1 没入の状態を測定する「移入尺度」
    5―1―1 没入体験のもう一つの側面
    5―1―2 没入体験の「状態」を捉える
    5―1―3 物語への移入―イメージモデル
    5―1―4 移入尺度と移入尺度短縮版
 5―2 移入尺度日本語版の作成とウェブ調査による検討(研究5)
    5―2―1 調査の目的
    5―2―2 調査の概要
    5―2―3 移入尺度の確証的因子分析
    5―2―4 移入尺度の短縮版を作成する
    5―2―5 日本語版移入尺度の性質
 5―3 日本語版尺度の妥当性を検討するための紙とペンを用いた調査(研究6)
    5―3―1 移入尺度の妥当性を検討する
    5―3―2 紙とペンによる調査の必要性
    5―3―3 調査の概要
    5―3―4 結果の分析
    5―3―5 移入尺度の妥当性
    5―3―6 どちらの移入尺度を用いればよいのか

第6章 没入体験が物語理解で果たす役割
 6―1 物語の読みと没入体験の関係
    6―1―1 没入体験と物語理解
    6―1―2 物語理解過程のイメージと没入体験に関連はあるか
    6―1―3 物語理解過程と共感の関係性
    6―1―4 物語理解過程を実験によって明らかにする
 6―2 没入体験が物語読解過程に及ぼす効果に関する実験(研究7)
    6―2―1 実験の目的
    6―2―2 実験の概要
    6―2―3 読解時間と感情価の分析
    6―2―4 没入体験は効果が見られたか
 6―3 没入の教示が物語読解過程に及ぼす効果に関する実験(研究8)
    6―3―1 教示によって没入の効果はみられるか
    6―3―2 実験の概要
    6―3―3 読解時間と感情価の分析
    6―3―4 教示によって没入の効果が表れた

第7章 読書プロセスのなかでの「物語への没入体験」の位置づけと役割
 7―1 これまでの研究が示す「没入体験」の実像
    7―1―1 本書の目的と各研究の関係
    7―1―2 没入体験の特性と状態は量的に測定できる
    7―1―3 没入体験と関連する心理特性
    7―1―4 没入体験は文学的体験を支えている
    7―1―5 没入体験は読書の動機づけとして機能する
    7―1―6 没入体験は物語理解を促進する
 7―2 物語読解過程に没入体験を位置づける
    7―2―1 読みのプロセスに没入はどう関与するのか
    7―2―2 物語読解において没入体験が果たす役割
    7―2―3 新しい仮説モデル:「物語没入―読解モデル」
    7―2―4 物語没入―読解モデルで説明できる読解過程
 7―3 心理現象の一つとしての「物語への没入」

第8章 「物語への没入」のこれから
 8―1 本書の研究がもつ学術的意義
    8―1―1 「物語」を体験するメカニズム:認知心理学への貢献
    8―1―2 物語と社会とをつなぐ:社会心理学や対人理解の研究への貢献
    8―1―3 「実験文学」の構築に向けて:心理学以外の学問領域への貢献
    8―1―4 今後の研究へ向けての課題
 8―2 物語研究は実践や社会でどう役立つか
    8―2―1 没入体験の解明が教育に与える示唆
    8―2―2 物語研究を活かした心理学的な支援の可能性
    8―2―3 読書活動の普及に向けて
 8―3 おわりに

謝  辞
本書の内容と公刊された論文・学会発表との対応について
引用文献
索  引

プロフィール

小山内 秀和(おさない ひでかず)
文教大学大学院人間科学研究科修士課程修了。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。
博士(教育学)。臨床心理士。現在,浜松学院大学現代コミュニケーション学部講師。
専門は,教育心理学,認知心理学,発達心理学。