再生可能エネルギー政策の国際比較

植田和弘・山家公雄 編

A5上製・336頁・税込 3,780円
ISBN: 9784814000654
発行年月: 2017/02
在庫なし
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書評

『エネルギーフォーラム』2017年4月号
『電気新聞』2017年4月7日付
『日刊工業新聞』2017年4月24日付
『公明新聞』2017年4月24日付 読書面
『日経エコロジー』2017年5月号

内容

欧米では,政策の強力な牽引力で再生可能エネルギーが導入されている。しかし日本では遅々として進まない。既存事業者の政治的経済的利害ももちろんあるが,そもそも日本で流通する情報には,誤解や不完全なものが多い。系統安定化問題,FIT(固定価格買取制度)の有効性,発電コスト,自治体の主体性や合意形成問題など,日本ではネガティブな材料として語られる諸論点に,欧米の事例を具体的に示すことで反証し,日本の政策的積極性を求める。環境経済と再生可能エネルギー論でわが国をリードする研究者,政策推進者,実務家が一堂に会した最新の政策論

目次

はじめに [山家公雄]

第Ⅰ部 欧米諸国の再生可能エネルギー政策

第1章 世界の温暖化対策と再エネ政策を概観する [内藤克彦] 
 1-1 欧州等の温暖化対策の出発点
 1-2 欧・米・日のエネルギー起源温室効果ガス排出の推移にみる発電部門の位置づけ
 1-3 欧州の温暖化対策における再エネの位置づけ
    1 Energy Road Map 2050
    2 目標達成のための障害と解決策
 1-4 デンマークの事例
    1 国情
    2 エネルギーの構造
    3 デンマークの温室効果ガスの排出推移
    4 政策と今後の削減目標
    5 温暖化対策の中でのエネルギー分野のシェア

第2章 ドイツの再生可能エネルギー推進策の現状と方向 [山家公雄]
 2-1 再生可能エネルギー大国ドイツの軌跡と普及要因
 2-2 2014年再エネ法改正の検証―固定価格買い取り制度の精神は不変
    1 EEG2014の印象と背景
    2 「直接取引」の強化
    3 入札制度の試験的実施
    4 ブリージングキャップ制度の拡張
    5 賦課金適用ベースの拡大
    6 2014年改正の検証
    7 補論 EEG2016案の概要

第3章 イギリスの再生可能エネルギー政策 [長山浩章]
 3-1 英国における再生可能エネルギーの現状
 3-2 英国における電力セクター改革
    1 英国における電源構成の現在と将来
    2 英国における電力セクター改革と再生可能エネルギー導入促進策のこれまでの流れ
 3-3 英国における再生可能エネルギーへの投資促進策
    1 電源別投資促進策
    2 再生可能エネルギーへの投資促進策
    3 ROC(再生可能電力購入義務証書制度)
    4 FIT
    5 徴収調整フレームワーク
    6 インバランス政策の変更の再生可能エネルギーに与える意味
    7 大規模再エネプロジェクトへの投資契約
    8 FIT-CfD
    9 英国における新たな動き

第4章 再生可能資源国家・アイスランドの緑化熱電戦略による応戦 [加藤修一]
 4-1 はじめに――再生可能資源国家・アイスランドの意思
 4-2 EUエネルギー指令とアイスランドのエネルギー政策
    1 EUエネルギー連合に見る戦略――「Road Map 2050」・「EESS」とアイスランドの対応
    2 EU指令・決定とアイスランドのエネルギー政策
 4-3 アイスランドのエネルギーの基本諸元と特色
    1 第一次エネルギーと自給率――教訓となったオイルショック
    2 アイスランドの再エネ政策――膨大な再生可能資源の潜在量と課題
 4-4 アイスランドの再生可能エネルギーの特性と電熱展開
    1 膨大な潜在量をもつアイスランドの再生可能エネルギー
    2 永続的な地球の熱資源を活用する熱政策
    3 大量で安価な電力と立地する多消費産業――再生可能資源の適正利用と威力
    4 安価で安定した信頼できる電力――近隣EU諸国の産業・家庭用電気料金の価格
    5 CO2の環境負荷が小さく高品質――低炭素社会の構築に寄与
 4-5 IceLink事業による応戦――アイスランドの孤立系統の克服
    1 再エネの最大導入に向けた国際連系線の強靭化戦略
    2 アイスランドの大規模貯水池型水力発電の柔軟メカニズム――英国の安定装置
    3 アイスランドと英国間の国際連系線等の電気料金価格の比較
    4 IceLink事業に関する国民的議論と事業リスク等と提案
 4-6 緑化電力による低炭素社会の構築――先導的な「モデル社会」による応戦
    1 緑化電力と急速な脱炭素化
    2 EUのHorizon 2020とアイスランドの水素社会への道
    3 アイスランド仕様の誇るべき“現実”と太陽地球経済の端緒
 4-7 FUKUSHIMAの後に

第5章 米国の再生可能エネルギーの導入状況と開発促進政策 [飯沼芳樹]
 5-1 米国における再生可能エネルギーの位置付け
 5-2 再生可能エネルギー促進策
    1 PURPAのQF
    2 再生可能エネルギー利用割合基準(RPS)
    3 多様な資金支援措置
    4 ネットメータリング(NEM)

第Ⅱ部 再生可能エネルギーの課題と論点

第6章 系統連系問題 [安田陽]
 6-1 はじめに――世界と日本の情報ギャップ
 6-2 系統連系問題の技術的考察
    1 「バックアップ電源」と「柔軟性」
    2 蓄電池は最初の選択肢ではない
    3 出力予測技術と系統運用・市場設計との組み合わせ
 6-3 系統連系問題の政策的課題
    1 「原因者負担の原則」と「受益者負担の原則」
    2 「ディープ方式」と「シャロー方式」
    3 透明かつ非差別的なルール
    4 再生可能エネルギーの「接続可能量」と接続制約
 6-4 系統連系問題の市場的課題
    1 メリットオーダー曲線とVREの優先給電
    2 市場メカニズムによる系統運用
 6-5 おわりに――不透明で差別的なルールの改善こそ

第7章 日本の再生可能エネルギー政策の評価と課題
    ――再生可能エネルギー固定価格買取制度の改正をふまえて [高村ゆかり]
 7-1 日本における再生可能エネルギーの位置
 7-2 FIT法改正の重要事項
    1 認定制度の見直し
    2 買取価格設定方法の変更
    3 買取義務者の送配電事業者への変更
    4 エネルギー多消費事業者に対する賦課金の減免制度の見直し
 7-3 今回のFIT制度変更の評価
 7-4 再エネのさらなる拡大のための課題
    1 再エネ目標の引き上げと2030年をこえる再エネ長期目標の明確化
    2 再エネの大規模導入を可能にする系統対策
    3 再エネ需要の拡大
 7-5 むすびにかえて

[コラム]固定価格買取制度(FIT)の設計に関する論点 [小川祐貴]
 
第8章 発電コスト分析から見えてくるもの [稲澤泉]
 8-1 モデルプラント方式による発電コスト分析の概要
    1 モデルプラント方式の概要
    2 LCOEの役割
    3 最新の発電コスト分析における前提条件と検証結果
 8-2 電力市場の環境変化とLCOE計量手法の進化
    1 電力市場の環境変化
    2 LCOEの計量手法の進化
 8-3 LCOEによる分析手法の評価と課題
    1 評価
    2 課題
    3 今後の方向性

第9章 自治体と分散型電源 [中山琢夫]
 9-1 なぜ,再公有化か
 9-2 ドイツにおける都市公社新設の実態
    1 新設された都市公社・村公社の場所とクラスター
    2 新設された都市・村公社の自治体人口規模
    3 新設都市・村公社の法人形態
    4 都市・村公社新設の地域偏在性
    5 新設都市・村公社の所有者
    6 新設都市・村公社の設立年
 9-3 再公有化の概念とその目標

第10章 再生可能エネルギーの社会受容性と制度設計 [尾形清一] 
 10-1 再生可能エネルギー量的拡大に当たっての社会的制約条件
 10-2 再生可能エネルギーと社会受容性
    1 再エネの課題群と地域からの反発
    2 陸上風力の問題――「NIMBY」or「PIMBY」
 10-3 再エネの社会受容性に基づく政策と制度設計
    1 再エネの社会受容性の理論と政策
    2 再エネの長期的「便益」と立地地域のリスク
    3 分配的正義に基づく事業と政策
    4 地域資源を活かすための地方自治体の役割と条例制定
    5 手続的正義に配慮したコミュニケーション
    6 手続的正義と土地利用計画の策定
 10-4 地方自治体の責任と役割

終章 日本の再エネ政策と本書の関わり [山家公雄]
 1 日本も「エネルギー転換」しつつある
 2 自由化推進策と再エネ普及策の共通性
 3 最近の再エネ施策は適切か
 4 日本の現状を踏まえた各章の総括
 5 エネルギー神話は神話になった
 6 最重要政策としての環境・エネルギー政策

おわりに [山家公雄]

プロフィール

■編著者
植田和弘(うえた かずひろ)
1952年生まれ。京都大学大学院経済学研究科教授。経済学博士。工学博士。専門は環境経済学。環境問題を通じて工学から経済学へ。「どうなるかではなく,どうするか」をモットーに持続可能な発展について研究している。東日本大震災と福島原発事故をうけて,科学・技術と社会の関係や公共政策の学術的基盤についてもあらためて関心を抱いている。大阪府市エネルギー戦略会議会長,コスト等検証委員会委員を務めた。

山家公雄(やまか きみお)
1956年生まれ。京都大学大学院経済学研究科特任教授。エネルギー戦略研究所所長,東北公益文科大学特任教授,山形県総合エネルギーアドバイザー,豊田合成㈱取締役を務める。東京大学経済学部卒業。日本政策投資銀行エネルギー部次長,調査部審議役等を経て現職。第27回エネルギーフォーラム賞受賞。著書に『オバマのグリーンニューディール』(日経新聞出版社),『再生可能エネルギーの真実』(エネルギーフォーラム),『ドイツエネルギー変革の真実』(エネルギーフォーラム)等多数。

■著者
飯沼芳樹(いいぬま よしき)
一般社団法人 海外電力調査会調査部門長。
1951年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程前期修了。州立ハワイ大学大学院・東西センター資源システム研究所でPh.D.(資源経済学)取得。
主な著作に,Scale Economies, Technical change and Capacity factor: Economic Analysis of Thermal Power Generation in Japan, Ann Arbor, MI, UMIなど。

稲澤 泉(いなさわ いずみ)
京都大学大学院経済学研究科エネルギー政策共同研究講座特任教授。
1960年生まれ。京都大学地球環境学舎博士後期課程修了。博士(地球環境学)。
専門は発電コスト検証,環境政策過程論。主な著作に,『環境政策統合』(共著,ミネルヴァ書房,2013年)など。

尾形清一(おがた せいいち)
京都大学大学院経済学研究科再生可能エネルギー経済学講座特定助教。
1977年生まれ。立命館大学大学院政策科学研究科博士後期課程修了。博士(政策科学)。専門は公共政策学・環境政策論・エネルギー政策論
主な著作に,『再生可能エネルギーのリスクとガバナンス』(共著,ミネルヴァ書房,2015年),『地域の資源を活かす再生可能エネルギー事業』(共著,金融財政事情研究会,2014年)。

小川祐貴(おがわ ゆうき)
株式会社イー・コンザル 研究員,京都大学大学院地球環境学舎博士後期課程在学中。
1990年生まれ。京都大学大学院地球環境学舎修士課程修了。修士(地球環境学)。研究テーマは分散型エネルギー資源が地域経済に与える影響について。自治体のエネルギー・環境政策の策定支援にも関わる。地域主体が自らエネルギーの分野に参入することが,地域にとって経済的にどのようなメリットがあるのかを定量的に示す「地域付加価値創造分析」に取り組む。

加藤修一(かとう しゅういち)
京都大学大学院経済学研究科特任教授。エネルギー戦略研究所・シニアフェロー。
1947年生まれ。北海道大学大学院地球環境科学研究科修了。学術博士(地球環境科学)。小樽商科大学教授を経て参議院議員を3期18年,環境副大臣等歴任。「バイオマス活用推進基本法」,「雨水利用推進法」,「気候変動対策推進基本法」等の議員立法,自然エネルギー促進議員連盟を有志と創設しその事務局長,「自然エネルギー発電促進法」の立法化などに取り組む。

高村ゆかり(たかむら ゆかり)
名古屋大学大学院環境学研究科教授。
京都大学法学部卒業。一橋大学大学院法学研究科博士課程単位修得退学。専門は国際法・環境法。静岡大学助教授,龍谷大学教授などを経て現職。総合資源エネルギー調査会(経済産業省)基本政策分科会長期エネルギー需給見通し小委員会委員・再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会委員,同省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会委員,調達価格等算定委員会委員,中央環境審議会(環境省)委員なども務める。

内藤克彦(ないとう かつひこ)
京都大学大学院経済学研究科特任教授。エネルギー戦略研究所・顧問・シニアフェロー。1953年生まれ。東京大学大学院工学部物理工学専門課程修了。環境省地球環境局地球温暖化対策課調整官・国民生活対策室長,総合環境政策局環境影響審査室長,水・大気環境局自動車環境対策課長,(東京都)港区副区長などを経て,退官後現職。主な著書に,『環境アセスメント入門』(化学工業日報社,1998年),『いま起きている地球温暖化』(化学工業日報社,2005年)。『展望次世代自動車』(化学工業日報社,2011年),『IPCC地球温暖化第二次レポ-ト』(翻訳,中央法規出版,1996年)。『PRTRとは何か』(化学工業日報社,1997年),『「土壌汚染対策法」のすべて』(化学工業日報社,2003年),『五感で楽しむまちづくり』(学陽書房,2011年)。

中山琢夫(なかやま たくお)
京都大学大学院経済学研究科再生可能エネルギー経済学講座特定助教。
1976年生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科総合政策科学専攻公共政策コース博士課程(後期課程)研究指導認定退学。博士(政策科学)。専門は環境経済,地域経済,再生可能エネルギー。主な論文に,「ドイツのシュタットベルケは,配電網の再公有化を通して何を目指しているのか?」『経済論叢』(京都大学),「再生可能エネルギーで山間地域に所得1%を取り戻せるか?――小水力発電と木質バイオマスの薪利用を中心に」『財政と公共政策』(財政学研究会),「分散型再生可能エネルギーによる地域付加価値創造分析――日本における電源毎の比較分析」(『環境と公害』 岩波書店)など。

長山浩章(ながやま ひろあき)
京都大学国際高等教育院教授。
1964年生まれ。開成高等学校,慶応義塾大学経済学部卒業。エール大学経営大学院(MBA)修了。京都大学大学院エネルギー科学研究科博士後期課程修了。博士(エネルギー科学)。
専門はエネルギー政策論。主な著作に『発送電分離の政治経済学』(東洋経済新報社),Electric Power Sector Reform Liberalization Models and Electric Power Prices in Developing Countries: An Empirical Analysis Using International Panel Data, Energy Economics, 31, pp. 463-472, 2009 など。

安田 陽(やすだ よう)
京都大学大学院経済学研究科特任教授。エネルギー戦略研究所・研究部長。
1967年生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。関西大学システム理工学部准教授など経て現職。日本風力エネルギー学会理事,IEA Wind Task25等の国際委員会メンバーも多数務める。主な著書に『日本の知らない風力発電の実力』(単著),『風力発電導入のための電力系統工学』(共訳),『地域分散型エネルギーシステム』(共著)など。