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プリミエ・コレクション 63

〈教育の自由〉と学校評価

現代オランダの模索

奥村 好美

A5上製・302頁

ISBN: 9784814000111

発行年月: 2016/03

  • 本体: 3,200円(税込 3,520円
  • 在庫あり
 
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内容

誰の,何のための評価なのか? 新自由主義のもと世界中で導入された学校評価という政策手法は様々な歪みを引き起こしている。社会の希望を託す子ども達にとって,何が不足し何を改善すべきなのか。そのための理念と手法をめぐって模索するオランダの教育現場を生き生きとしたレポ—トで紹介し,未来への希望に繋げる学校評価のあり方を考える。

書評

『教育学研究』第84巻第1号(2017年3月)、83-86頁、評者:太田和敬氏

プロフィール

奥村 好美(おくむら よしみ)
兵庫教育大学講師
1985年生まれ,京都大学大学院教育学研究科博士課程修了,博士(教育学)。
主な著書に,『パフォーマンス評価——思考力・判断力・表現力を育む授業づくり』(共著,ぎょうせい,2011年),『パフォーマンス評価入門——「真正の評価」論からの提案』(共著,ミネルヴァ書房,2012年), 『グローパル化時代の教育評価改革』 (共著,日本標準. 2016年) など。

目次

序章 今,求められる学校評価とは
第1節 オランダの「教育の自由」と学校評価の特徴——本書の課題と対象
第2節 学校評価はどう論じられてきたか——研究史上の問題群
 1. 教育評価の一種としての学校評価
 2. 新自由主義的な教育改革と日本における学校評価
 3. オランダの学校評価研究の問題群
第3節 学校評価の主体,評価される質の中身,評価結果の活用
    ——論点整理と分析の視点
第4節 「教育の自由」と学校評価の関係性を問う——研究の課題と方法
 1. 本書の課題
 2. ミクロな視点をくぐった全体像と具体像——検討の方法
第5節 本書の構成

第I部 学校の自己評価を重視した学校評価政策——2002年教育監督法

第1章 学校の自己評価を重視した教育監督法の成立
第1節 オランダの教育の背景
 1. 自由な宗教教育を求めて——「教育の自由」の獲得
 2. 個に応じた指導の推進へ向けて——「教育の自由」獲得後の展開
 3. 「質の管理」——新自由主義的政策の影響と学校の自己評価の重視
第2節 学校の自己評価を重視した教育監督法の成立——2002 年教育監督法
第3節 整合性・完全性・現実性の問題——2002 年教育監督法に対する評価
「教育の自由」との矛盾と学校の自己評価への期待——小さなまとめ
コラム1 ピースフル・スクール

第2章 学校内のコミュ二ケーションを促す学校の自己評価
    ——自己評価ツールZEBO
第1節 妥当性・信頼性のあるツールを目指して
    ——ZEBO の開発過程とその背景
第2節 学校効果研究やコンティンジェンシ一理論にもとづく評価指標の設定
第3節 学校内のコミュニケーションを促すツール
    ——自己評価ツールZEBOの概要
 1. 二重チェックの仕組み——ZEBO 全体の構成
 2. 「教授行為」の評価——具体的な質問例
 3. 意見の相違やバラつきを示す報告書
第4節 評価指標を活かす途——ZEBOの使用状況
 1. 改善のための必要条件への効果——ZEBO に対する評価
 2. 共働的な質の管理——E校の取り組み
 ZEBOから得られる示唆と限界——小さなまとめ

第3章 教育監査に対応できる自己評価ツールの流行——自己評価ツールWMK
第1節 教育監査に対応できるツールの普及——自己評価ツールをめぐる状況
第2節 教育監査のポイントと学校のヴィジョンの明示化——WMKの概要
第3節 「個に応じた指導」の評価——WMKの評価指標例
第4節 共働的な質の管理——A校での取り組み
WMKから得られる示唆と危倶,オランダの方向性——小さなまとめ
コラム2 モンテッソーリ

第Ⅱ部 学校評価の今目的展開と新たな模索

第4章 学力テストの結果を重視したリスク分析
    ——教育ガパナンス政策の導入
第1節 規制の効果を生み出すために——応答的規制の強制ピラミッド
第2節 内部コントロールを基礎とするピラミッド
    ——オランダの「教育ガパナンス」
第3節 教育の質が媛小化される危険性
    ——「教育ガパナンス」の特徴とその影響
第4節 「教育の自由」のもとでの質の保証の難しさ——教育監督法の改訂
「教育ガパナンス」の問題と全国最終試験の導入——小さなまとめ

第5章 中央最終試験の導入と問題点
第1節 「現実的な数学教育」——オランダで目指される教育像
 1. 「人間の活動としての数学」——「現実的な数学教育」の理論
 2. 割り算をどう教えるか——「現実的な数学教育」の実践
第2節 「現実的な数学教育j の影響——中核目標とCitoテスト
 1. 中核目標にみられる「現実的な数学教育」の影響
 2  対策可能な多肢選択式問題——Citoテスト
 3  成果志向を求めて——Citoテストの義務化
第3節 法案に対するオランダ国内での評価
 1. 一般の人々による肯定的な評価と副次的弊害への指摘
   ——インターネット協議
 2. 法案をめぐる批判——国政審議会からの勧告
 3. 特別なニーズを要する子どもに学力テストが与える影響
「教育の自由」のもとでのジレンマと乗り越える方途の模索
   ——小さなまとめ
コラム3 イエナプラン

第6章 オルタナティブ教育連盟による学力テスト偏重批判
第1節 学校の自律性や多様性の尊重——2005年版『監督枠組』の概要
第2節 副次的弊害への懸念——2005年版『監督枠組』への批判
 1. 共に生きる社会一一イエナプラン教育の特徴
 2. 「違いから始める」ことの不徹底——2005 年版『監督枠組』への批判
第3節 「全ての学校は1つ」
    ——オルタナテイブ教育連盟による学校評価の構想
オルタナテイブ教育連盟による提案の限界と「訪問視察」の可能性
    ——小さなまとめ

第7章 ダルトン・プランの訪問視察
第1節 実験室のないダルトン・プラン——オランダにおけるダルトン・プラン
 1. 自立的批判的に考える人を育てる教育
    ——ダルトン・プランの受容と展開
 2. 「制限のある自由」「自立」「共働」
    ——ダルトン・プランの原理と実践
第2節 オランダダルトン協会による訪問視察
 1. 「説明責任を与え,説明責任を実行する」——訪問視察の背景と原理
 2. 教育監査との関係を探る——訪問視察の行程と評価指標
相互評価的な学校評価の仕組みの構築——小さなまとめ
コラム4 ダルトン・プラン

終章
第1節 本書の結論
第2節 今後の課題

あとがき
引用・参考文献一覧
索引
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